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Babywearingとは? 8年以上考察し続けている抱っこ紐の専門家の再発見とつぶやき

Babywearingという言葉は、赤ちゃんを抱っこ紐でだっこすることを表す言葉だけど、コレ!という明確な定義があるわけではなく、とてもぼやっとしている言葉だ。

赤ちゃんを抱っこすること
抱っこ紐を使って赤ちゃんを抱っこおんぶすること
布製の抱っこ紐を使った抱っこおんぶのこと
密着した心地よいだっこおんぶのこと
赤ちゃんが安全な姿勢でだっこすること(M字開脚とか)

どれもそう。なんだけど、やっぱりコレ!というものがよくわからない。

私は、Babywearing界で最高峰のスクールと言われるドイツのBabywearing School、Die Trageschule®︎が日本に招致された時、ドイツ人の校長先生に「ベビーウェアリングの定義はなんですか?」と聞いた。


先生は少し黙って、ふっと笑って、

「Just LOVE」

とこたえた。

どんな抱っこ紐を使うとか、赤ちゃんの姿勢とか、超具体的な細かいことを思って定義だどうだ言っていた自分が恥ずかしくなるほどの抽象度の高い答えに、私は完全に心を奪われてしまった。

親子が幸せならそれでいい。それに尽きる。なんてカッコいいんだ!!!

その日から私は、「抱っこ紐の種類はなんでもいい」「親子に寄り添うことが何よりも大事」「ひとつのこたえはない」とセミナーで何回も何回も伝え続けてきた。

これには、日本で一定層に広まる【「Babywearing」とは、主に布製の抱っこ紐(バックルが使われていなかったり、一枚布やスリングのように、シンプルな布に限りなく近い状態の抱っこ紐)で「赤ちゃんを纏うように」だっこやおんぶをすること】という暗黙の解釈や【決まった抱っこ紐を使い、決まった抱き方のみを練習していく】という、「Just LOVE」とは真逆の「流派」のようなだっこ論に対して主張したい気持ちもあった。

今でも基本的にはそう思っている。どんなタイプの道具を使うかは強制したくないし、「指導型」の抱っこ講座と「抱っこやおんぶを通した子育て支援」とは違いがあると思っている。

Just LOVEの精神で、「子育て支援としてのBabywearing」を学ぶことは、日本の子育て支援現場でだっこやおんぶの相談対応をするためには必要な視点だ。

そう気づき、Just LOVEのBabywearingを伝え続けていくと、心の中で新たな違和感や疑問がうまれ、消えない根っことなって増え続けていくようになった。

それは、Die Trageschule®︎(ドイツのBabywearing School)で学んだ"アレ"は一体なんだったんだろう?ということ。

アレ、とは。赤ちゃんの発達段階に合わせて姿勢を厳密に考え、だっこやおんぶの時の姿勢と抱っこ紐の使い方から、身体の発達を促したりサポートしたりできる、そんなだっこ紐やおんぶ紐の使い方が確かにある、ということ。

あやすため、お世話のため、愛着形成のため、だけではない、赤ちゃんの発達にアプローチしていくBabywearing。

確かに学んだはずなのに、日本で活動していると、なんだかよくわからなくなってくるのだ。

例えば、M字開脚の範囲が広すぎる。明らかにM字開脚姿勢にならない抱っこ紐の説明書に「M字開脚ができる」と書かれていたりする。

そこまでではないにしろ、安全なM字開脚とDie Trageschuleなどで学んだ骨盤のサポートには違いがあるように感じるけれど、はっきりと言語化できない。

また、次から次に発売される新製品は、Babywearing理論とはかけ離れ、むしろ赤ちゃんの発達へのマイナスの影響が心配になるものも当たり前にある。
世間ではそういう抱っこ紐が流行していき、レビューや比較検討記事は、トンデモなもので溢れかえっていく。

同じようにDie Trageschule®︎を学んだり、ドイツのBabywearing理論を学んだ同志であっても、「Babywearing」の意味の発信や安全基準などには一本通るものがあまりなく、なんだかそれぞれになっていく。

同じ抱っこ紐でも、どう使うか、どう伝えるかの考え方はコンサルタントそれぞれに任されていき、「Babywearing」って何なのか、結局よくわからなくなっていく。

私が考えすぎなだけかもしれない。でもなくならない小さな違和感。この小さな違和感に、少人数ながら、同じ想いをもって集ってくる仲間たちがいるという事実。

ズレは確かにあるのに、その正体は一体何なのか、どこからうまれるものなのか。
なぜ、Die Trageschule®︎で学んだBabywearingはこんなにも伝わらないのか。

そんな疑問の中で私はひとつの仮説を立てた。

日本には、古くからだっこおんぶの文化がある。「文化伝統の中で行われてきた」という歴史や受け継がれてきたものはとても大きく強いものだ。

もしかすると、日本で広まるベビーウェアリングは、この日本文化の側面と掛け合わされて独自に解釈されたものなのではないか?

