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私がオリンピックで【鶴】になった、わけ。そして服筋を鍛える?とは。

装いはメッセージ。同じドレスコードで装っても
全員が違う発想を持つ。だから 価値があるんだ。
人にも、服にも。

弊社ファッションレスキューが主催するファッションスクール、アカデミーオブスタイル&アートでの装いの課題、を「オリンピック+白シャツ&スニーカーを使う」とした先週末の授業。

以前 私が赤の女王になったわけ、を読んでくださったひとは、うちのスクールがどんな授業をやってるのか?を知っていて、あぁこんどは【鶴なのね?】と思ったかもしれない。

そう、今回は、【オリンピックメッセージ+白シャツ&スニーカーを使うが必須】というドレスコード。オリンピックには当然、開催自体賛否両論があり、それ自体は自由だ。うちのスクールはマインドフルファッションR を軸に教えているので、思考、意見がどうであれ自由。なので装い課題についても、そうしたマインドが現れるということが大事だというだけで、オリンピック賞賛ファッションや応援ルックでもなんでもないのだ。反対なら反対メッセージを着る、それもOK.私自身は、オリンピック開催については複雑な思いは正直あったが、アスリートに対しては純粋にエールを。そして彼らの闘志に心から日々感動をもらった。ありがとう、と純粋に思う日々だった。課題を出すなら自らが率先してやるを心情としているので今回は【鶴】。

なぜ、鶴なの?

ジャパン、という表現の美しさを何で?というときに、オメガのオリンピック公式CM.動画に心惹かれていた。オメガ時計の超愛用者である私は、オリンピック云々以前から、オメガの創る世界、時計が好きだった。特にメンズウオッチが好きで、ウイメンズではなく、あえてメンズの大きなサイズ感がしっくりくる。ブラックとブラウンの文字盤を同デザインで長年使用。人生をともに生きてきた。そして動画はこちら。

このラストあたりのシーン。陸上部であった私は、陸上をこよなく愛すひとなんだけど、ランナーがゴールした瞬間、鶴が羽ばたいていくシーンに特に惹かれて、装いのインスピレーションになった。これね

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この動画、沢山の心にヒットがあるんだけど、このシーンに一番ぐっときた私は、鶴になった。アスリートたちに【羽ばたけ】という思いをこめて。

8月5日、家族で国立競技場でリレー観戦のはずだった、オリンピック。

もうすでに社会人である子供たちと、ある意味久々のファミリーイベントとしても楽しみにしていたのに、夢は散っていった。

丁度陸上100M予選が行われていた最中、スクールでのオンライン授業。課題は、オリンピック、メッセージとした。

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なぜ白シャツを使うことをドレスコードとしたのかは、それがなければ生徒たちの装いは大よそ想像の範囲になるからだ。

スポーツでくくってしまえば分かりやすい。全身ジャージでもいいわけだし、シチュエーションを【自宅観戦】とすればなおさら、シャツという発想はあまりないだろう。


白シャツ & もちろん 時計はオメガ。

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服筋とは。

ファッションは、スポーツ選手が毎日練習をするように、服筋を鍛えないとセンスもコーデ力も身につきません。これは今まで何千人にもなる教え子さんたちを見てきて検証できる事実。

そう、バットを振るように体を使い身で覚える、そこに思考、戦略なども必要になってくるのと、一番大事なのは客観視かなー。だから学校がいいのは、仲間がいるから客観視が可能なんですよね。

オリンピック=スポーツ=スポーツウエア+スニーカー では服筋は鍛えられない。誰もが想像することだから。

その思惑通り51人の生徒さんたちの装いは、創造を超えてくるオリジナリティーが有る人が出てきた。そういう訓練からもスタイルはつくられていく。

ファッション=トレンド おしゃれ は簡単でも、スタイルを持つ人は少ない。スタイルとは単なるコーデ、表面的なものではない、その人の生き方を反映するような装いのこと。

テーマは【鶴】。メッセージは【羽ばたけ】

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よくある、政近さんはこのまま出勤されるんですか??赤の女王のときも聞かれたなぁ。笑 出勤時はこうですよ。授業前に着替えまーす。ナイキのオレンジもジャパンチームの気分で。

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鶴コーデでは靴はGUには着替え。GUのシルバー、よく履くし履きやすいですよ。

