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みみ

ある朝起きてトイレに行った。
トイレの水が流れない(私は便座の蓋を閉めてから流す)。おかしいなと思ってなんども流す。
水が溜まるタンク?あそこの流れる所からは水が出ている。
水は流れているんだ・・・どうして聞こえないんだろう。
そのくらいの気持ちでいた。

TVをつけた。音が聞こえない。消音になっているのかと思ってボリュームをあげたけれど消音ではなく、聞こえていないとわかった。
そこからは何が何だかわからないし不安で怖くてパニック状態だった。
意味もなくお鍋を叩いてみた。聞こえない。
とにかく音が出るものを片っ端からやってみるのだけれど「音」が無い。
近くにあったお皿を床に叩きつけてみた。ガシャンという音が微かに聞こえた。
どうして良いのかわからなかった。
誰に助けを求めたら良いのか。
とにかく受診しよう、そう思って夜間救急をしている病院に行くことにした。
が、タクシーが呼べないのだ。
タクシー会社に電話をして、耳が聞こえなくなった事を説明してSMSで返事をもらった。

10年前くらいにメニエール病になり、聴覚は落ちてきていた。
けれど半月前の検査では聴力の著し落ちはなかった。
突難(突発性難聴)なら徐々に聴力が落ちることは無い。メニエールで徐々に聴力が落ちていたから、突難は考えにくいなと。
だからこの2つは除外だろうとタクシーの中で考えていた。冷静になっていたというか。
耳鳴りさえ無いから間違いなく他に原因があるだろうと思った。

エンジンの音も聞こえない。
無音の世界ってこういう感じなのかーと。
冷静な様で冷静ではなかった。
看護師として働けなくなるなということ。
音楽が好きなのにライブに行けなくなるんだなということ。

何よりも思ったのは私が今まで出逢い、沢山の会話をした人たちの「声」は私の中に残っている。
その「声」を聴くことはもうできないのかなということ。
う〜ん・・・でもやっぱり最初に思ったのは看護師が出来なくなるという事だったかな・・・。

また、長いトンネルに入るのかなと思った。
パニックになって色んな人に心配をかけた。
その中でも私にとってはかなりキツイと感じる言葉もあったけれど
それはその人がそう感じてかけてくれた言葉だから。
私の勝手な解釈では私と距離を取りたいのだなというのも感じた。
それはそれで構わなくて、パニックになって言われても困る事を言って申し訳なかったなと思う。

10年間メニエールで思う様に身体が動かず悔しい思いもした。
そうして今度は聴力を奪うの?と思った。
ほんの数日で心のバランスが崩れた。医師からは「突然の事だから仕方がないから」と。
何が原因でとかもうどうでも良くて・・・良くはないけど。

耳は時間がかかっても少しづつ良くなると思う。
8月から写真を撮っていこうと思います。
私は前に進みます。

それではまた

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