一方で世界の一般的なBabywearingは、Die Trageschule®︎で学んだような、学術的な根拠のもと姿勢と抱っこ紐から発達を促すアプローチが入ったものなのではないか。

本来のBabywearingは後者で、世界的に実践されているBabywearingは、姿勢と抱っこ紐から発達を促すアプローチがされることが一般的なのではないか。

という仮説だ。こう考えると、いろいろとしっくりくる部分が大きかった。

であれば、「海外本来の、研究に基づいたBabywearing」と「日本で広まるBabywearing」を整理して理解しながら明確に学び、その上で自分が伝えていくBabywearingとはなんなのかを考えていけるような場所が必要なのではないか。

でも今の日本にそのようなアプローチで学べるスクールはない(と私は思っている)。

自分がスクールをやることには迷いがあったし、単なる資格養成機関にはなりたくないけれど、Babywearingの本質を学び、その意味や理論の軸を共にした仲間が集って深め合える場はどうしても作りたい。そんな想いで、「だっこの学校」をはじめることにしたのだった。

でも、この仮説には大きな思い違いがあることに気付くことになる。

だっこの学校で学ぶ内容を知ってもらうための講座の準備をしていた時のこと。

そもそもBabywearingとはなんなのか。いつどこで生まれた言葉なのか。海外本来のBabywearingと日本で広まるBabywearingとはなんなのか。ひとつずつ、全てを明確にしよう。その上で、だっこの学校で学ぶことはなんなのかを言語化しよう。

そんな目的でスライドを作っている時に衝撃的な真実に辿り着き、自分の仮説は間違っていたことに気付いた。

これまでの私の考察は、Babywearingには2種類の解釈があるということ。
・海外で研究された学術的根拠に基づくBabywearing
 (愛着形成などの心理面と身体の発達へのアプローチ両面を含むもの)

・日本文化の側面で解釈されたベビーウェアリング

というものだった。

今回わかったことは、

・Babywearingは本来「愛着形成育児」の側面からうまれた言葉
・世界で一般的に広まるBabywearingは「愛着形成育児」の方法のひとつという側面が強く、赤ちゃんの姿勢に関しては窒息防止やM字開脚など最低限のルールに留まっていること
・世界で一般的に広まるBabywearingが、日本でも同様に一般的に広まっているのだということ
・赤ちゃんの発達に合わせた姿勢をサポートすることで身体の発達を促すアプローチとなるBabywearingは、DIDYMOS本社やDie Trageschule®︎で研究や実践がすすんでいるもので、「愛着形成育児」からうまれた「Babywearing」とは起源が別にあること
・研究が進むドイツであっても、姿勢サポート型のBabywearingは一般的に広まっていないこと

つまり、世界でも日本でも一般的に広まっているのは「愛着形成型のBabywearing」で、

私がDie Trageschule®︎で学び感銘を受けたBabywearingは特別な研究に基づいた「姿勢サポート型のBabywearing」で、世界的にみても珍しいもの、ということなのだ。

ここが私の大きな思い違いだった。

感じ続けた違和感、伝わらないもどかしさ、自分の中のいろいろな疑問や思いが全て解決するような気づきだった。

同じ「Babywearing」という言葉が使われているけれど、同じものではなかったのだ。(なぜ同じ名前を使ったのかなあ。)

何年か前に新生児医療に関わる医師の方と直接お話しした際、「要はボンディング。愛着形成でしょ。そんなのとうに実践してますよ」と言われてしまい、何も言えなかったことも、もしもこの違いに気づいていたら、もう一歩伝えられることがあっただろう。

言語が違って、国が違って、その国々での文化や一般常識がわからないことから、こんなにも翻弄されてきたのか。8年間も。

Die Trageschule®︎を受けたみんな、知ってたの??
私の理解が及ばなすぎた?英語がわかれば、解説されてた?

声にしてもしょうがないのに、私は部屋の中で問いかけていた。

知れば難しくもなんともないことを、捉えきれずに何年も疑問に思ってきたことに拍子抜け。私にとっては大きすぎる衝撃で、脳がオーバーヒートし翌日から寝込んでしまった^^;

Babywaeringとは何なのか。

だっこの方法や赤ちゃんの姿勢、抱っこ紐の使い方、How to を学ぶ以前の、「そもそも」のことを知らずして、本質的な学びはできないのではないか。

自分が学ぶ(学んだ)Babywearingは、愛着形成型なのか、姿勢サポート型なのか、整理されて理解できていないから、せっかく学んでも、現場に出ると伝えることがぼやけるのに違いない。

今後もDie Trageschule®︎が日本に招致されるのかもしれない。
受講者には、Die Trageschule®︎の学習内容の特別さや意味を知ってから学んでいけるような事前学習が必要だ。それがあってはじめて、医療現場でも実践されるような「姿勢サポート型のBabywearing」が日本に伝わる一歩になるのではないだろうか。

今回、8年以上にわたる考察の中で、最も違和感のないひとつのこたえに辿り着くことができた。でも、もしかするともっと別の真実は、まだあるのかもしれない。

Babywearingとはなんなのか。きっと私の考察に終わりはないのだろう。

※ここに記したことは、一個人の考察であり、世界のBabywearingの解釈や現状について誤りがある可能性もあります。
もしもそういった世界のBabywearingに関する情報を知っている方がいらっしゃいましたら、教えていただけましたら幸いです。

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