セレッソ大阪を調べてみた
会計は企業だけがやるものではなく、自治体や個人なら確定申告、家庭なら家計簿、子供ならお小遣い帳など密接に関係しています。ただし多くの日本人は会計=難しいものだと感じていますので、身近にありファンであるセレッソ大阪をベースに財務情報を分析して他のかたも身近に感じてほしいと思い投稿しました。
Jリーグは、財務情報をクラブ別に開示していますが、あまり注目を浴びておりません。他クラブも分析できたらと思いますが、まずはセレッソ大阪の開示ベースの財務情報を見ていきたいと思いますので、お付き合いください。
BSって何?
最初に貸借対照表(通称:BS)のお話を軽くします。
企業の会計を知っている人は常識的なものですが、そもそも何?って言う人は大卒でも一定数はおります。なので知らない人が多いと思って安心していただいて大丈夫です。
他に損益計算書(通称:PL)もありますが、イメージのため、一気にお話します。
私は、BSやPLって何?って聞かれると、体重や食生活みたいなものだよと答えています。
今日60キロなら、明日は60キロから増えるか減るかはあっても、60キロ丸々無くならないでしょ?そういう引き継いでいくものがBS。
PLは普段の食生活を表しているもの。今日バランス良く食べても、明日暴飲暴食かもしれない。そういうリセットされるものを表したもの。と説明しています。これで多くのかたは分かったフリをしながら、頭にクエッションが浮かんでいると思いますが、専門的なものを理解するなら、専門書を読むのでいつもその説明で逃げています。
余談ですが、破産しそうな会社を元気にしようと「再生」の仕事を受けるんですが、借金が多くて返済が厳しいと説明を受けますが、太りすぎている人に脂肪吸引(BSの改善、リスケ等)だけの処置をする医者はいないと思っており食生活の改善(PL)とセットで治療するものと認識しております。
ではBSの典型例を見てみましょう。これが体重と説明したものです。
見ても体重の話とは思いませんね。単純に右で資金調達(資本)して左側で買ったもの(投資)や現金(資産)を表しているだけです。
企業は誰から資金調達するか。銀行(他人)からか、株主(自己)からか。そのイメージだけでいいです。
日々の食生活が良かったら、繰越利益剰余金が増えていきます。ただそれだけのイメージだけで大丈夫です。
セレッソ大阪は債務超過と言う話を聞きますが、右側が左側を超過している状態が債務超過です。言い換えると≪純資産の部(自己資本)がマイナスの状態≫が今のセレッソ大阪です。
会社は誰のものか?
株主のものです。社長のものでもありません。会社という観点で考えると、選手のものでもファン・サポーターのものでもありません。前述のBSで見ますと純資産の部の資本金に株主が出資した金額が表れています。Jリーグクラブは公益性が高いのでホームタウンのものとも考えられますが、まずは株主のものです。そのため「自己資本」と言います。
「株主」は誰なのか?
まず、㈱セレッソ大阪の「株主」は誰なのか。多くの人はご存知かと思いますが、日本ハム㈱とセイレイ興産㈱(ヤンマーホールディングス㈱の親会社)を筆頭に、大阪市やメディア関係等が入っています。探してみますと確定的な株主比率はヤンマーホールディングス㈱の子会社合わせて16.5%しか見つけられませんでした。また2019年度に㈱セレッソ大阪は1.7億円の増資(追加出資)を受けています。記憶ではここで子会社8社が新たに株主になりました。
ここからは推測ですが、増資1.7億に対して全体の16.5%ということで、株1枚の出資額が初期株主と同じであった場合(4.85億×16.5%=約8千万)となりますので、残り約9千万円は初期株主の誰かが出している計算になります。2018年までは日本ハム㈱とヤンマーグループは同様の出資比率でしたので、残りをセイレイ興産㈱が出資していた場合は、増資を機にヤンマーグループの支配力が増したかもしれません。(注:あくまで推測ですが役員数の変化を見るとそのように読み取れます。)
また㈱りそな銀行が株主にいるということは、セレッソ大阪のメインバンクはりそな銀行と推測されます。
セレッソ大阪ファンからすると、銀行はりそなで、電気は関西電力で、という考え方もありかと思います。
ここからは余談ですが、資本金って何?とよく質問を受けます。定期預金みたいなもんだよと返答していますが、資本金が多い=社会的信用力が高いという考え方はあまり好きではありません。(※個人の感想です)資本金が高いと支払う税金も多くなりがちですので、㈱セレッソ大阪のように繰越利益剰余金(過去からどれだけ稼いできたのか)がマイナスの場合、減資(繰越利益剰余金を補填)して資本金を減らす手もありだと思います。個人的意見では、節税(外形標準課税を下げる)のため、資本金を1億円以下にしてほしいと考えています。
直近の大きな減資の例で申し伝えますと株式会社JTBのような例です。
※企業の税金は多数ありますが、利益に課税するものもあれば、資本金に課税するものもあります。利益についてJリーグクラブは出にくい構造になっておりますので、資本金等に課税されるもの(外形標準)を減らせば、節税効果はあります。税の世界では【利益=所得】と言います。なので所得税は利益(所得)に課税されている。法人の所得税のことを法人税と呼びます。難しく言わずざっくり言うと、そんなものです。
自己資本比率(自己資本÷総資本(自己資本+他人資本))を計算すると、年々下降線です。クラブライセンス基準に債務超過基準があるので、自己資本比率はいわば、HPみたいなもので、19年度で残り1.9%になったところで、コロナ禍の影響で債務超過になりました。言い換えれば2019年度の増資が無ければ2019年度から債務超過に陥っていた可能性はあります。(Jリーグ退会の危機)
債務超過解消の目途は?
