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Road to master 8粒目

「喫茶店への恩返し」
 喫茶店事業口座開設の為、銀行の副支店長さんと面談がありました。お店の近くの銀行をメインバンクにしようと前から考えていたのだが意外とというと失礼だがメガバンクでは無いとはいえ小さな喫茶店の事業資金をまわす為の口座開設の為にわざわざ副支店長クラスが会いにくるのかと多少不思議ではあった。

マスク越しにも笑顔とわかる表情で副支店長は簡単な談笑の後、僕の経歴や事業計画を一通り聞いて目を見開いて最後に「なぜ今、喫茶店なんですか?」と聞いてきた。
現在、新規開業の為の口座開設希望が増えているらしい。『色々な理由』から口座開設に伴う審査をこうして面前でも行っているとの事。おそらく一個人が事業用とはいえ安易に口座を複数作りたいという事に一定のハードルを設けているのだろう。

僕は「なぜ今か」については「今だからこそ」と話した。このコロナ禍で世間は大きな変換機を迎えている。事業縮小や倒産や閉店の話は嫌でも目に入ってくる。しかしその殆どが「好景気もしくは安定景気」にオープンしている。つまりその時期に設定した損益分岐点を大幅に下回った結果このコロナ禍を迎え、乗り切れなかったという分析。しかし今この時期を「起点」とし世の中の安定期への情勢を目論み「今」動き出すのだと。世間が安定から好景気に向かう時に動き出すのでは遅いのだ。

そして「なぜ喫茶店なのか」について僕は「恩返し」と答えた。副支店長は「恩返し?」と首を傾げた。「喫茶店」は生きていく中で「人々にとって絶対的に必要な物」ではない。しかし多くの方が何気なく生活の中で触れ合ってきたのが「喫茶店」なのではないだろうか。

子供の頃、親に連れられて珈琲を飲みながらタバコをふかす大人な親の隣でクリームソーダ飲んだり中学生の頃デートで少し背伸びして制服のままモダンな喫茶店に入ったり、大人になってからは営業まわりの途中でサボったり、何かしら「喫茶店」と触れ合ってきているのではないだろうか。
そして過去の自分の情景をふと訪れた喫茶店に重ねあわせて色々な事を思い出したり。私はたまに喫煙可能な喫茶店に遭遇すると、亡き父の面影を喫茶店に重ねて思い出したりする。そんなドラマチックな場所でもある。喫茶店はそんな様々な「場面」をクラッシックで琥珀色の思い出のような「情景」を記憶させてくれた大切な「場所」なのだ。

その大切な場所としてこれから「僕が作る喫茶店」に触れていく人達の情景にしていきたい。一種の「喫茶店という文化への恩返し」である。自己満足、自己完結ではあるが喫茶店に来て僕の珈琲を飲んでくれた人の人生の片隅で「小さな情景」になってくれたらきっとそれが僕にとっての「喫茶店への恩返し」になるのだと。

副支店長は「わかりました。しっかりとした準備と事業計画、そしてとても良いお話が聞く事が出来ました。きっとお力を貸す事ができると思います。」と優しく微笑んでくれたのがマスク越しに伝わった。
少しずつ前に進もう。

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