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6 コロナ禍の中で

オンラインでの交流

 数年間、韓国との往来はできなかった。『珠光の庵』の韓国公演も、実施時期未定のまま延期となっていた。状況が落ち着いたら再開しようと約束して、その時期が来るのを待つことにした。

 韓国公演が終わった後で、この足止めを経てなお公演にこぎつけたことについて、「こういった諦めの悪さは才能だ」と褒めてくれる人があったが、考えてみると、やめようという気持ちは一度も持ったことがなかった。
 公演実現に向けて困難な部分は、コロナ禍だけが理由ではなかった。初めての海外公演で何からどのように手をつけていいのかわからないことも、金銭的な段取りが大変なことも、困難の要因は山のようにあったので。私たちにとって、コロナ禍もそのうちの一つに過ぎなかったのかもしれない。

 韓国の仲間と直接会うことができない間は、オンラインでの交流を続けた。この関係性を途絶えさせたくなかったので、積極的に、日韓交流のオンラインワークショップの企画を立ち上げ、年に1〜2回というペースであったが実施を続けた。
 参加予定の日韓の俳優たちへ、お約束していたはずの出演料をしばらくお支払いできないことへの罪滅ぼしとしても、何らか少しでも謝礼を払えることをしたかったということもあった。

 こうして小さいながらも交流を重ねたことによって、韓国の仲間達とのつながりはより深く強いものになったと思う。当初は2年くらいで終わる公演の企画だったはずが、この経緯で、思いもかけず、5年に渡る一大プロジェクトになった。このつながりが一過性のものにならない関係性に育ったことは、結果的に良かったとも言える。
 もちろんコロナがなく予定通りの時期に公演ができていたら、こんな苦労はなかったのかもしれないが、もしそうできていたらこんなに上手く公演が成功できなかったんじゃないかとも、本気でそう思う。


配信イベントの実施

 この頃は、海外ツアーどころか、演劇の公演自体を行うことが難しかった。私たちの企画も含め、京都で行う予定だった公演も多くが中止や延期を余儀なくされていた。
 そんな中で、全国各地・全世界で、演劇作品のオンラインでの上演や舞台作品の映像配信なども様々な形で試みられていった。

 私たちも、『珠光の庵~遣の巻~』のオンライン配信上演に取り組んだ。
 そもそも海外に向けてのプロモーションとして映像配信を考えていた作品でもある。まずは映像で観てもらって、関心を持ってくれた人たちが、後日私たちがその地で公演することができたときに直接体験してくれるように、あるいは日本に旅行に来るついでに私たちの作品を観てもらえるように。と考えていた。

 2021年1月に、『珠光の庵~遣の巻~』英語版を再創作。無観客で上演して(体験型の作品であるので、観客役のエキストラキャストに参加いただき、体験の誘導をしてもらった)、オンライン生配信を行った。

 その英語版の映像を再編集したものと、韓国語版も京都公演時の記録映像とを用いて、8月・9月に再びアーカイブ配信も行った。その時には、公演のアフタートークのような感じで、関連のトーク映像も同時配信した。
 英語版のトークには大阪芸術大学 舞台芸術学科 客員教授(当時)の川南恵さん、韓国語版配信時のトークには帝塚山学院大学リベラルアーツ学部 准教授の稲川右樹さんにゲストとして登壇いただいた。
 この時、稲川先生から、韓国の人たちは参加型のイベントが好きだから、この作品は楽しんでもらえるだろうと言っていただけたことは、大変励みになった。

 ちなみにこの稲川先生(ゆうき先生)には、その後私は、オンラインの韓国語の勉強会に参加させていただきお世話になるようになるのだが、この頃はまだ面識もなく(一方的にSNSなどでお見かけしてただけで)、それなのにいきなりご依頼して、よくぞお引き受けいただいたものだ…と今更にありがたく思う。
 先生が何だったかの番組で、韓国映画を題材に時代背景などの解説を行っておられるのを見て、この方に『珠光の庵』を観てもらって、コメントを聞いてみたい、と思ったのだった。
 その節は、本当にありがとうございました。


●おまけ:ことばにまつわるオンラインワークショップ

(読まなくても内容把握に支障はないだろうと思う、おまけです。カンパとして、購入いただけると喜びます。このおまけ部分だけで200円の価値があるわけでもないので、ご容赦ください。)

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