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潰瘍性大腸炎のこと。

安倍晋三の総理辞任の理由が、(あくまでも本人の弁だが)「持病である潰瘍性大腸炎の悪化」ということで、「潰瘍性大腸炎」がツイッターのトレンドにもあがるなどして注目を集めている。

潰瘍性大腸炎。実は自分も7年くらい前に発症した。

「発症年齢のピークは男性で20~24歳、女性では25~29歳」で、「若年層の発症が多くみられる」と言われているが、「高齢での発症も少ないわけではない」。因みに安倍首相は10代の頃からこの病気とつきあってきたという。

自分の場合は50歳での発症だった。

ストレスによる発症や悪化が多いとされるが、その頃、特に大きなストレスを抱えていた覚えはない。原因はわからなかった。

50になった頃から血便が続き、痔かなあ?  いや、痔にしてはなんだかおかしいと医者に相談。すると病気の疑いがあるとのことで紹介状を出してもらって大病院で内視鏡による大腸検査なども受け、潰瘍性大腸炎であることがわかった。

潰瘍性大腸炎がどのようなものか、貼った上の記事を読めばざっくりとはわかってもらえると思うが、「難病」というくらいだから、まあとにかく厄介な病気だ。

1日に何度も予期せぬタイミングで腹痛に襲われる。便意をもよおす。子供の頃からお腹は弱いほうだったが、それまでのそのレベルとはまったく違っていた。自分はライターという職業柄、外より家での仕事時間が圧倒的に多いため、何度もトイレに立つのが恥ずかしい…というようなことはなかったが、ライブなどで数時間外にいるときなどは常に不安がつきまとった。特に不安だったのがフェスで、おむつをしていこうかとも考えた。自分の場合、フェスとなると特殊なパワーとアドレナリンが出るためか?、結局それをすることなく無事に過ごせたのだが。

とにかくすぐトイレに行きたくなる。が、そこで便が出るわけではなく、血だけが出たりする。赤く染まった便器を目で見るというのは、なんとも不安で気持ちが沈むものだ。このままカラダ中の血が尻から出きって死んでしまうんじゃないか。そんな想像を何度もした。

重症になると発熱や貧血などの症状が出て、大腸がんを併発するリスクが高まるという話だった。そういう話を聞いたり読んだりするともう、微熱であっても不安に襲われるし、かと思えば「今日は明らかに貧血気味だ、ダイジョブか?」という気持ちにもなりやすくなる。実際酷かった頃は、貧血気味でどうも力が入らずフラっとするようなことも少なくなかった。憂鬱が体調に反映されるのだ。

自分の場合、入院するほど重度ではなく、通院して薬をもらっていた。アサコールというやつだ。が、実感としてそんなに効いてる気はしなかった(もちろん個人差はあるのだろう。あくまでも自分は、という話だ)。担当医に話すと増量をすすめられてそうしたが、なんとなくカラダが重くなって頭もぼんやりするような感じがしたので、合わないんじゃないかと思ってまた飲む量を減らした。新薬の治験もすすめられたが、副作用等の怖さがあったので断った。薬を飲まずによくなる方法があるなら、それを見つけたかった。

それから潰瘍性大腸炎について書かれた本やら腸に関する本やらを数冊買って読み、そのなかで自分は特に食事療法に注目した。何を食べるとよくて、何がよくないのか。どういう食べ方(食べる時間から噛み方まで)がいいのか。そういうことの書いてあるページを折って蛍光ペンで線を引き、それを実践した。

この病気に限ったことじゃないが、まず大前提としてカラダを冷やすのがいいはずはないので、呑みに行けば夏でも冷えたビールではなくヌルめのビールを出してもらったし、焼酎はお湯割りで、日本酒は熱燗で飲むようにしていた。牛乳やヨーグルトを一切やめ、少しでもミルクが入ったものは飲まなくなった。肉類の食を減らし、魚と野菜中心に切り替えた。抗酸化作用のある食品を意識的にとるようになった。海藻、キノコ類、緑野菜…。特にショウガは毎日何らかの形でとるようになった。

それから、ファスティング(≒断食)のできる宿泊施設に泊まったりもした。人生初のファスティングだったが、これがよかった。食べずに2泊3日したあと、久しぶりに血の混ざってない便が出たのだ。すごく嬉しかった。それでファスティングの効果を実感し、以来、家でも数ヵ月に一度は野菜ジュースだけという日を設けるようになった。

そんななかで、決定的に効果があったと思えたことがふたつある。まず、「毎朝、梅醤番茶を飲む」ことだ。

梅醤番茶には次の記事に書いてあるような効能がある。

とりわけ腸内環境を整えるのに、梅醤番茶は最適。「梅干しには腸内環境を整える効果があるので、便秘に悩んでいる方におすすめです。同じく、醤油に含まれている食物繊維のペクチンにも腸の調子を整える効果がありますし、生姜には消化を助けて胃腸の負担を軽減するジンジベインが含まれています。」とこの記事にも書いてあるが、前日に食べ過ぎたり飲みすぎたりしても、朝起きてまず梅醤番茶を飲むことで胃腸がすっきり整う感覚がある。自分はアイリスという会社の「梅醤番茶」を毎朝飲んでいるのだが、ときどきは梅干しにお湯を注いだだけのものを飲んでもいて、それもまたよき。梅干しは偉大だ。

