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七尾旅人@梅田クラブクアトロ

2023年3月17日(金)

梅田クラブクアトロで、七尾旅人。

バンドセットによる『Long Voyage』リリースツアー。東京公演はアークティック・モンキーズのライブと重なって観ことができなかったので、梅田のクラブクアトロに観に行った。

腕あるミュージシャンたち(シンゴスズキ、小川翔、山本達久、TAIHEI、瀬尾高志)との呼吸の合った素晴らしいアンサンブルで、長い航海の厳しさも哀しさも楽しさも、時に激しく時に繊細に表現。アルバムの曲順通りに全曲演奏するというものだが、再現ではなく「もうひとつのLong Voyage」と旅人は言っており、まさにそれだった。⁡⁡⁡⁡

⁡新作全曲を順にやるので「初めに喋って、あとは喋りなしで続けて演奏する」と言い、まず免許合宿の辛かったエピソードやバンドメンバーのことなどを10分程度話して、いつもの通りリラックスした感じでスタート。で、いざ始まれば演奏力・歌力・楽曲力で観る者をグイと引き込む。

ある曲ではドラムが、ある曲ではギターが、ある曲ではベースが、ある曲では鍵盤が、録音曲のある部分に変化を加えたり膨らませたり拡張したりして、元のそれとはまた異なる感触を聴き手に与えてくる。旅人の歌い回しも当然、元曲とは違うものにもなる。ツアーはこのバンドで3公演あるが、即興も多いので、それはこの日だけの演奏となる。

「入管の歌」の緊迫感たるや。しかし一転して「ソウルフードを君と」では曲の途中で「大阪のソウルフードってなに?」と旅人が観客に訊き、「たこ焼き!」「お好み焼き!」「串揚げ!」などとみんなが答えると、それを歌に入れ込んで歌ったりも。

ヴォーカルの威力という意味では、とりわけ「荒れ地」が凄かった(小川翔のスライドギターにも引き込まれた)。個人的にはあのアルバムのなかで最も好きな曲。旅人は荒々しくシャウトするように歌い、そこで相当力を使ったようで、⁡⁡⁡⁡大比良瑞希を呼び込んでの次の「ドンセイグッバイ」では歌詞が飛んでやり直したりも。「いいよね、大阪っぽくて。人間っぽくて」との言葉通り、それでむしろリラックスし、そのあとはより伸び伸びと歌えていた感があった。

喋りはなしと初めに言っておきながらも「Dogs&Bread」の前には亡き兄犬の思い出話などをたっぷりと。東京公演は緊迫感が最後まで続き、結果として本人的にはいまひとつのできたったらしいが、この夜は大阪故の開放感がいい感じで作用していたようだ。

⁡⁡⁡全曲演奏後、⁡「このツアーではアンコールはやらないことになってる」と言いながらも、観客の熱い拍手&声援に応えて鍵盤のTAIHEI氏と即興演奏し、上田正樹「悲しい色やね」の1フレーズを歌に入れ込んだりも。このアンコールもあって、厳しく長い航海が一気に軽やかで楽しい印象に。ここからの航海はきっと晴れ間が多くなることを想像させたし、亡き兄犬もきっと嬉しかったに違いない。⁡

大阪まで観に来た甲斐大ありの濃密な約2時間40分だった。


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