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2 笑の内閣韓国公演

韓国が近い国になっていく

 私が初めて海外へ行ったのは、高校生の頃の家族旅行だった。両親と妹と一緒に、香港(当時はまだイギリス領だった)に旅行した。それから時々、家族と海外旅行に行くことはあったけど、韓国に行こうとしたことはなかった。
 近いのに、私には縁のない遠い国だった。

 それなのに。初めて韓国を訪れた2014年からは、それ以降、毎年1〜2回以上訪れることになったのだから、不思議である。

 APPキャンプから帰ってすぐ、その滞在中は自由時間がほとんどないスケジュールだったので、改めてゆっくり観光旅行がしたいということを考えた。一緒に行きたいと言ってくれた、当時KAIKAのスタッフだった渡邉裕史さんと、ソノノチの中谷和代さんと、3人で旅行に出かけた。(本当はもう一人と4人での旅行の予定が、都合があわなくなって、結局3人で行った。)
 それが、2015年5月のことだった。

 そして、2015年11月。多田淳之介さんが韓国のソン・ギウンさんとの日韓共同制作作品『태풍기담(颱風奇譚)』を創作されて、ソウルと東京で公演された。私はそれを、ソウルの南山芸術センターへ観に行った。

 2016年5月には、札幌の弦巻楽団がソウルでされた公演を観に行った。大学路のオルダ劇場で、『四月になれば彼女は彼は』という作品を観た。その作品はKAIKAで公演予定だったのだが、その前にソウル公演をされたのだった。

 またちょうど同時期に、光州のASIA CULTURE CENTERで、捩子ぴじんさんがキュレーションされた『Our Masters Hijikata Tatsumi <방언/glossolalia>」というプログラムを観ることができた。
 ここで上演される作品の一つに、知人であり、その後、私たちの公演でも翻訳・通訳を担当してくれることになる北村加奈子さんが参加されていた。彼女に会いがてら、新しくできたという噂を聞いていたアートセンターに訪問した。
 そのために、初めて韓国高速鉄道(KTX)に乗って、ソウル以外の都市へ訪れた。

 こうして、急に韓国が私に近い国になっていった。


笑の内閣の韓国公演

 京都の後輩劇団であった笑の内閣が、『ツレがウヨになりまして』という作品で韓国ツアーに行く、と聞いたのは、2017年春のことだった。京都でも上演されるその公演の制作を、KAIKAの後輩だった渡邉裕史さんが担当していたのだが、彼がツアー日程にスケジュールが合わないということで、代わりに行ってくれないかと、韓国公演の制作を頼まれた。
 韓国に行けるなら、ぜひ…と思って、お引き受けする。それが私自身が初めて韓国で行った公演の経験だ。

 劇団主宰の高間響さんとともに、準備のためにソウルへ行き、現地で協力いただける方とお話したり、公演会場を探したりするところからご一緒させてもらって、ツアー当日は、渡邉さんに見送られて、俳優・スタッフのみんなとソウルへ向かった。
(公演会場は、以前、弦巻楽団の作品を観たのと同じ、オルダ劇場だった。)

 ちょうどこの時は、北朝鮮との関係に緊張感があった頃だった(「2017年北朝鮮危機」と呼ばれるものだ)。私は初めての海外公演にビビっていたこともあって、いざ何か問題が生じたらどうしたらいいのだろうか、と正直ひどく心配な気持ちを持ちながらの渡韓になった。
 実際に行ってみたら、現地にとってはある意味、日常茶飯事なのだろう。特別物々しい様子もなく、普通に過ごして、上々に公演を行い帰国した。
 ただその後、次に韓国へ行った際に、空港の空気が比べ物にならないほどにゆるくて、やはり当時はそれなりの緊張感があったのだな…とあとから感じた。

 本番の日は、受付などは現地の協力者が担当してくれたが、日本からもお客さんが来ていることから、日本人向けの前説を私が担当することになり、その際、最初の挨拶に韓国語を交えて話したことが、思い出だ。

 あとは、個人旅行と違って、ある程度まとまった現金を扱うことになるため、外貨両替のレートを気にしないといけなくて、割のいい両替所を探したりしたのも、この時が最初だった。

 こうして、他所の劇団の公演で、韓国公演の経験を積ませてもらえたのは、本当にありがたかったな、と思う。機会をくださった皆さん、その節はどうもありがとう。

※ちなみにこの時の韓国公演に出演されていた、笑の内閣の俳優・由良真介さんに、『珠光の庵』韓国公演にも出演いただくことになる。俳優としての彼の素質(能力や役柄との相性)に加えて、韓国公演の経験、しかも私と一緒に行った経験があることも、選抜の理由の一つになったことは間違いない。


●おまけ:2017年9月には、劇団衛星の劇団員と韓国旅行をした。

 そのことは、おまけとして書きます。この日誌を読んで、これまでの労いとか今後への応援とかを寄せていただけるなら、カンパとして、購入いただけると喜びます。
(読まなくてもさして支障のない内容です。また、このおまけ部分だけで200円の価値があるわけではないので、ご容赦ください。購入はカンパとして、お願いします。)

以下、おまけ。

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