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粋とは。

日本応援、わかりやすくジャパン着物。夏の素材の 絽・紗。とある団体のイベントでの全体プロデュースを依頼されたとき、古着調達をした際の一枚。

透かし柄は涼しげですが、下に何色を重ねるか?で生きるか死ぬか。ナイキのTシャツは黒なので白シャツを着ていなければ透けることはありません。こういう発想は粋(すい)というもので、こうした羽織を着ること自体は 体感としては【暑い】脱いでいたほうが涼しい。しかし日本人の配慮、心意気というものは【見る人にとって涼しいか?】を大事とします。僧侶が真夏でもこうした羽織を着るのは、そういった【粋】の精神なのです。

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蝶ネクタイを、あえてほどいてコーデ。

なぜ、蝶ネクタイを結ばず解いてかけているのか?このボータイは、手作りなんですが、本来本場の蝶ネクタイというものは、結んで着けるのがスマートで、もともと蝶の形に固定して作られたものは、立体感や個性が出せない、みんな同じ、首に張り付いたようになってしまうものなんです。私は極力、顧客さんにもボータイを使用なさる際には、手結びをお勧めします。

で、なぜ解いてるの?

それはこのスタイルに結びは堅苦しいから。くちばし表現での赤色の差しですが、ボータイをこのように解いて垂らす着こなしは、実は西洋のレッドカーペットなどのシーンではよく見られる光景。話せば長くなるので割愛するけど(割愛かぃ)この垂らす着こなしは【リラックス】のサインといわれています。そう、リラックスしてるよ、というマインド。祭典などが終わり、パーティーに突入すると結びを解く紳士は結構いらっしゃる。

日本の紳士の姿に、あえてしておこうかな 舘さーん。

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では、鶴のエデュケーションを。

頭に巻いた市松模様のヘアアクセサリーは実は ネクタイです。市松模様は今回のオリンピックのエンブレムデザインから。ネクタイはバイアス仕立てなのでよく伸びます、、頭に巻くにずれてこない優れものだったりしますよ。

クロTナイキは子供サイズの160.私はこれよくやります。コンパクトサイズでいい感じに収まる。今はビッグサイズ時代なのでどうかとおもうけど、ずいぶん前に買った物ですね。この胸に一つのナイキが、まるで鶴のようではないですか?しゅっとした鶴のシルエットにシンクロ。

パンツは左右の色が違う斬新なデザインのアディダス。スポーツ対応素材なので超楽ちん。わたしはこれでランニングしてます。

GUや100円ショップも使う。

スニーカーはナイキからシルバーGUに。これにオレンジはちょっとやりすぎ感がでますね。まぁすでに十分でてるか?!汗。

扇子は黒字に赤いデザインがほんのりと。これたぶん100円ショップで調達した記憶が。笑 

ちなみにこの日の夫のスタイルはこう。

彼も学校経営陣、同じく課題はちゃんとやりますけど、彼は10代が活躍のスケートボードに感動したようで、61歳、スケボー観戦の図です。私と並んでも、まぁまぁいい感じかなー まぁまぁて。’笑)

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この市松模様のジャンパーは、ナイキ。その上にドレスコードである白シャツを重ねたのが面白いですね。スケートボーダーたちの白シャツスタイルもインスピレーションだったみたい。イエローのアディダスと鮮やかなネクタイで5輪カラーなんですって。さりげなく夫婦でネクタイを使ってるのもちょっとポイントかも。

うちのスクールではプロパーソナルスタイリストRをはじめ、ファッションエデュケーターRの育成もしているのだけど、私の鶴を門下生の金子春美さんがエデュケーションしてくれたので、ぜひご覧くだされば。解説があると、見る人がわかりやすく、また深く装の楽しさ感じることができ、エデュケーションする本人もざまざまな勉強をし新しい発見があるはずで、先ほど【服筋】を鍛える話をしましたが、文章力も同じく表現するということの訓練を積み重ねることが大事。スクールに入って、表現のヒントを沢山学んでも自分でアクションしないことには何も身につかないのです。

アカデミーオブスタイル&アートで学ぶ、エデュケーター志望の金子晴美さんのエデュケーションは以下。文章内に出てくるマスターとは恐縮ですが、私のことです。笑

「オメガが東京オリンピック開催に合わせて公開したコマーシャル、とても評判が高いですね。
そのコマーシャルにインスピレーションを受けたと仰るマスターの装いについてのエデュケーションを書かせていただきます。
まず、オメガのCMについて、そしてマスターの装いのエデュケーション、最後にWorldwideとJapaneseについてです。」

