六分儀句会師走の段

句会を始めて一年。面子は増えたり減ったりですがとにかく一年続きました。お疲れ様でした。今回は冬の空(宇宙的な意味で)と美味しそうな食べ物の句が多くていまみんな何がほしいのかわかるような気も(笑)寒くなりました。みなさまご自愛を。



1. 火星への通信拾っちゃって冬 (青に桃々)4点
◎ わたなべじゅんこ 宇宙が近くなるんですよね、冬って。
◯ 岡田朋之 アマチュア無線でしょうか。火星「への」ですから、地球からですかね。
◯ 髙橋梨華子 雑貨屋さんに並んでそうな言葉の並びで、なんだか可愛らしいです
△ 久留島元 火星、通信、冬、面白いけどしっくりこなかった、「~ちゃった」があざとかったかな


24. 冬オリオン書店員の手に指輪 (山本たくや)4点
◯ わたなべじゅんこ 帰り道寄った書店。店員さんの手に指輪が光っている。時節柄、プレゼントかなあなんてよけいなことを考えてしまった私。
◯ 青に桃々 冬のオリオンのような指輪。書店員(男)の手に指輪ケースか、書店員(女)の指に指輪か迷いました。星降る夜のプロポーズだといいな。
◯ 宮川由梨 行きつけの書店で密かに見ていた店員さんの指に見つけてしまったんでしょうか。眩しい輝きを。
◯ 髙橋梨華子 淡い恋心の消失の瞬間でしょうか。ちょっとちくっとする感じです。
△ 久留島元 これ、気になっていた相手の指に結婚(婚約)指輪があった、などととるべきでしょうか。指輪だけでは読み切れないかと思いつつ、指輪で想像広げるのもベタかなあとも。


43. 陳列のすべてが十二月を主張 (髙橋梨華子)4点
◯ 久留島元 クリスマスですね、すごくよくわかる。説明的になりきらず見事な五七五だと思いました。
◯ 宮川由梨 一気にクリスマスと正月に染まりますね。でもクリスマスカラーの商品とか魅力的でついつい手が伸びてしまう。
◯ 佐伯一馬 年末とクリスマスでカオスな売り場が多いです
主張が強いのは確かにですね
◯ 山本たくや 分かる分かる、といった感じ。クリスマスやお正月シーズンならではのスーパーの光景でしょう。ただ、一見しただけでは読み取りにくいかも。
△ わたなべじゅんこ 店指定ないのに伝わる「陳列」という言葉の威力。


2. ふしだらな踵であります冬日向 (わたなべじゅんこ)3点
◎ 髙橋梨華子 靴下が弛んでよれているのか、くつのかかとを踏んで歩いているのか。気怠げな感じがおもしろいです。
◯ 岡田朋之 ふしだらな踵……だらしなくてケアされていないのだろうか…△ 久留島元 ふしだらな踵、なんでしょう。世の中にはいろんなフェティズムがありますもんね。~あります、の口調が軽やかで、いっそもっとつきぬけて変態感出してよかったかも。


35. 孤独まで届く長さのマフラー編む (岡田朋之)3点
◎ 佐伯一馬 延々と編み続けそうな気もします
◯ 山本たくや 怖い。というか病んでいる?マフラーを編む長さを「孤独」ではない別の表現にしたら、もっと良かったかなと思います。
△ わたなべじゅんこ 編むじゃない方がいいかも。編む行為は主体的なので。


36. 山彦が閉じこめられて眠る山 (久留島元)3点
◎ 宮川由梨 反響する音を飲み込んで静まる雪山の景色が浮かんできます。
◯ わたなべじゅんこ 山彦がいい。海を思って悶々としている?ほかに心当たりのある山彦さんもありますが、海彦山彦で通したい。

39. 午後十時寒猫するりと来て座る (わたなべじゅんこ)3点
◎ 岡田朋之 動きも景もわかりやすくていい。普段は寄りもしなくてもこんなときは膝の上にでも座るのでしょう。
◯ 黒田さつき 魔の時間なのか癒しの時間なのか


41. 裏切ると決めて冬の朝あるく (岡田朋之)3点
◎ 久留島元 字足らず、ですよね。裏切るという背徳感、しかし止むにやまれぬ、使命感もあるのか、その決意の重さと冬の朝の冷たさ、心細さがうまく響き合っている気がします。
◯ 宮川由梨 冬の朝のぱりっとした空気が揺るぎない決心を思わせます。裏切るという後ろ向きな感じですが。


5. 使い捨てマスクに水ばなの光る (久留島元)3点
◎ 山本たくや 着目点が良いですね。このご時世だからというのもあるかもしれないが、今後も普遍性を持って残りそうな一句。汚ならしい「水ばな」も、そうは感じさせない所も良い。
◯ 佐伯一馬 何もなくてもマスクをするのが当たり前になっている中でかえって水ばなが珍しい気すらします。

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