それからもうひとつ、これによって変化が見られた。こっちは食事療法じゃなく、何かというと「プールで、潜水で泳ぐこと」だ。

これは肩腰背中が痛む際にときどき行っている整体の先生のアドバイスでやってみたことだった。有酸素運動が自律神経によい影響を与え、腸の活性化にもつながるというのはよく知られたことだが、特に潜水で泳ぐと数分間息をとめて潜っている分だけ腸にいい意味での圧迫があり、浮き上がったときには大きく息を吸うため、そこでまた腸が刺激される……というようなことだった(専門じゃないので正確には書けないし、そのときの言葉もハッキリとは思い出せないが、大方そのようなことだったと思う)。

こういう面もある。

炭酸ガスがなければ酸素は生かされないのです。 呼吸を一時的に止めて炭酸ガスを多く発生させて、酸素が独立して働いて初めて生命活動に結びつく、そのための呼吸、呼吸法であり潜水泳法と結びつくのです。

とにかく、完治の方法はいまのところなく、薬による内科的治療を行なう以外ない、重症の場合や薬物療法が効かない場合には手術が必要になる……という病気であるため、少しでも効果がありそうに思えるアドバイスはとりあえず聞いて、やれることはやってみた。そのなかで、カラダの冷える食べ物・飲み物を控える、抗酸化作用のある食品を多くとるといったことは大前提として、特に「毎朝、梅醤番茶を飲む」ことと「プールで、潜水で泳ぐこと」のふたつが自分には非常に効果があるように感じられた。そのふたつを習慣づけることで明らかに腸内環境が整っていくのを実感できたのだ。

そして……治った。

いや、完治はしないとも言われるし、症状が強く現れる「活動期」と症状が治まっている「寛解期」があるというのも定説なので、もしかするとまたいつか再発することも考えられるが、とりあえず自分の場合、50で発症して2~3年だったか続いたあとは、もうずっと寛解の状態が続いている。わからないけど、完治したつもりでいる。自分のなかで完治したことにしている。

「毎朝、梅醤番茶を飲む」ことと「プールで、潜水で泳ぐこと」。それはあくまでも自分にとって効果的だったことで、もちろんそれを続ければ必ず潰瘍性大腸炎はよくなる…というものではない。必ず治るというのなら、それは世紀の大発見ということになる。

が、それでよくなったという人間がここにこうしているというのは間違いのないことで、つまりひとつの実例だ。重度の場合はわからないが、軽度であるなら治らないまでも改善はするんじゃないか。そう自分は思っているので、現在この病気に苦しんでいるひとに「試してみる価値はあると思いますよ」とお伝えしたい。

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ところで。「8月上旬に潰瘍性大腸炎の再発が確認された」として辞意表明した安倍晋三の、その再発の度合はどの程度深刻で、どの程度逼迫したものだったのだろうか。「次の総理が任命されるまでの間、最後までしっかりとその責任を果たしてまいります」と言うが、「病気の治療を抱え、体力が万全でないなか、大切な政治判断を誤ること、結果を出せないことがあってはならない」のが辞任の理由なら、その間に“大切な政治判断“を誤られては困るのだから今すぐ退いたほうがよいのではないか。「幸い今、新しい薬が効いておりますので」と話していたが、そう言い切れるくらい効き目のある”新しい薬“があるのなら、国民にとって重要な今このタイミングでなきゃならない理由はなんなのか。また「病気の治療を抱え、体力が万全でない」ならば、一議員として職を務めるのも難しいのではないか。

この記事によれば、安倍首相は「体調に異変が生じ、体力をかなり消耗する状況になっていた」と説明した7月中旬以降も会食ざんまいを変えず、仏料理やステーキを食べ、ビール、ウイスキーの水割りを呑んでいたとのこと。

これがほんとうに「潰瘍性大腸炎の再発の兆候」があり、「体調が悪化」した人の食生活なのだろうか。潰瘍性大腸炎の活動期は、消化しやすく、高たんぱく・低脂肪の大豆製品や鶏肉、魚類などが推奨され、脂肪の多い食品や、油を使用している料理、アルコール類は控えめにするよう指導されるはずなのだが……。

そう、潰瘍性大腸炎の再発の兆候が出ていたのなら、これはありえないことなのだ。会食も職務のひとつだということは理解できても、そこでステーキを注文するなんて無謀もいいところ。自分がこの病気の活動期であったとき、ステーキなんて食べたら悪化するに決まっているからまず怖くて食べられなかった。ビールはどうだろう?   それが冷えたビールだったら、悪化するに決まっている。本当にこうならばそもそも自己管理がなってなさすぎだろう。

息を吸うように嘘をつき、詭弁を弄するひとだ。なので潰瘍性大腸炎の再発がズバリ辞任の理由だとそのままストレートに信じることはやはりできないし、その病にかかったことのあるひとりとして、それをこんなふうに一度じゃなく二度も利用される(というようにどうしても思ってしまう)のもいい気分がしない。

詳しい病状はこれからもちゃんと追求されなくてはならないし、総理はそれについて説明する責任がある。説明責任ほど嫌いなものはないというひとだが、これは本当にお願いしたい。

だって潰瘍性大腸炎という難病の存在を世に広く伝えてくださった方でもあるわけですからね(それについてだけはありがたいと思っておるのですよ)。

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