【オメガのCM】

オメガの今回のコマーシャルがとても美しいと評判です。
オリンピック競技のアスリートたちと日本の文化や景色、伝統を、半分に分割されたスクリーン上で見事に繋ぎ、1つの絵となって私達を楽しませてくれています。「オリンピック競技」、「日本の文化と景色」、そしてオメガに代表される「先端技術」という一見関係の無い3つのものが融合して、新しい絵となり新しい世界観を作り出すこのコマーシャル。マスターの装いにも通じるものがありました。


【装いのエデュケーション】


マスターがインスピレーションを受けたと仰るのは、陸上x鶴のシーン。全速力で走るアスリートと飛び立つ鶴が見事に一つのシーンとなっています。
マスターの装いのテーマは鶴。メッセージは「羽ばたけ」です。マインドフルなウェアでもあることも今回の重要なポイントです。
元アスリートだったマスターにとって、スポーツウェアは気持ちとのリンクが多く、マインドフルになれるものの1つだと思います。
今回マスターが選ばれたのはアディダスのパンツ。片足ずつ左右を黒と白にキッパリと色分けされたデザイン。一見大胆に感じるものの、ゆったりとしたシルエットと柔らかさを感じさせる生地でエレガントな雰囲気も漂います。トップスは白いスウッシュマークが胸元に描かれているナイキの黒Tシャツ。このスウッシュマークが鶴のイメージとリンクをしている、とマスターは仰っています。たしかにシンプルでシュッとしたシルエットは首が長いエレガントな鶴を思わせます。
黒Tシャツの上には、ノースリーブの白シャツをボタンを留めずにさらっと着流し、上から黒の羽織を重ねています。この羽織の織物は駒紗と呼ばれるものだそうで、透明感とシャリ感があり、清涼感もあるため、盛夏の着物によく用いられる素材です。紗は夏の羽織やお坊さんが纏う袈裟や着物として用いられることもあります。同様に絽も夏の着物に良く用いられる素材です。
夏の日差しの中で絽や紗の着物を着こなしている人を見ると、そこだけ涼し気に感じることがあります。実は着物を着ている本人は涼しい訳ではなく、周りの方に清涼感を感じてもらうために装っている、という話を聞いたことがあります。マスターもやはりこれと近いコメントをされています。自分はさておき周りの人のために、というところが「これぞ究極のギフト!」と思うと共に、私には日本人の心意気のようなものを感じます。
話をマスターに戻します。マスターが纏われている羽織の後ろ見頃には流水を思わせる透け感のある織柄があり、羽織の下に白シャツを着ることによって、涼やかな模様が浮かびあがります。これも、本人よりも周りの方たちに涼を感じてもらう、マスターの心意気のような気がします。

紅いかんざしと紅い蝶ネクタイを身に着けていらっしゃることから、モチーフは丹頂鶴と思われます。丹頂鶴は日本で最も大きくて美しい鳥で、長寿、人と神様を繋ぐ、生涯同じ伴侶と添い遂げることなどから、縁起ものとされています。
黒いTシャツに重ねられた白シャツと紗の黒羽織が白と黒のコントラストを作り出し、鶴の白い羽毛と羽先の墨黒を思わせます。紅の蝶ネクタイは手作りのものだそうで、それを解いた状態で首元に垂らす、すなわち堅苦しい場面はもうお終い。ここからはリラックスした時間ですよ、という言う意味に。リラックスしている状態、イコール、マインドフルな状態ということですね。そして紅いかんざしは、たしかお嬢様のものだと以前に伺った記憶があります。いつもあなたのことを想っていますよ、という母としての愛情を感じます。そして足元はシルバーのスニーカーを軽快に。
ヘアアクセサリは、髪をまとめて濃紺(に見える)市松模様のネクタイを鉢巻き風にアレンジされています。オリンピックロゴとリンクする市松模様はご存知のように柄が途切れることなく続くことから、繁栄の意味を込められていて、縁起の良い模様として好まれています。市松模様の白黒と透け感のある扇子で涼やかな雰囲気が増しています。
マスターの装いから、私は以下のようなことを感じました。


