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Local Green Festival'22

2022年9月4日(日)

グリーンルームフェスには昔から頻繁に足を運んでいたので、横浜赤レンガ地区の特設会場とその周辺はそれなりに馴染みがある。コロナ禍以降行ってなかったけど、久しぶりに行くと「戻ってきた」感がやっぱりあった。馬車道駅から歩き、信号を渡ってその地区に入るといくつもの出店があって人が溢れている。そこでもう軽く楽しい気分になってくる。

グリーンルームフェスの秋版、ローカルグリーンフェス。2日目に!!!(Chk Chk Chk)の出演が発表されたときから、久々に彼らを観たいな、観るなら単独よりフェスで観たいな、ほかのアクトはどないなもんかなと、行くか行くまいか迷っていたのだが、先週だったかに七尾旅人がソロではなく20代のミュージシャンたちと組んだバンドでやることを彼のツイートで知り、それで行くことを決め、チケットを獲って妻とふたりで観に行ったのだった。

昼間は真夏のように暑く、秋フェスというよりはまだ夏フェス。

しっかり前のほうで観たアクトは、七尾旅人、Awich、iri、!!!(Chk Chk Chk)の4組。ほかにマハラージャン、Chilli Beans、YONA YONA WEEKENDERS、大橋トリオの演奏を後ろのほうで座ったり寝転んだりしながら観たり聴いたりした。

まず、GARDEN STAGEで観た七尾旅人がとてもよかった。自分は彼のライブをこれまで何度も観てきて、今年は反戦集会「NO WAR 0305」やフジロックで観ていたが、今回はバンド編成であり、しかもフジロックのときの(Kan Sanoらがいる)ストレイバンドとは別のバンド……先述したようにほぼ20代のミュージシャンからなるバンドということで、それを観れること自体がレア。メンバーは細井徳太郎(ギター)、高橋佑成(鍵盤)、宮坂遼太郎(パーカッション)、千葉広樹(コントラバス)。SMKTのメンバーである細井はジャズ的なところとロックのノイジーなところが混ざったエレクトリックギターのプレイで、ほどよくフリーキーに行きながらもしっかり旅人のアコギと歌に呼吸を合わせ、しかも可愛らしい笑顔で旅人のMCに応えたりもしていて、ノイジーな音を出しているにも関わらずあたたかな雰囲気をそこにもたらしていた。いいムードメーカー的なところもあるんだなと。また折坂悠太や蓮沼執太フルフィルなどで演奏する宮坂遼太郎のカホンは曲に原始的なニュアンスを与えつつも歌とバンド音全体を包むような感覚があった。総じてこのバンドは、ヒリヒリするようなスリリングな感覚と優しさあたたかさの両方を表現できる、ちょっと稀有なバンドであるように感じられた。ジャズ的な即興がやれて、歌にも寄り添える、そういう幅が予めあるということだ。

なので旅人の、この日歌われた「入管の歌」や「エアプレーン」のように重みのある曲と、「Dogs&Bread」のような可愛さのある曲と、続けて聴いてもどっちの演奏もすごくいいなと感じられる。ビリビリくる緊張感を孕んだ「エアプレーン」のあとにトーンも温度感も真反対の「Dogs&Bread」を歌って、それはそれでしっくりくるのが七尾旅人という稀有な歌手だが、そのどっちにも寄り添うように対応できるこのバンド(旅人はジェネレーションギャップバンドなどと呼んでいた)は相当いい、なんならこのバンドでツアーとかやってほしい、もっとこのバンドでいろんな曲を聴いてみたいと、そう思わせた。

終盤はアレンジが激変してまるでカリビアンみたいに明るくなった「Rollin' Rollin'」、そして「サーカスナイト」。最後は「2分時間があまったから即興をやろう」と旅人が言って即興を。そこでもこのバンドのポテンシャルが大いに感じられたのだった。いやぁ、よかった!

CACTUS STAGEでは、まずAwichを観た。彼女のライブを観るのは幕張メッセのPOP YOURS、フジロックのレッドマーキーときて、今年3回目。フェス用の構成とMCがそれほど大きくは変わらないこともあってさすがに見慣れてしまった感は少しあったが、それはこっちの受け方の問題であって、パフォーマンス力はやはり強くて大したもの。ラッパーで当たり前のようにあれだけの人数を集めることができてそれに相応しいパフォーマンスができる女性が(日本に)ほかにいるだろうか。

同じくCACTUS STAGEで、iri。Yaffleの手掛けるハウス調の曲が特に好きで音源はよく聴いていたのだが、ライブを観るのはこれが初めて。アップめの弾みある曲であっても、彼女自身の声質と態度に落ち着きがあって、必要以上にはしゃいだ感じにならないのがいいなと思った。それでいて、喋るとその年齢にあった可愛らしさもあり。始まる前からかなりの人数がステージ前に集まっていてその人気のほどに少し驚いたのだが、パフォーマンスを観て、なるほどと。そばにいた男の子が「かっこよ。かっこよ」と何度も口にしていて、確かに同年代くらいの子たちからしたら彼女はかっこいい存在なんだな、それもわかるなと思った。

そしてこの日のCACTUS STAGEのトリは、唯一の海外アーティスト、!!!(Chk Chk Chk)。もうあまりにも最高だった。バンドメンバーが少しずつステージに現れ、3人目くらいにヴォーカルのニックが弾かれるように出てきたかと思えばそのまますぐに客を煽り出し、そしてメンバーがまだ揃わないうちから歌い始めると、残りのメンバーも出てきて演奏に加わっていく。この始まりからもってかれた。ニックは終始いつものあの感じでダンスしながら歌い、ステージの端から端までを行ったりきたり。そして銀のピカピカの衣装を着たサイドヴォーカルの黒人女性がまたいきなりといった感じでステージに登場して混ざると、ニックは彼女とかけあうように歌う。そしてニックは前半で早くもステージを降りて大勢の客のなかに歌いながら分け入っていき、そのままズンズカ前進。で、僕のすぐ目の前にも歌いながら来た。やばいやばい、そりゃもう大興奮よ。それでようやくステージに戻ったかと思えば、また数曲後にはステージ降りて客のなかに入っていき、今度は目で追い切れないくらい遠くのほうまで行って、また戻って。で、また数曲後には反対側のほうに降りて、また客のなかに……。もうエネルギーがありあまってしょうがない、みんなと触れあいたくてしょうがないといった感じ。とにかくなにがなんでもそこにいる全員を楽しませるのだという意識がとてつもなく高いのだ。

演奏陣も含めてバンド全員、破格の熱量。こう言っちゃなんだが、日本のバンド10コ合わせても叶わないくらいの熱量であり、盛り上げ方であり、あらゆる意味でぶっちぎりだった。やっぱ、好きだぁ、このバンド。という気持ちがまたしても膨らみまくり。まったくもってトリに相応しかった。最高のバンドを最後に観ると、そのフェス自体が最高だったという印象になる。

!!!の破格のパフォーマンスに興奮したまま、会場をあとに。そのまま中華街に動いて餃子とビールでしばらく気持ちいい時間を過ごした。

真夏のような天気で、秋フェスの始まりというよりはまだ夏フェスそのものといった感じだったローカルグリーンフェス2日目。首回りはすっかり日焼け。今年の夏はフジにソニマニ/サマソニにローカルグリーンにとよく遊んだが、さすがに夏遊びはこれにて終了。いろいろあれども、ライブを観ているその瞬間は楽しくて生きてる実感も得られた、そんな夏でありました。



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