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『雪山の絆』(感想)

Netflixで4日から配信されている映画『雪山の絆』を観た。

知らずに観たのだが、始まって少しして『生きてこそ』のリメイク……というか同じ題材を元に作ったものだと気づく。『生きてこそ(原題:ALIVE)』はウルグアイ空軍機571便遭難事故を題材にしたドキュメンタリー小説『生存者ーアンデス山中の70日』を映画化して1993年に公開されたアメリカ映画(主演はイーサン・ホーク)。僕はそれを日本公開時に劇場で観たのだが、予告編で覚悟していたほどではなく、思いのほかあっさり結末を迎えたという印象を持った覚えがある。

対してスペイン・アメリカ・ウルグアイ・チリ合作による今回の『雪山の絆』(監督は『永遠のこどもたち』のJ・A・バヨナ)は非常に重厚。極限状態に置かれた者たちの恐怖と葛藤、生への渇望をドキュメンタリーのタッチで描いていて、没入せざるをえなくなるほどリアルだし、観ていて息苦しくもなる。ウルグアイ、アルゼンチンの俳優陣の真に迫る演技は凄まじいほどだし、衰弱の様が伝わるメイクも、寄りと引きのコントラストの効いた映像も、音響も見事だ。

飛行機事故に凍死と、時期が時期だけにアレだし、直視できない描写もあるので無邪気に「みんな観て!」とは言いづらいのだけど、間違いなくこれは傑作……いや大傑作。テレビ画面で見ててもこれほど引き込まれたのだから、劇場で観たらどれほどだっただろうか。死と、とりわけ信仰心の重みについて、考えさせられもした(30年ちょっと前なのでうる覚えだが『生きてこそ』のほうは登場人物たちの信仰心についてそれほど描かれていなかったと思う)。すごいよ、これは。覚悟して見てくださいね。


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