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3 『珠光の庵』韓国プロジェクトの始動

お茶会演劇『珠光の庵』

 劇団衛星で『珠光の庵』という作品の公演をしている。演劇と茶道を融合したお茶会演劇。侘び茶の祖と言われる村田珠光の物語を演じて、劇の後半には珠光が催すお茶会として、観客の皆様にも抹茶と和菓子を味わっていただく、体験型演劇作品だ。

 2004年に京都で初演を迎えたとき、茶道裏千家お家元にご協力いただき、その際、「この作品を全国47都道府県+海外3都市(合計50都市)で上演します!」とお約束をした。(2023年末現在、28都道府県+海外1都市で上演した。まだまだ先は長い…。)
 なので、いつかはこの作品で海外公演を!ということは、2004年から考えていたことであった。

 2014年に兵庫県豊岡市に城崎国際アートセンターがオープンした。ご縁あって、その公式オープンの直前に、モニターのような感じで1週間滞在させてもらう機会を得た。そこで、「国際」アートセンターで滞在製作をするのであれば、いつかやろうと思っていた『珠光の庵』の海外バージョンをここで試作してみるのは意味があるんじゃないか、と考えついた。
 城崎で創作・試演を行い、その後、さらに稽古を重ねて2016年3月に、京都・KAIKA(私たちが拠点としているアートスペース)で英語バージョンを初演した。
 オリジナルの日本語キャストに加えて同時通訳的役割を担う外国語キャストが出演するという、新演出での作品。この時は、英語キャストには、英語を話せる日本人の俳優に出演してもらった。


韓国語バージョンの創作

 韓国語バージョンの創作を思い立ったのは、いつからだっただろうか。正確には思い出せない。

 なぜそれが韓国だったのか、と言えば、もともとそんなに大きな志があったわけではない。
 物理的な近さゆえ、旅費などの金銭的負担も少なく済むだろうから、実現可能性が高いのではないか…というのが、大きな理由ではあった。また、私が個人的に韓国に関心を持ってきていたからということもある。そして、ちょうどたまたま、学生時代に韓国での留学経験があって韓国語が話せる俳優・田中沙穂さんが、劇団に入団した。
 偶然だったがこれらの重なりは、これはもう韓国公演をしろと言われたようなものだと感じた。

 韓国語キャストとして、韓国で活動してる俳優を招聘しようと考えたのは、実は、その方が助成金を獲得しやすそうだという目先の理由が大きかった。(韓国語のできる日本の俳優が多くいないことも、現実ではあったけど。)
 そんな浅はかな気持ちで始めた「日韓交流事業」は、結果的に、とても素敵なものになった。彼らに出演してもらったことには大いに意義があったし、作品の向上にも大変助けられた。

 韓国公演の実現にあたって、北九州在住の「合同会社kitaya505」の北村功治プロデューサーに相談した。
 北村さんとは2006年に知り合って以来、何かと仲良くさせてもらってるプロデューサー仲間だ。全国制覇を目指す『珠光の庵』上演の九州ツアーのコーディネートも彼に担当してもらっていた。
 韓国ともご縁のあった、彼とそのパートナーである加奈子さんのご紹介で、現地の受け入れを、チェ・ウンミさんにお引き受けいただくことができた。
 加奈子さんには、脚本やその他一切の翻訳をお願いした。

 韓国キャストは、ウンミさんから、日本との合作に関心のある俳優に声かけてもらって選抜してもらった。候補の方の資料をいただき、内定したのが2019年1月頃。
 ウンミさんと初めてお会いしたのは、確か2019年3月頃だったかと思う。私が北九州へ行った時にちょうどその時期に九州へ来ていた彼女とご挨拶をさせてもらった。

 こうして、韓国公演プロジェクトが走り始めたのだった。(今思い返せば、何かすごい展開だったな…。当時はそんなに気負いなく、やりたいことやるぜ!という勢いだったように思う。)


●おまけ:『珠光の庵』の国内ツアー話

(読まなくても内容把握に支障はないだろうと思う、おまけです。カンパとして、購入いただけると喜びます。このおまけ部分だけで200円の価値があるわけではないので、ご容赦ください。)

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