近くて遠い島
2019年秋、私は北方四島の元島民の撮影をするため釧路からバスに乗り、中標津経由で羅臼に向かった。
バスは中標津までは一部住宅街を走り、そして中標津を過ぎて少しした頃から海岸沿いを走る。
この日は本当に天気が良く、海の向こうに島影が見えた。
その島の名は国後島。
私は2019年6月に色丹島を訪問したが入域手続きは国後島の古釜布で行う。
厳密に言えば古釜布側からはしけに乗ったロシアの軍人が私たちの乗る船にやって来る。
そして一人一人、顔写真と名前の照合がされて入域手続は終わる。
その国後は根室から乗船したえとぴりかで向かった時には随分長い時間をかけて到達した記憶があった。
その国後がこちら側の家々の間からあんなにも近くに見える。
私は夢中でシャッターを切る。
こんなにも近いのに…
近くてあまりに遠い…
船に乗って行けばすぐそこに島はある。
だけど行くことは叶わない。
羅臼に住んでいる元島民の人々は何を思うのだろう?
私はいつかこの海の向こうに自由に渡ることができるようになればいいと思っている。
そしてそのいつかはなるべく早いときに来て欲しい。
74年はあまりに長すぎる。
どんな未来があるのだろう?
この海の光のようなキラキラとした未来。
それを心から願っている。
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