コロナ禍において、Jリーグは財務基準に特例措置など設けました。
セレッソ大阪において当てはめると、22年度末において、
債務超過が解消されていなくてもよいが、前年度(▲ 1,204M)より債務超過額が増加してはいけないとなり、言い換えれば、以下2点のどちらかになります。
① 2022/1末期は赤字を計上してはいけない。
② 2022/1末期が赤字の場合は、増資(新株発行)を受けなければいけない。
① の場合は、ヤンマーグループから赤字補填していただければ達成可能となります。デメリットは、24年度末までに、12億の債務超過を解消するためには、税引後12億の利益を計上する必要があります。これは税金控除後ですので、税引前で約18億円補填してもらう必要があります。赤字補填により大きく黒字化するケースは想定されないと思いますので、広告収入で入れる方が無難かと推測しますが、ヤンマーグループにとって債務超過12億円を解消するために、18億円を払うのか?と言われれば躊躇すると推測されます。実際には繰越欠損金(過年度の赤字)がありますので18億円までいかないまでも、12億円以上を払わないといけないのは間違いないです。
※繰越欠損金とは、過去赤字(▲ 40万円)を計上していた会社が当期黒字(10万円)となっても体力がついていないので、税金を納めていては倒産危機に陥ってしまいます。
そのため、黒字(10万円)から過去赤字(▲ 40万円のうち10万円)を利益から引いて、利益ゼロ(=所得に掛かる税金をゼロ)にしようという制度です。過去の赤字は今期10万円使いましたので、残り30万円は翌年度に控除できます。
ただし控除できる期間にも期限があり、今は9年となっています。これが資本金1億円を超えると、控除できる金額は50%になりますので、先ほどの例の数字では黒字(10万円)から赤字(▲10万×50%)が控除可能で、残り5万円に税率を掛けた金額(約18,000円程)納税する必要が出てきます。そういった理由から、前述の減資の話になりますが1億円以下に減資したほうが節税効果はあると考えています。
② の場合は、ヤンマーグループや日ハムから増資をしていただければ達成可能となります。同一割合から出資してもらえれば問題ないですが、片方から出資してもらう場合は影響力に差があります。個人的な推測でありエビデンスなどないですが、ヤンマーグループからのみ、出資してもらった場合、最悪の場合、日ハムがスポンサーから降りる可能性も出てくるのではないかと思っています。これはセレッソ大阪において最悪のストーリーです。セレッソ大阪において新型コロナウイルス感染症感染拡大の時期が、非常に運が悪く、ヨドコウ桜スタジアムの建設と北海道ボールパークの建設が重なる時期にコロナ禍となりましたので、両企業とも債務超過解消の金額を余分に拠出していただけるのか?が疑問点です。両企業の決算短信等を拝見する限り、コロナ禍で特段ダメージを受けてはいなかったのですが、果たして両者とも出していただけるのか。
デメリットは回避することは可能で、新しい株式(増資)を配当優先株(他の株式より多くの配当金をもらえる株式)の無議決権にしてしまえば、現在と影響力は変わりません。Jクラブで配当しているところは、ほぼないでしょうから(それなら選手や施設に使おうとなりますので)。また増資と共に減資をしてしまえば、私の主張の1億円以下に減資するのは可能です。
セレッソ大阪にとってありがたいのは、資金力のある企業が株主兼スポンサーにいただいていることであり、両企業とセレッソ大阪の関係が末永く続くことが一番と思います。
一方で、両企業がいらっしゃるうちに自立的な経営(赤字補填に頼らない経営)が必要ではないかと思います。
次回は負債や資産側について考えたいと思います。
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