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GOOD BYE APRIL、キンモクセイ@SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

2023年11月18日(土)

SHIBUYA PLEASURE PLEASUREで「GOOD BYE APRIL 2MAN TOUR  WHAT A HARMONY」。出演はGOOD BYE APRIL、キンモクセイ。

GOOD BYE APRILの2マンツアー、その第3弾。お相手は彼らの大先輩にあたるキンモクセイ。

先攻、キンモクセイ。バンドは長い活動休止後、2018年から活動再開。しかし今年5月にベースの白井さんが脱退し、現在は4人の新体制で活動中。この夜はサポートふたりを加えた6名でのライブとなった。自分は、音源は聴いていたが、ライブを観るのはこれが初めてだ。

以前のライブを観ていないので比較はできないが、思っていた以上にバンド感、しかも(誤解を招きかねない言い方になるかもしれないが)ロックバンド的なアンサンブルに感じられた。もちろん彼らの音楽はロックではなくニューミュージックやシティポップの影響下にあるものだが、ギターやドラムの鳴りがときにロック的で、強度をもって響いてくるサウンドだったということだ。しかもそこに4人とサポートふたりの隔たりがなく、6人でひとつのバンドだというような繋がり感があり、それがアンサンブルの強度に結びついているのだと思えた。

代表曲「二人のアカボシ」も聴けてよかったが、自分的にとりわけ響いたのが終盤で演奏された先月リリースの最新曲「Smile」。新しい体制で活動するにあたって4人で話し合い、そしてこれからのキンモクセイの音楽性をひとつ示すことができた曲だというようなことをヴォーカルの伊藤さんが話していたが、この曲がそういうものならば、これから長く彼らの音楽を聴いていきたい。そう思える、すごくいい曲だった。

この曲の前の前には、エイプリルの倉品くんを呼び込み、ダブル・ヴォーカルでの「冬の磁石」もあったが、倉品くんが歌えばその歌はエイプリルの曲のようにも聴こえ、伊藤さんが歌えばやっぱりキンモクセイの曲に聴こえ、つまり声質は違えども両者の方向性に非常に通じるものがあるのだなと感じられた。

また来年2月にリリースするという新アルバムの曲をメドレーで演奏するという場面もあり。まだ世に出ていない新曲たちをそうしてメドレーで初披露する、そんなバンドがかつてあっただろうか?!   ずいぶん思い切ったことをするなぁとも思ったが、それだけみんなに早く届けたい、自信のある曲たちなのだろう。

続いてはGOOD BYE APRILのステージ……と思いきや、その前にこの夜のために結成されたという両バンドのメンバー混成ユニット「こんなもんで終わりだと思ったら、大まちGuys」のコーナーがあった。エイプリルの吉田くんがギターを弾き、あとの7人はアカペラ的に声を重ねていくもので、選ばれた曲は伊藤さんを筆頭に両バンドのメンバーみんなが好きだという山下達郎の「LAST STEP」。楽しさもありつつ(曲後半のリレー式の長い「お~~~」など)、なかなかに深い味わいもあって、これは単なる余興以上のコラボじゃないかと感じ入った。「こんなもんで終わりだと思ったら、大まちGuys」と名乗るくらいだから、この混成ユニットはこんなもので終わりじゃないのだろう。と、思いたいし、なんならEPとか作ってほしい。

セットチェンジを挿んで、このあとはGOOD BYE APRILのオンステージ。総体的な感想から書くと、まず持ち時間全体の構成力に唸らされた。「恋がはじまる」「BRAND NEW MEMORY」「君は僕のマゼンタ」と出し惜しみなく代表的な曲をのっけから次々に。そしてカヴァーがあり、季節に相応しいクリスマス曲があり、数年振りに演奏する曲があり、新曲があって、キンモクセイ・伊藤さんとのコラボもあり。ワンマンのような長尺ではない持ち時間のなかにどれだけ現在のバンドの旨味をギュッと詰め込むか、なおかつスムーズな流れにして聴かせるか。見事と言いたいくらいにそれがしっかり考えられた、最高の構成のライブだった。

曲順のよさに加えて、「楽しむ」&「楽しませる」ことを軸としたセトリであったことが実によかった。バラードにもいい曲の多いエイプリルだが、この日演奏されたのはアップテンポの曲が大半で、あとはミッドテンポがいくつか。スローは1曲も演奏せず、聴いていて楽しくなる気持ちをどんどん増幅させていくというあり方だった。エイプリルのライブを10数年観てきて、(喋りをのぞき、純粋に音楽だけで)こんなにも楽しい気持ちになったのは初めてだ。

