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『パラサイト 半地下の家族』モノクロ版でも桃を持ったパク・ソダムは美しかった

『青春の記録』を完走して切れ長一重まぶたのパク・ソダムに魅了され、その勢いで『パラサイト 半地下の家族』のカラー版、続けざまにモノクロ版を観賞しました。

 半地下の住宅に暮らすほぼ無職のキム家族と、山の手の豪邸に暮らすセレブのパク家族。浪人中のキム家の長男ギウ(チェ・ウシク)が友人のミニョク(パク・ソジュン)に頼まれ、大学生と偽ってパク家の長女ダヘの英語の家庭教師「ケビン」としてパク家に潜入。
 ギウにつづいては妹のギジョン(パク・ソダム)がダヘの弟ダソンの家庭教師「ジェシカ」として、父(ソン・ガンホ)がVIP専門のベテランドライバー「キム運転手」としてパク家にパラサイト成功。

ポン・ジュノ監督の意図、カラー版・モノクロ版それぞれの効果などはもうさんざん各所で考察されていて、それらを検証していくのも楽しいのですが、言わせてもらうと…カラーとモノクロどちらがいいもクソもないというのが個人的感想(汚いことばを使ってしまいましたが褒めことばです!)

すでにストーリーも演出もわかっている状態でモノクロ版を見たとき、「言い回しがいなせ過ぎて何言ってるかいまいち聴き取れない昔のモノクロ日本映画」みたいに感じたのです。それってどういうことなのかなと考えると、

・逆にそれぐらい韓国語会話のリズムや単語が感覚的にしみこんできている

・モノクロ画面によって、おとなりの国がさらなる異国にも日本にも見える

つまりモノクロ版『パラサイト』は、どこの国・いつの時代であってもおかしくないタイムレスな異空間。そもそもこの映画には、韓国ドラマでおなじみのカフェもポチャもチムジルバンもチキン屋も出てこない。ギリギリの生活臭がぷんぷんする貧困街と、生活感のまったくない山の手、両極端な2ヵ所だけ。まあでも、ここで格差の演出に言及するつもりはないんです。

モノクロだとより闇は暗く、雨は重く、水は怖い

とにかくカラーだろうがモノクロだろうが、キム家の面々のそれぞれの胆力が立派すぎて痛快でした。お母さん(『不時着』のダンちゃんの母❤)だって8分でジャージャー麺をつくるスキルもある。

中でもやっぱりパク・ソダム演じるギジョン。彼女だけが、パク家における「誰かのかわり」ではないんです。文書の偽造をくわえタバコでこなすやさぐれギジョンが、ネットで拾った心理学のキーワードを会話に埋め込み、イリノイ帰りのカリスマ美術講師「ジェシカ」として信頼を得る。付け焼刃だとしても、オーラでマウントして自分の力で居場所を勝ち取った。クールすぎる。そしてある作戦実行中、“禁断の果実”桃を颯爽と買って桃の毛をふっと吹くシーン。モノクロのパク・ソダムと桃、最近見た映画の中で一番といっていい印象的な美しいシーンでした。

淡々としているようで繊細な表情の演技と、やさぐれでもジェシカでも動きひとつが様になるソダム。一重女優として一緒に語られることの多いキム・ゴウンよりも、わたしは彼女のたたずまいに惹かれました。

ちなみにアメリカ・インディアンやカブスカウト(ボーイスカウト)といったキーワードがあるこの映画。わが息子がスカウト6年目なので、気になって韓国のボーイスカウト事情を調べてみました。2020年2月時点での加盟人口は韓国が137,703人、日本は109,687人。そもそも人口は日本のほうが圧倒的に多いので、韓国のスカウト比が高いということになります。1999年から年に一度「日韓スカウト交歓計画」という交流事業が行われ、高校生年代のベンチャースカウトを中心に、日本と韓国の青少年がスカウト活動を通じて交流を深めているようです。2020年はオンライン開催。どんな形であれ国境を越えたチャレンジ体験ができるのはすてき。

ところでスカウトたちがキャンプなどで歌うスカウトソングに「永遠のスカウト」という歌があるのですが、その歌詞に、スカウトは「死ぬときまでスカウトだ」「死して後もスカウトだ」とあります。初年度に同行したキャンプで初めて聞いたとき、お母さんたちがざわついたものでしたが、この映画に当てはめてみると、一層ぞっとします。ポン・ジュノ監督はこの歌を知ってるのでしょうか…


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