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リクオ with HOBO HOUSE BAND@荻窪The Top Beat Club

2024年6月30日(日)

荻窪・The Top Beat Clubで、リクオ with HOBO HOUSE BAND。

開演直前にはチャボの「プリテンダー」がかかっていた。終演後すぐにながれたのはチャボの「魔法を信じるかい?」だった。「オマージュ - ブルーハーツが聴こえる」ではチャボの「ティーンエイジャー」の一節を歌い込んでその名を呼んだ。「何かを動かせそうな不思議な力」「思わぬ一日にめぐり逢える」「何かをあきらめないでいる そんな想いの中にある」…チャボが「魔法を信じるかい?」で歌ったそういう音楽の魔法をリクオさんはティーンエイジャーだった頃から信じて生きてきて、そして今まさに実感しているところなんじゃないか、とか思ったりしながらこのライブを観た。

『リアル』発売記念スペシャル・ツアーの東京編。ということで、新作『リアル』の曲は全て演奏された。表題曲「リアル」は、アルバムでは1曲目だが、このライブでは終盤に「こぼれ落ちてゆくもの」に続けて演奏された。「こぼれ落ちてゆくもの」はアルバムの最後の曲なので、その並びには物語の循環と「続いていくこと(いること)」を思わされもした。

「こぼれ落ちてゆくもの」はアルバム中、唯一バンド録音ではない曲だ。よってライブでは弾き語りでやるのかなと想像していたら、これもHOBO HOUSE BANDと演奏した。音源では橋本歩さんの弾いていたチェロの旋律を宮下広輔さんがペダルスティールで表現し、ほかのメンバーはミュートで控えめに音を加える。ほとんど鳴らさない。余白を聴かせる。それもまたこのバンドだからこそ叶うアンサンブルだ。

「余白を活かす」。『リアル』はそのようなバンド演奏が歌詞の意味と結びつくことでより説得力を増して伝わってくるアルバムだったが、そうした「余白の強度」というようなものを何度も実感したライブだった。その骨頂はやはり「Wadachi」であったか。

「HOBO HOUSE BAND。いいバンド」と、その理想的なアンサンブルの中心にいるリクオさんは嬉しそうに言っていたが、そのことは誰もが感じていたはずだ。リクオさんの、メンバーたちへの絶大な信頼、それにスタッフや観客たちに対する信頼。それがそのまま音になっているかのようにも感じられた。自分の身の回りにいる人たちへの信頼と、場所への信頼。音楽に対する信頼。それが歌になり演奏になりグルーブになっている。そう感じた。

また、「オマージュ-ブルーハーツが聴こえる」で「あれからもう30年!」とシンガロングする50代60代の客たちの声を聴きながら、これは数十年前から音楽に鼓舞されたり救われたり勇気をもとうとしたりしてきた僕たち私たちにとってのリアルな歌なんだと改めて実感し、「まだ何も終わっちゃいない」との思いを強くした。

音楽の魔法。ティーンネイジャーの頃からそれにかかりっぱなしの人たち、それがまだ解けてない状態にあることを幸福に思っている人たちばっかがステージの上にも下にもいた。「何かを動かせそうな」思いを抱えて歩いて帰れたことがなんか嬉しかった。


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