葉はめぐる
日本語音読指導者養成講座では母音子音の基礎発声を学んだあと、カタカムナ、古事記、万葉集…と松永先生の解説で学び、音読していきます。
そして前半の山場を飾るのは、「古今和歌集仮名序」です。
「やまと歌は、人の心を種として、よろづの言の葉とぞなれりける。
世の中にある人、ことわざ繁きものなれば、心に思ふことを、見るもの聞くものにつけて、言ひ出だせるなり。
花に鳴く鶯、水にすむ蛙の声を聞けば、生きとし生けるもの、いづれか歌をよまざりける。」
この仮名序は紀貫之によって書かれ、当時の文字を知る平安貴族はみな読んだそうです。その後の日本語に多大な影響を与えたことがうかがえます。
私は恥ずかしながらこの講座で初めてこの仮名序を知ったのですが、一文目の「やまと歌は、人の心を種として、よろづの言の葉とぞなれりける」に相当な感動を覚えました。現代でも皆が使う「言葉」というワード。人の心という種から言の葉(和歌)が生まれると一本の木になぞらえている。
「言葉」の由来を調べてみました。もともと「言端」「言羽」「辞」などいろいろな「ことば」があったようです。それが現代でも使われている「言葉」に落ち着いたのは、まさにこの仮名序が広く読まれたことからだったようです。どうりで!
ここで「言の葉」とされた和歌は、人の心から生まれ、誰かに届けられたり、多くの人に読まれたのだと思います。そして、木は動きませんが、葉っぱは時が来ると落ちて風や水の流れに運ばれ、徐々にその形を失い、土に戻ります。
昨日、地球ミュージアム(しつこい?!)で、気仙沼でカキの養殖をしている畠山重篤さんのことを知りました。畠山さんは1960年ごろから発生するようになった赤潮の原因を調べていくうちに、生活排水で川が汚れ森が荒廃していることが関係していることを突き止め、「海を守るためには森を守らねば」と山で落葉広葉樹の植樹を始めたそうです。落葉広葉樹ですから葉が落ちます。その葉が腐敗してできる物質フルボ酸鉄が川を流れ、海をきれいにする。
畠山さんの植樹の活動はだんだん広がり、今では子供たちも含めたくさんの人たちが植樹に参加しているそうです。
そして、「森は海の恋人」の合言葉を掲げ、植樹や講演会、自然体験プログラムの実施などの様々な活動を展開し、人々の意識に働きかけている畠山さんが書いた本のタイトルは、
「人の心に木を植える」 なのでした。
「やまと歌は、人の心を種として、よろづの言の葉とぞなれりける」
伝えたいことはいつの時代も同じなのかもしれません。