・自分ファーストではなく、周りの方たちに清涼感を与える心意気。(紗の着物、後ろに透け感のある模様)
・縁起ものの鶴と市松模様で、声には出さずともアスリートを応援する気持ち。
・鶴をイメージして、アスリートに羽ばたけ!と言う気持ち。
・解いた蝶ネクタイで表したマインドフル。
・娘のかんざしを装うことで言葉で言わずとも伝える愛情。

まだまだ読み取れていないメッセージがたくさんあるかもしれません。
そして、マスターの装いがオメガのコマーシャルにも通じる、と書いた意図について。
オリンピック競技と日本の伝統という全く違うものが融合して新しい世界観を生み出したのがオメガのコマーシャルだとしたら、羽織とスポーツウェア、或いは、蝶ネクタイとかんざしという全く異なる世界観のものを絶妙な塩梅で融合させ、新しい世界観、新しいスタイルを作ったマスターも、オメガのコマーシャルのコンセプトと同じ方向を向いているのではないか、と思ったのです。オメガのコマーシャルの衣服バージョンがマスターの特に今回の装い、ということです。


【Worldwide とJapanese】


クラスメイトのなおちゃんから、「マスターのオリンピックの装いはとてもJapaneseなんだけどJapaneseじゃない...すごくWorldwideな空気を感じました。」とのご感想がありました。私も深く同意しています。JapaneseなんだけどJapaneseじゃない。Worldwideな空気。なぜそう感じさせるのか?マスターに少しでも近づくべく、考えてみました。
まず具体的なところでは、マスターの衣服の纏い方が平面ではなく立体的に装っていらっしゃるということ。日本人の着物(平面的)ではなく、敢えて洋服(この言い方が適切かは疑問)として衣服を装っていらっしゃる。東洋の島国という異質な存在ではなくて既に世界の人と同じスタンスで同じ舞台に立って衣服をまとっている状態であるということ。(それがマスター)。
そのうえで、どのように「日本」を取り入れるかを考え、衣服や小物の裏にあるストーリー、文化、慣習、更に言うとその服や小物のスピリットみたいなものを正確に掬いだして融合させて纏う。オメガのコマーシャルコンセプトと同様に、「複数の異なるものを美しく融合させて、新しい世界観を創造する。」こと。
そして更に抽象的だけれど、心意気を纏うこと。たとえば今回だったら夏に着る絽・紗の着物。着ている本人は涼しくない。自分ではなく、見る人がすこしでも涼やかさを感じられるように準備をして装うという心意気。
一言でまとめてしまうと、洋服を深いレベルで理解し、日本の文化も理解し、マインドフルな状態になってはじめてWorldwideなJapaneseに近づけるのではないか、と感じました。ますます沼にはまりました。(以上です)」

金子晴美さん エデュケーション、ありがとう^^ちなみに彼女のオリンピックスタイルはこんな感じ。

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初めて出会ったときから、彼女は大きく変わりました。そのビフォーの写真はないんだけど、いずれ生徒さんたちの進化もまとめたいとおもう。マインドフルファッションを学び、繰り返し服筋を鍛えることで自分の持ち味を表現できるようになってきた、その軌跡を。また、春美さんには、エデュケーターになりたいという気持ちから、文章力、伝え方にも深みと愛情を感じます。

ちなみに生徒さんのなかにはご夫婦での参加をされている方もいて、この課題はもちろん、毎回,個でもペアでも唸らせる装いを見せてくれてますよ。

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白シャツとスニーカーという同じくくりがあっても、皆それぞれが自分の持ち味を発揮します。結局は、その人が持つメッセージが大事だということかな。メッセージ、ストーリー、生き方はごまかせないものですからね。

最期に

オリンピックが終わった。いろんな意味で歴史に残る大会になったと思う。開催自体も危ぶまれた。沢山の意見があると思うけど、私はシンプルに、アスリートたちに「ありがとう」。そして当初、装い分野で少し関わってきたこともあり(語り尽くせず・変更云々で諸々)思いは深い。同じファッション業界の友人たちも、心と労力を使った。高校時代の親友は報道のほうに関わっていたし、、実際の現場にいた人たちは必死だった。

よってオリンピック開催にあたり関わってきたすべての人に「おつかれさま」。


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