改めてこう書くのもアレだが、メンバーみんな、演奏力が本当に素晴らしくアップした。それぞれが日々持ち楽器に触れてスキルを上げる努力を惜しんでないことが伝わる演奏で、なんか改めて感心してしまった。「サイレンスで踊りたい」のディスコ的なビートから「リップのせいにして」のロック的なビートへと鮮やかに移行する際のつのけんのドラムに興奮させられた。「サイレンス~」のえんちゃんの滑らかな運指とスラップにも、おおっ!となった。基本的には出すぎないスタンスで弾きながら、しかし「missing summer」のソロなどここぞというところでグッと前に出て一瞬で温度をあげる吉田くんのギターもかっこよかった。倉品くんのヴォーカル(及びMC)は非情に安定していながら、ときどき自身も楽しさに引っ張られてそのときだけの声を出すというあたりに彼なりのエモが宿っていた。サポートの清野くんは「Bittersweet Christmas」でのクリスマスらしいグロッケン演奏もよかったが、「サイレンス~」から「リップのせいにして」あたりで彼の本領発揮とも言える鍵盤プレイを聴かせていたのがよかったし、この感じはやっぱり清野くんじゃなきゃなぁと思わされた。

杉山清貴&オメガトライブの「SUMMER SUSPICION」カヴァーは、ナマで聴くと音源を遥かに上回るかっこよさがあり、しかもカヴァーカヴァーしてないというか、エイプリルのオリジナルの曲群と少しも違和感なく混ざっていた。数年前のSHIBUYA PLEASURE PLEASUREワンマンのときのライブタイトルでもあった「夜明けの列車に飛び乗って」は、シングルにして出してほしいし何度もラジオから流れてほしいと思えるクオリティ及びポテンシャルの高さを強く感じた。メジャー2ndシングル曲「サイレンスで踊りたい」は、エイプリルのライブを大きく盛り上げるのに欠かせない曲になるな(というか、もうなっているな)と思った。よかったらみなさん立ちませんか、と倉品くんが曲前に言ったが、そう促されずとも立ってカラダを揺らしながら聴きたくなるグルーブがあり、だから多くの人がそうしていた。この1曲はライブにおいて本当に強力な武器になる。

それからキンモクセイ・伊藤さんを呼び込んでの「リップのせいにして」。もともとファンに人気の高い曲だが、自分的には今まで彼らのライブで聴いてきた「リップのせいにして」のなかでこの夜が一番素直に「いい!」と思えた。アレンジがそうさせてるのか、もともとの昭和歌謡的な感触から変わって、50sロックンロール的な成分をそこに感じたのだ。それ、恐らく伊藤さんが曲の途中でモンキーダンスをしていたからというのもあるのだが、例えばサザンオールスターズが「いなせなロコモーション」をやるときのあの楽しさにも似たものだった(これ、わかってもらえるかな?)。そして「missig summer」のあの爆発力!(とりわけ吉田&倉品のギターのかけあい)。これもすっかり代表曲のひとつになったよなぁ、といった感慨もあり。

アンコールでは、またも伊藤さん、そしてキンモクセイのほかのメンバーも加わって、シュガー・ベイブの「DOWN TOWN」を。伊藤さんは達郎さんのライブ時の曲間のMCまでも完コピ。エイプリルは先頃EPOとの共演ライブもやったばかりだし、この曲のEPOヴァージョンを「おれたちひょうきん族」のエンディングでさんざん聴いてきた昭和世代の自分からしたら、土曜の夜の締めくくりに最高に相応しいじゃないかと、そうも思えた。

いや、ほんとに「楽しい」ライブだった。ギターロックが全盛だったその時代に、そこにハマらず浮きまくっていた…という共通項を持った両バンドの相性の良さはマジで想像以上。それがロックじゃなくとも、懐かしさありだったりシティ感ありだったりのポップスであっても、こんなに楽しく&熱く盛り上がれるんだ。そんな両バンドのステキな主張にも感じられた。なので、この夜だけの共演で終わらせるのはもったいない。少なくとも年に1回はやってほしい。これで終わりだと思ったら「大まちGuy」であること、願っとります。




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