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4 下見旅行

下見①

 2019年5月、初めて、公演の具体的な準備のためにソウルへ訪れた。
 通訳の北村加奈子さんと、韓国語が話せるため現地メンバーとのやりとり担当をしてくれていた劇団員・田中沙穂さんと3人で出かけた。

 チェ・ウンミさんの案内で、韓国公演の上演会場の候補となる劇場をいくつか見学に行った。
 出演が内定していた俳優のうち2人(もう1人はスケジュールが合わず会えなかった)と、この日初めてお会いした。とても感じよく信頼置けそうな方々で、彼らとなら素敵な創作ができそうだ…と直感した。
 私たちはそれまで彼らの出演作を観たこともなかったし、プロフィールの資料だけで出演をお願いしていたため、ご本人からは「これで決まりですか?オーディションとかなくていいんですか?」と逆に心配されたが。とはいえ、出演作を1〜2つ観ただけで実力を判断するより、それよりも人間性として信頼できることが、一緒に公演する仲間としては重要だと考えていた。
 結果的に、その判断は間違いなかったと思う。

 この時の旅では、加奈子さんのお知り合いなど公演の際にご協力していただけそうな方にお会いしたり、茶道裏千家のソウル支部に訪問したりもした。

 また、余談になるが、仕事が一通り終わったあと、私はみんなと別れて、そのまま釜山へ向かった。かつて京都で一緒にお芝居をしたことのあった俳優の友人が、韓国の方と結婚して釜山に住んでいたので、その人たちに会いに行った。初釜山は短い滞在しかできなかったので、ぜひまた訪れたいと思う。次は劇団員たちも一緒にまた遊びに行くね!と約束をしたのに、結局あれ以来、まだ釜山には行けてない。


下見②

 次に韓国へ行ったのは、2019年10月のことだった。
 日韓の関係がネガティブな状況になっていた折で、両国で活動する舞台関係者が集まって意見交換を行う機会を持とうと、一部の演劇プロデューサーの呼びかけで、「国際関係と文化交流 ー韓日舞台人の交流会ー」が緊急開催された。
 それをきっかけに、私もソウルへ行くことにした。

 秋のソウルでの演劇祭「Performing Arts Market in Seoul(PAMS)」が行われている時期だった。私はその演劇祭には参加していなかったけど、APPで知り合った方から誘っていただき懇親会に混ぜてもらうこともできて、国際演劇祭の空気を楽しむこともできた。

 ウンミさんと、出演いただく俳優3人と、大学路で会い、一緒にサムギョプサルを食べた。チョン・スヨンさん、チェ・ウンミさん、キム・ギフンさんという3人の俳優と、初めての顔合わせだ。
 翻訳まで出来上がってきていた台本を渡し、配役をお伝えして、公演に向けてのお話をたくさんした。実際に彼らと会うことができて、とても安心したのを覚えている。
 やはり私は少し不安だったのだろう。それで会いに行っちゃったんだな、と思う。


日本語と韓国語でのやりとり

 この頃、韓国のメンバーとのやりとりは、基本的に日本語で書いたメールを加奈子さんに送り、加奈子さんに韓国語に訳してもらって、ウンミさんや俳優のみんなに送ってもらった。そして、返ってきた返事を、また加奈子さんに日本語に訳してもらった。

 みんなが日本に来てからは、沙穂さんも彼らとカカオトークのグループチャットでやりとりするようになった。滞在期間中のスケジュールや簡単な連絡は、沙穂さんからみんなに送ってもらった。
 私はまだ、韓国語で彼らとやりとりする力は、ほぼなかった。

 京都公演が終わった後、その後の連絡をする時になってから、私も彼らとのカカオトークのグループに入った。とはいえ、基本的に大事な連絡は、やはり日本語で送ったものを加奈子さんに翻訳して伝えてもらっていた。私が直接韓国語で送るのは、簡単な挨拶などだけであった。
 それが少しずつ、私も韓国語で送れることが増えてきた。(もちろんじっくり時間をかけて、辞書を引き、翻訳アプリなども駆使しながら送っていた。そしてそれはまあ、今も、文章を書くには辞書の助けを借りているのだが。)

 韓国の俳優も日本語の勉強をしていて、お互いに相手の言語でメッセージを送り合うように、少しずつなっていった。今、このようなコミュニケーションも、大変楽しく感じている。

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