見えたもの
花吹雪という酒を知っていますか?消えた純
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こちらは
#シロクマ文芸部
#新生活20字小説
同時参加 作品です。
上は #新生活20字小説 の20字小説。
下は #シロクマ文芸部 の短編小説。
同じ20字から始まります。
2つの小説は頭の中では全く違うイメージで浮かびました。
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『見えたもの』
花吹雪という酒を知っていますか?消えた純にそっくりな女将。
千鳥の提灯が気になり、小料理店にふらりと入った。
淡黄蘗色の着物に、桜柄の帯と若草色の帯締め。襟は抜き過ぎず、真っ白な糊のきいた前掛けをしている。
黒髪は、べっ甲の櫛で下の方に小さく纏めてある。
なだらかなアーチの眉、少し離れた目、小さい鼻は鼻筋がすっと通っている。ふっくらした唇は口角が上がっていて、朱色の口紅をほんのり塗ってある。
いらっしゃいませ。
女将を見てはっとして、一瞬立ち止まった。
カウンター席が6つ、後ろの畳の座敷には、客が3人いた。
カウンターに通される。
花見に行った。着物がよく似合い、桜より美しいその姿を眺める。二人の時間をゆっくり楽しむように歩く。いつまでも続くように感じていた。
鎌倉の小町通りの寿司屋で日本酒を飲む。
頬がほんのり紅くなっている。
紫陽花の咲く頃にまた来ましょうね。少しだけ微笑みながらそう言う純の声。
同じ声が聞こえた。
「桜の花が舞い散るように潔く
さわやかな酒でありたい」
との願いを込めて命名されたそうです。
純米吟醸酒 小鼓の酒 スッキリとした米の旨味甘みがふわりと広がる飲み心地ですよ。
では、そちらをひやでお願いします。
かしこまりました。ひやは氷を一個だけ入れるのがよいそうです。
一個の氷が入った透明なガラスのお猪口に、口開けの花吹雪が静かに注がれ、付出しが置かれる。
酒の肴は何にしましょうか?
カウンターの上に並んだ本日のお刺身と、いくつかのお晩菜を頼む。
日本酒、久しぶりだ。
一口くいっと飲む。
喉がひやりとして米の甘みと香りが舌に残る。
付出しは、筍に葛餡がかかり、木の芽が一枚。美味い。また酒を一口飲むとカラカラに乾いた心にもすうっと流れる。
鶏の葛餡です。昨日掘ってきたばかりの筍をお出汁で炊きました。
そうですか。
お晩菜、刺身、旬の春野菜の天ぷら。 ついつい酒がすすむ。
桜も終わりですね。知っていますか?
桜は開花するまで、木の幹の中から、あの花びら一枚一枚の淡いピンクのために寒い冬から赤い色を作ってゆく。
全ての枝から蕾へ流れて、木の幹の表面まで赤くなる。
開花すると木の幹はいつもの色に戻り、初夏を迎える若葉への栄養をゆっくりと枝に流すそうです。
着物もそろそろ単衣が着れるかと思っているのですよ。若葉色の。
酔った頭に女将の話し声が回っていた。
いつの間にか眠っていたようだ。
ここは何処だ?
日が昇っていて、店も酒も女将も純も、全て消えていた。
振り向くと一本の桜の木、若葉が出始めている。
足元には一枚の花びら。
この桜の花びらは純なのだろうか?女将の姿で現れた純なのか?
私の病は治らないそうです。この世から消えても、花となり、あなたのもとへ飛んでゆきますから。
私はその最期の言葉を、記憶から消していた。消すしかなかった。
そして見えた。
星屑のような桜屑の一枚の花びらが。
本当は消えていなかったのだ。
純は、力の限り赤い血をため、体中に巡らせ、桜色に華やかに咲き誇り、花吹雪のように潔く舞い散った。
あの言葉に込められた想いが見えた。
いつまでも見ている。
いつまでも愛でている。
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花吹雪という日本酒があるそうです。
写真でしか見たことがなく、飲んだことはありません。
いつか飲んでみたい日本酒です。
ボトルが美しいなあとネットで見ていました。酒造のこの花吹雪という日本酒へのこだわりと思いも読み、こんな素敵なお酒、飲んでみたいと。
お料理にとても合うそうですよ。
どなたか飲んだことありますか?
ひょっこり参加部員
またまたギリギリセーフ!
じゅんみは
私の着物を引っ張り出してきたのでシワが…