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グレゴリー先生と僕「4.弟子編⑤ ~クワイヤでの生活~」

満杯に詰まった礼拝堂は、礼拝に先立って行われているWorship team(聖歌隊とは別に少人数でGospelを歌うチーム)によって熱気に包まれている。

まだ秋口とはいえ礼拝堂の入口と出口を繋ぐ待合室には外の空気が流れ込んで少し冷える。
そこで他のクワイヤメンバーと一緒にマーチ(March:クワイヤロッジに向かうために礼拝堂中央の通路を歌いながら行進すること)に備えて、礼拝堂に入る大きな扉の前で僕は待っていた。

そう、今日は僕がThe Inspirational Ensemble(以下、Ensemble)の一員としてConvent教会の礼拝で初めて讃美をする日。

◆2013年10月27日(日)8:00am EST

多分行き過ぎた気合いで顔が引きつっていた様で、Ensembleのメンバーで現在は俳優としても活躍するAが話しかけてきた。
A 「Jun, you wanna come restroom lol?(Jun、トイレか?笑)」
J 「Thanks bro, maybe later.(いや、大丈夫だよ笑)」

いざ礼拝開始の8時。
礼拝堂に入る大きな扉が開く。
中に籠っていた熱気が一気に待合室に流れ込む。
と同時に、礼拝堂に響き渡るパイプオルガンの音が僕らを包む。
勿論弾いているのは、グレゴリー先生だ。

その音に合わせて、讃美歌を歌いながら、僕らは一歩一歩礼拝堂の中をマーチしていく。
初めてのマーチを記念してメンバーが先頭を歩かせてくれた。
礼拝堂に敷かれた赤絨毯が普段よりも厚く感じた。
礼拝堂最前列迄辿り着くと、左右に分かれて2階のクワイヤロッジに続く細い階段を上る。

マーチの順路(手前が待合室)

クワイヤロッジ入り口(上図の右上矢印)に着くと、Aが僕の肩を叩いた。
A 「Look at Professor, he’s gonna make “QUE”.(プロフェッサー見ときなね、入るタイミング合図くれるから。)」

Convent教会ではオープニングの讃美歌が4番まである場合、1-3番までを歌い終わると間奏が入りその最後に転調(キーが半音上がる)する。
正にその転調の瞬間、Professorと目が合った。
P「(Ok.)(入っといで。)」

憧れだったクワイヤロッジに、僕はようやく足を踏み入れた。
右足。
この時の感動は一生忘れない。
そして、感動のあまり4番の歌詞を歌うべきところを1番の歌詞で張り切って歌いだしたことも忘れない。これを聞いてたAはこういって僕を茶化した。
A 「I told you, you need to go restroom lol(だから言ったろ、トイレいっときゃ間違えなかったんだ笑」

こうして僕は、NY・Harlemの教会所属Gospel Choirのメンバーになれた。

◆第2第4日曜日はAM5時半起き

以前にも書いた通り、Convent教会には4つのクワイヤがある。

Convent教会クワイヤ一覧(蔵本記憶ベース)

クワイヤが歌う場所

その4つのクワイヤが2チームずつ奇数・偶数週に分かれて礼拝する。
礼拝は第一礼拝(8:00~)と第二礼拝(11:00~)の2つがあり、同じ曲(大体3曲ずつ)を両方の礼拝で歌うわけだ。

8:00からの第一礼拝に向けたリハーサルは7:15頃から始まる。
当時僕はBrooklynの友人宅を間借りさせてもらっていたので、通勤にはGoogle Map上で約1時間かかる。

自宅⇒Convent教会

但し、日曜日の早朝ともなると電車は平気で30分以上来ない。
アナウンスもないので、来ない理由は全く分からないが、とにかく来ない。
特に、冬場は-10℃程度のプラットフォームでひたすら待つ笑

これを考慮して7:15のリハーサル開始に間に合おうとすると、
こんなスケジュールになる。

5:00 起床
5:10 シャワー
5:30 家出
5:35 自宅最寄り駅(Grand Street駅)着
↓↓↓↓ (電車が着たり来なかったりして)
7:10 教会最寄り駅(145th street駅)着
7:15 Convent教会着

クワイヤ生活で一番きつかったのは、間違いなく、2週間に1回の「5時起き」だった笑

◆親しい友人を”Bro(Brother:兄弟)”と呼ぶ理由

クワイヤに入って、僕が教会にいる時間は飛躍的に増えた。

水曜日:Gregory先生のレッスン(”You're”は言える様になりました。
金曜日:Inspiration Ensembleのリハーサル
土曜日:Cocolo Japanese Gospel Choirのリハーサル
日曜日:Convent教会の礼拝

こうなると自然と教会のメンバー、特にEnsembleのメンバーとは親しくなり、そして当たり前に彼らをBrother / Sisterと呼び、僕もBrotherと呼ばれるようになりました。

元々教会では、男性をBrother(兄弟)、女性をSister(姉妹)と呼びます。
これは神様をFather(父親)とすると、教会のメンバーは皆「同じ父」を持つ兄弟姉妹である、という考え方から来ています。

つまり、

黒人(※)にとって教会生活(=Gospel)は生活の一部として当たり前で、
⇒親しい仲間をBrother / Sisterと呼ぶようになり、
⇒これが教会外でも親しい仲間を呼ぶ時に用いられ続けている

※Brotherは白人も使うので、黒人に限らず「キリスト教徒」にとって。

ということだろうと思います。

そう考えると、教会の果たしてきた文化への影響って改めて大きいですね。


さて、今回はここまで!
次回は【グレゴリー先生と僕「4.弟子編⑥ ~Gospelとは~】をお届けします。
僕がGospel Singerになろうと思うきっかけをお話します。


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