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こうして怪談は生まれる『近畿地方のある場所について』感想

『呪術大全』という本を買ったことがあるじゅんぷうです、こんにちは。

小説サイト【カクヨム】で連載されていた作品の書籍化で話題になっていた『近畿地方のある場所について』。帯には「見つけてくださってありがとうございます」。

つぶやきもしたけど、昨夜ベッドで読み始めたらこわすぎました。でも続きは気になるので、今日の昼間、カフェで読むことに。

巻末の袋とじ【取材資料】を開封する勇気はなかった

著者はオカルト誌の執筆経験のあるライター。一緒にオカルト企画を進めていくうちに失踪してしまった友人で新人編集者「小沢さん」の行方の情報提供を求めるお願いで始まります。いわゆるモキュメンタリーで構成された本なのですが、このお願いを読んだときから、いえもしかしたら帯の「見つけてくださって…」を目にしてしまったときから、読者を巻き込んだ【怪談】は始まっているのです

オカルト誌編集部にある膨大なバックナンバーの掲載記事やボツネタ、取材資料、さらにはSNSのスレッドなどから、時代・場所・人物もバラバラの断片的な怪談・オカルトネタが次々に提示されます。ひとつひとつのネタもなんだか薄気味悪いレベルからショッキングなものまでいろいろですが、それが積み重なってくるころ、じわじわくる恐怖に耐えられず、わたしはいったん場所の特定作業に逃げました。

タイトルが関西ではなく近畿という時点で、これはズバリ三重では…? とも思いましたが、関東人ながらにあのへんも当てはまりそう…いやあのへんも…と思えてきます。これはあえて特定できないようにしているだろう制作サイドの思うつぼかも。

そして読んでいくうちに「見つけてくださって…」の一文がもたらす意味が変わってきました。「わたしも何かを見つけてしまったらどうしよう」という恐怖に支配されたと思ったら、次のフェーズがあったんです。「わたし、もう見つかってしまったのかも…」と。よくできてます。

だいぶ前半のほうでもうだめだ、ほかの誰かにも読ませて恐怖を共有しないと、と思ってしまったんですが、恐怖の伝播ということでいうと『リング』の1作目にも近い雰囲気。この作品そのものが『リング』の呪いのビデオなのかもしれません。たとえば誰かと共有したら、今度はわたし視点で「見つけてくださって…」になって広がってゆく。作中で描写されている子どもたちの遊びも然り、都市伝説や口伝はそういうものなのだと思います。なんだけど、なかったことにするにはもう手遅れ。

はー、お灸してK-POP聴いて寝よ。

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