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ウィスキーのソーダ割り② 『沖縄の中の沖縄』編

知人を訪ねて沖縄の空港まできた。

海外旅行もしたことのない二十歳の私には初めての海外のワクワクと不安が入り混じっていた。

不安がやはり先に到着した・・・

プルプルプル・・・・プルプルプル・・・

電話に知人が出てくれない・・・空港からどのように行けばいいんだろう

知人は沖縄の人で京都で一緒にバーで働いてた頃に仲良くなった。

沖縄によんでくくれたのはいいが『空港に着いたら連絡してきて!迎えに行くから!』この言葉を完全に信じてしまった。

空港で右往左往しているとしっかりと沖縄の方とわかる風貌のおじさんに声をかけられた。『ホテルは決まってるか?』

『あの・・・友達が迎えに来ないんで困ってて・・』

おじさんに住所を見せると『すぐそこさ!真っ直ぐ歩いて着くさ!』

僕は重たい荷物を持ちながらおじさんを信じて空港を後にした。

親切なおじさんで良かった・・・ん?さっき、すぐって言ってたよな・・・

ハイビスカスが植えられた先の見えない真っ直ぐな道・・・えっ?何キロあるんやろ・・・『すぐそこ』の概念の違いに汗だくになった

ひたすらテクテク歩いては休憩をし二時間近く歩いたらやっとお店が出てきた。

アロハシャツ屋だった。

汗だくだし着替えたいのと沖縄にきたんだから現地の格好になろうと入店した。

空港で親切にしてくれたおじさんが着ていたアロハ良かったな〜

後で知ったがあれはアロハではなくかりゆしだった。

店員さんにおじさんの格好を説明して同じものを見繕ってもらった。しっかり短パンとサンダルも。

早速試着室で着替え、またテクテク真っ直ぐ歩いていると遠くからこちらに手を振る人が見えた

『よーきたねー」やっと知人の登場である。

『意外と早く着いたねー』いやいや飛行機で時間どうりの到着だったし・・・

『でなんだ?その格好は?なんか撮影か?』

『ん?沖縄に来たから沖縄の格好してるだけやん!』

『お前ーそれは公務員の格好だよー』

暑くて書いていたはずの汗が一気に冷や汗へと変化した。あの親切なおじさんは観光協会の職員さんだったのだ・・・

すぐさまショップへ入り知人のアドバイスをもらい現地の若者が着ているアロハと島ぞうりを購入した。

そのまま新しくできた東横インに到着しくつろいでいると知人が今夜8時から居酒屋で歓迎会するから来いと言われた。

その夜、歩いて少しの距離にある居酒屋へ8時少し前に到着し予約の名前を告げ案内された個室の前に着いた。初めてに人に会うから少し緊張し襖を開けるとまだ誰も来ていなかった。

しばらく待つことにしたが誰も時間になっても来ないのである・・・

8時半に真面目そうな人が来たが無口なのか全く話してもらえず沈黙が続いた。やっと9時過ぎに聞き覚えのある知人の声と騒がしい男性の声が近づいてきて襖が開いた。『ナンクルナイサー』オリオンビールを片手に入室してきた知人たちと合流。

『後何人くる?』

『わからん!』

こうして宴が始まった。

沖縄料理・泡盛がたくさん出されみんな楽しく過ごし歓迎されていると思った。

気がつくと9人に増えていてみんな酔っ払っていた。

『そろそろ行くかー!』

『ん?どこ行くん?』

『これからお前の歓迎会をするぞー』

『えっ?』まだ始まっていなかったらしい・・・そしてまだ歓迎はされていなかった・・・

店を出て歩いて商店街を抜け港公園まで歩いた。来る途中、小さな個人店の酒屋で藁に包まれた一升瓶の泡盛を購入した。

港公園の芝生に輪になって9人が座り泡盛を開封した。

60度???そう60度の泡盛『どなん』だった。

それをラッパのみし隣に引き継ぐ。また隣に引き継ぐ。それが永遠続く・・・

これが沖縄を代表する飲み方『オトーリ』だった。

流石にふらふらになり知人にいつ終わるのか尋ねたら大人しい知人が倒れた・・・『あのようになったら終わりね!』

かなりヘビーである。その後もオトーリは続きみんなぶっ倒れた

しばらく芝生で倒れていると朝日を感じ次々起き始めた。そして解散した。

オレはホテルまでの帰り方がわからないのでタクシーを拾い乗った。ラジオから沖縄の方言のニュースが流れていたが全く理解できなかった。『ついたよ。3万円』

えっ!そんなに遠くまできたんだ・・・確かに途中寝てしまったが二時間は乗っていた。仕方なく支払いを済ませホテルの部屋で横になった。

ん?テレビの音?目覚めるとなぜか知人が部屋に・・・『起きたか?お前は今日から沖縄人だ!』どうやら歓迎されたらしい

そしてまだ昼だと言うのに飲みに出かけた・・・

『今朝タクシー乗ったら3万だった』

『やられたなー港公園はホテルの隣さー観光客相手にやってるタクシーにやられたのさーナンクルナイサ』

知人曰くそうやって経済が回って自分たちが酒を飲めるんだと・・・

こんな観光をしないで毎日飲み歩いて散々したオレはすぐに所持金がなくなった。

ホテルの従業員にそろそろ一度精算お願いできますか?終わった・・・

帰りの飛行機チケットも買えなくなっていた・・・

ホテルから荷物を取り出たオレは行くあてもなく公設市場のあたりをブラブラしていた。

腹が減った・・・何かお金を作らないと帰れないし食べてもいけない・・・ゴーヤのキャラクターのゴーヤマンを路上で売っているお兄さんに仕事が欲しいと声をかけた。すると簡単にゴーヤマンの販売をやらせてくれた。これが意外と観光客に売れる。

一位日中売ってお兄さんに給料の話をすると『そんな約束はしていない。』オレも稼げていないのに厚かましいと言われた・・・話にならない・・・タダ働きをしただけで余計に腹を空かせてしまった。

そうだ!公設市場なら試食がある!

荷物を持って公設市場に入った。すると豚の顔や海ぶどういろいろ沖縄食材の宝庫だった。

いざ目の前に試食が並んでいてお好きにどうぞってなっていてもお金がないと買ったあげられない前提だと手をつけられない。

どうしようか悩んでいるとトントンと肩をおじさんが叩いて『さぁミミガーだよ』試食を促してくれた。

『すみません・・・食べたいけど買えないので・・・』

『ちょっと待ってろ!』そお言い残しおじさんはその場を去った。

しばらくしておじさんが茶碗を持って戻ってきた。

『さぁ好きなモノ食え!』そう言って隣のおばさんの店のミミガーや唐揚げなどいろいろ茶碗のご飯の上に乗せてくれた。

涙が出そうになった。いや出ていたと思う。味をはっきり思い出せないが美味しく感じた。

腹を満たされお礼を言い公設市場を後にしたがこのままでは一生恩返しはできない。何か今すぐできる事・・・ポケットの中を探った。

全財産の110円・・・自販機の前に立っていた・・・

『おじさん!おばさん!ごめん・・・1本しか買えなかった・・・これ二人で分けて』

自販機でドクターペッパー1本を買い今出来る最大限のお礼をした。

『兄ちゃん!行くとこあるの?』おじさんが不憫そうに聞いてくれた。

『ちょっと来なさい!』オレは言われるがままに荷物を持っておじさんについて行った・・・

この後、運命の出会いそして闇の世界の話は『暗闇に見えた景色』へと続く

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