心の棘と花
ハート型の心が、ボコボコとした形になっていただけだった。
ボコボコはあっという間に無数の棘へと変わり、もはやハート型だったとは想像がつかない程、歪な形になってしまった。
心に収まりきれなくなった鋭い棘は私の体の中のありとあらゆるところを突き刺す。
そして、その細くて鋭い棘の中には、苦しみや辛さがまるで憎悪のようになった漆黒の毒が入っている。
心の棘の毒が全身に巡ることで、私を心配し助けようとしてくれた、大切な人達の優しさを素直に受け取れず、私の「声 言葉 文字 態度」が、毒のある鋭い棘となり、その人達のあたたかい心を突き刺してしまう。
針から毒が滲み出て、酷く傷つけ苦しませる。
悲しい。
「今の私は、心の声を言葉を発してはいけない。」
私の全身に刺さった心の棘が、酷く痛む。
どうしたらこの棘はなくなるのだろう。わからなくてどうしようもない孤独に苛まれる。
ふと思う。
棘のある植物のいくつかは、時が来ると、鮮やかで美しい見惚れるような花を咲かせる。
私のこの心の棘にもいつか美しい花が咲くのだろうか?
透明の箱から出て、自由に好きな場所に行けるようになり、穏やかな顔になった娘は幸せそうだ。
でも、彼女の背中の動きを見ると、呼吸の苦しさがわかる。私の心の棘が増え更に鋭くなる。
私が全身の棘の痛みで寝ていると、娘が嬉しそうに私の胸の上に乗ってきて「撫でて」と顔に顔を近づける。
その時だけは心の棘がスッと消え柔らかい心に戻る。
彼女の心に棘が刺さらないように。
柔らかくなった私の心の上に、娘のドクドクドクという激しく熱い、でも優しい心の振動が伝わる。
心が一生懸命動いているんだ。彼女はまだ生きている。
背中は見えない。嬉しそうに撫でられる娘の顔だけが見える。とても幸せそうな顔。
時が来るまで、その幸せな顔を見ていよう。
背中を見て棘が増えても、その幸せな顔を見て棘を減らそう。
時が来たら、棘は少しずつ消えるだろう。
棘の跡には美しい花が咲き、棘を刺してしまった優しい人達の毒も消えると願って。
また笑って話せるようになると信じて。
娘の幸せな笑顔のような美しい花が咲く。
きっと咲く。
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その後のことが書いてあります。
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読んでくださりありがとうございます! 嬉しくて飛び上がります♪ 私の心の中の言葉や絵を見て何か感じてくださればいいなと願いつつ。