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グラストンベリー有料配信ライブ「Live at Worthy Farm」を見た。

2021年5月23日(日)

グラストンベリーの有料配信ライブ「Live at Worthy Farm」を18時から約6時間半ぶっ通しで見た。

自分は前もってイープラスで視聴チケット(=3000円)を買ってあったのだが、なんと主催者側で配信トラブルがあり、(日本での配信は18時からなのに)朝から無料で見ることができたらしい。昼間は片付けをしてたので、そのことをツイッターで知ったのは17時頃だったのだが、まあ文句を言ったところでしょうがない。見ながらゆっくり飲もうと昼間買いにいったワイン2本とおかずをテーブルに並べ、「いま見てるのが初配信」のつもりで集中して見た。

内容は素晴らしいもので、無観客ライブであることの物足りなさを感じる瞬間がこれっぽっちもなかった。生配信ではない故、質の高い編集とミックスがなされ、音質も非常によかった。ステージ演出や全体の構成も優れていて、ライブとライブの合間にはPJハーヴェイらの詩の朗読があったりも。無駄なくテンポよく進み、映像の美しさも際立っていた。あとで知ったのだが、監督がコールドプレイ、アデル、ストーンズなんかのライブ作品を手掛けたりしているマルチ・グラミー保有者のPaul Dugdaleであり、氏の力も大きかったのだろう。

このバンドの今を見たかったからチケットを買ったと言ってもいいくらい大大大好きなウルフ・アリスが一番手。ストーンヘンジみたいに環状に並んだ石に囲まれて演奏する彼らは、休養と新作制作を経て明らかに進化していることがわかる演奏っぷりで、しかも思いがこもっていて、最高にかっこよかった。もちろんハードめの曲もよかったが、ストリングスを加えて演奏された新曲「The Lart Man On Earth」がとりわけ感動的で。最後は倒れ込んだエリーに男子メンバーが覆いかぶさり、充実演奏の手応えの強さからか、メンバー同士手を繫いで帰っていったりも。仲良しだなー。そんなところもいいんだよなー。早くまたナマで観たいなー。という気持ちが高まった。

続くマイケル・キワヌーカは、3rd『キワヌーカ』収録の大名曲「You Ain’t The Problem」をオープナーとして、そのアルバム曲を中心に。数年前にビルボードライブで観たときよりもバンドがよくなり(女性コーラスの存在が特に大きかったと思う)、極上のサイケデリックソウルと言えるものに。歌もまた深みを増した印象で、これまた素晴らしかった。彼は日本でもっと注目&評価されなきゃいけないヴォーカリストだよなぁ。

大きな焚き火の前で弾き語ったジョージ・エズラ(彼の低い声、いいよねー)、ゴリゴリハードなポストパンクでライブ力を見せつけたIDLESと続き、ウルフ・アリスと同じ場所で演奏したHAIMもよかった。サックスのサポートが効いていて、いつもの弾けっぷりよりもアダルト味を前に出した感じ。

続くコールドプレイはこの日一番の映像演出のお金のかけ方。正直なところ僕はこのバンドがどうしても好きになれないでいたのだが、見ていてグッと引き込まれた曲が1曲あって、それは「Human Heart」という新曲。なんとKING(ミネアポリスの双子R&B姉妹)が参加し、ほぼア・カペラで歌われたのだった。この曲はいい!

続いては、出たばかりの新作EPもめちゃめちゃ素晴らしかったジョルジャ・スミス。ライブとなるとまだ多少若さ故の粗削りさが歌唱にあるものの、醸し出すムードとしてはシャーデーにまた一歩近づいたというような印象。で、次の「スペシャル・ゲスト」はというと、これがレディオヘッドのトム・ヨークとジョニー・グリーンウッドがサンズ・オブ・ケメットのドラマーのトム・スキナーと組んだThe Smileという新バンド。これがデビュー・ライブというかお披露目ライブだったわけだが、音はというと電子系とかじゃなくわりとシンプルめのロックで、以前のレディヘにも繋がっているようなところもあり。もうそういうロックにトム・ヨークは興味を失っているものだと思っていたので、ちょっと意外だったし、でもなんか嬉しい気もした。同じように思ったファンの人は多かったんじゃないだろうか。とにかくこのバンドのお披露目ライブをここで見れたのはラッキーだった。

ライブのトリは、グライム・ラップのKANO。普段ラップのシーンをあまり追っていない僕なので彼のライブ場面もこれまで見たことなかったし、そんなによく知らなかったのだけど、彼のまくしたてるようなグライム・ラップは凄まじく、そしてブラスバンド隊を迎えたり、ゴスペル的なコーラス隊を迎えたりと、見せ場の作り方も非常にうまくてひきつけられまくった。これ、もしかしたら歴史に残るパフォーマンスなんじゃないかと思えたほど。完全に圧倒された。この日のベストアクトと言いたくなるぐらいだ。と、自分の目当てでもないのに、こういうパフォーマンスに偶然出会えるのがフェスのよさだよな、とも思ったり。

そうしてライブは終わり、最後はDJのハニー・ディジョンが、改造したバスでDJ。それはフジに例えるならグリーンやホワイトでのライブが全て終了したあとの深夜のクリスタルパレステントみたいなありようで、僕は2本目のワインもほぼあいていい感じにできあがっていたのもあって、最後までヘッドホンで大音量で聴きながらゴキゲンに楽しんだのだった。

ステージから別のステージへと歩いて動くことはないし、知り合いにバッタリ会うこともないし、そばで盛り上がってる誰かとイエ〜なんつってハイタッチとかできるわけでもないし、寒くなったり雨に濡れたりすることもなくただ家で画面を見てるだけなわけだけど、それでも実際にフェスにいるあの気分の何分の1かは確かに味わうことができた。つまりは最高レベルの至福の配信ライブ。「グラストンベリー、ありがとう!」と、そうも言いたくなった。

僕たちにはフェスが必要だし重要だ。フェスのない世界で生きてくなんて絶対に嫌だ。と、改めて実感した日曜の夜でした。


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