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スティルインラブ

次女と三女が『ウマ娘』好きで、
二人が楽しそうに見ているアニメを
横から覗くことがある。
私は、一時期競馬にはまっていたことがあって、
その時期は1996年から2005年あたりまで。

夏休みにバイトしていた職場の職員さんと、
つきあって2か月あたりで妊娠が発覚し、
入籍はしたものの、
正直恋は盲目状態の時期だったし
お互いの本質的なところまでは
よくわかってなかった。
デートといっても、飲みに行ってセックスする、
くらいのことしかしていなかったし、
相手のことを何にも分かっていなかったと思う。
とりあえず一緒にできることをしよう、と
当時その人が土日になると見ていた競馬中継を
一緒に見ているうちに、自分も競馬にはまっていた。

もともとのおたく気質もあって、
血統とかコースとかジョッキーとか
いろんな視点から好きなように分析ができる
っていうのは本当に底なしに面白くて
それまでは、競馬といえば
マキバオーと武豊くらいしか知らなかったので、
見るもの聞くものすべて感動的で、
その魅力にずんずんと引き込まれた。

私の好きな馬トップ3は、
サイレンススズカ、
ナリタトップロード、
スティルインラブだ。

強い馬とか印象的な馬は
ほかにもたくさんいるので、
「名馬ベスト3」と言っているわけではなく、
いずれも個人的に思い入れの強い馬だ。

なかでも、スティルインラブは、幸英明JKとの
コンビがすごく好きで、私の人生の岐路にあって
希望みたいなものを与えてくれた、
そういう特別な存在だ。

スティルインラブがクラシック戦線に登場したころ、
私は当時の夫と別居していた。
相手の浮気が原因だった。

浮気はもちろんむかつくのだが、
元夫だけを責めるのもちょっと違うのかな、
と思う状況でもあって、浮気即離婚ということは
できずにいた。
当時、うちの母か叔父が本来ならすべき介護を
私が担っていたから、同居するほうが都合がよく
私たち家族は、私の祖父母の家に住んでいた。

元夫は、優しい人ではあって、そんな家族の事情を
受け入れて一緒に住んでくれていた。
けれど、夜中にボケた老人が徘徊して
私を呼びに来るような環境で、
落ち着かなかっただろうし、
うちには幼稚園児と一歳の娘がいて
そっちにも手はかかっていたので
元夫が飲み歩いて帰ってこなくなっても
そのままにしていた。
ある時、あ、浮気してるな、って思うようになり、
決定的な証拠をつかむことになってしまった。
すぐに離婚、は考えていなかったけれど
いったん夫には、ひとりで部屋を借りて
出て行ってもらうことになった。

話を競馬に戻すと
スティルインラブは
圧倒的な三冠牝馬というわけではなく、
ずっとアドマイヤグルーヴの二番人気だった。
幸JKの回顧録を読むと、彼自身は馬の能力の高さを
当初から信じていたみたいやけど、
幸JK自身の若さや経験不足から桜花賞の
前哨戦であるチューリップ賞で負け、
次戦は絶対乗り替わりになると思い
そのままスティルインラブと駆け落ちしたかった、
なんてことを言っていた。
とにかく、人馬とも未熟さを不安視されながらも
桜花賞を勝ち、まず一冠目。
この時点では、私もアドマイヤグルーヴ派だった笑

オークスは、馬もJKもばっちりとかみあって
二冠目を手にした。
で、いよいよ三冠目がかかった秋華賞。
これもまた、アドマイヤグルーヴが一番人気で、
距離の不安もあって、スティルインラブは二番人気。
たぶんこのときの一番人気は、1.7倍とか
そんな圧倒的なところだった。

私自身は、夏を過ぎて、そろそろ元夫との
関係も修復するか、切るかを決めようと思っていた。
でも、子どもたちのこと、将来のこと、祖父母のこと、
本来は優しくていい人である夫のこと、
いろんなことを考えると決断できずにいた。
そんななか、ふと
「スティルインラブが三冠馬になったらもとさやに、
 負けたら離婚しよう」
と思った。
決断する内容よりも、決断することが大切だった。
どっちにしても、そのあとは後悔しない、
と自分に誓った。

当日、馬券は買わなかった。

スティルインラブには
圧倒的に不利な状況やったので、
離婚を決意するあと押しをしてほしかった
、、のかもしれない。
けれど、最後、スティルインラブが先頭で
ゴールしたときに、やったー!!
と思ったのは覚えているので、
離婚したくなかったんやろうね。
まさに、Still in Love やったかどうかは
わからんけど、その後元夫は家に戻ってきた。

結局、そのときは離婚はしなかったけど
スティルインラブ以来の三冠牝馬が
誕生した2020年に
私たちは離婚することになったのも
なにか不思議なめぐりあわせやなあと
思っている。

スティルインラブは、三冠達成後は、
エリザベス女王杯でアドマイヤグルーヴに
負けたし、その年の有馬記念でも全くよいところが
なかった。でも、私には彼女のがんばりが
自分の人生を決めてくれたし、
ほんとうに感謝している、
その後離婚することにはなったけど、
あのときに離婚しなかったのはやっぱり正解やったと
思うので。

スティルインラブは、ほかの三冠馬ほど
圧倒的でもなかったし、
うっすら下に見ている人がいるかもしれないけど、
私にとっては特別な馬だ。
ウマ娘のなかでも、かげが薄い、ってキャラ付け
されてるみたいやけど、いざというときの強さ、
って私はすごく好きで、自分もふだんは人から
警戒されるようなところはなくても、
やるときはやる、っていう核をもっていたいと
思っている。

とやたらと長いスティルインラブ愛の話でした。
読んでいただいて、ありがとうございました。







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