頭脳警察@花園神社水族館劇場特設天幕

2019年4月7日(日)

新宿花園神社水族館劇場特設天幕(テント)で頭脳警察の50周年公演1st「頭脳警察 揺れる大地に」。

色鮮やかな夜の桜がそうさせたのか、花園神社の特設テント前には開場前の段階から既に酔っ払ってるオヤジもいて、何やらスタッフに絡んでいたり。別の場所でも並ばせ方が悪いと中年客がスタッフに詰め寄って、オマエの態度が気に食わん、ふざけんなと声を荒げるなど、テントに入る前から既に不穏なムード。久しく味わってなかったが、自分が学生だった頃のロックコンサートにはこういう“やばさ”がまだあって、ちょっと怖かったりもしたものだ。久々のその感じにワクワクしている自分がいた。

靴を脱いで特設テントに入ると、“いまではないいつか”“ここではないどこか”を感じさせる芝居小屋ならではの妖しい舞台セット。ステージ前には池があり、前で暴れでもしようものならそこに落ちそう。バンドが激しい音を出すと桟敷が揺れて4D映画のようだった。

天井桟敷の代表作のひとつ『時代はサーカスの象にのって』のなかで皮ジャンパーの男に語らせる「詩・アメリカ」(「コカコーラの瓶の中のトカゲ。おまえにゃ瓶を割って出てくる力なんてあるまい、そうだろう、日本」というアレだ)をまずパンタが朗読し、ヒリヒリした感覚が広がったなか、曲は「時代はサーカスの象にのって」からスタート。亡くなった月蝕歌劇団の高取英氏に捧げる意味あっての開幕曲だ。前半~中盤はアルバム未収録の曲も含めつつ、比較的バラードが多め。「万物流転」に感動。「落ち葉のささやき」「光輝く少女よ」「さようなら世界夫人よ」(この曲は終盤だったが)はこの野外天幕だったからこその説得力を持って響いた。

後半、「スホーイの後に」からロックの色合いが濃くなり、「揺れる大地 テーマ2」では水族館劇場の劇団員たちが散らばって登場。共に歌も。そこがひとつのハイライトと言えたか。本編ラストは「レスト・イン・ピース、ユーヤ・ウチダ」とパンタが言って、今じゃ内田裕也のオリジナルソングであるかのように広まっている「コミック雑誌なんかいらない」を。途中でパンタは裕也さんの愛ある真似も。アンコールは「銃をとれ」と「ふざけるんじゃねえよ」。終わっても客は拍手をやめずに再アンコールを求めたが、それはなかった。

全編通してパンタの歌声は実に力強く、トシはしなやかにカラダまるごとリズムになる感じで叩いていた。そのふたりの色気たるや。また、頭脳警察の最初の再結成年あたりに生まれたという若きミュージシャンたち……黒猫チェルシーのギター.澤竜次とベース. 宮田岳、それからドラムス.樋口素之助、加えてゲストとしてアーバンギャルドのキーボード.おおくぼけいがサポートを務めたのだが、彼らの演奏も上手い上に気持ちがこもっていてめちゃめちゃよかった。初めはおとなしかった4人が終盤で狂暴になっていったのが印象的だ(ベースの宮田岳は先頃の東京ソイソースのJAGATARA2020でも弾いていたけど、ほんと、いいミュージシャン。ベテランに好かれるのもわかる気がする)。あの4人がいたからこそのあの濃度。

自分はパンタ&ハルからパンタを聴きだした世代であり、70年代の頭脳警察は後追いだ。が、1990~91年の再結成ライブは観て衝撃を受け(「最終指令 自爆せよ」)、2012年にはようやくおふたりにインタビューすることもできた。で、90年の初めの再結成時のメンバーがバンド形態としては最強だったんじゃないかと思ってもいるのだが、昨夜の編成も相当よかった。わけても「スホーイの後に」のインプロっぽい演奏が凄かった。ライブを重ねれば90年のあの形態に匹敵するグルーヴが出るバンドになりうる可能性があるなと感じた。2019年の頭脳警察はかなりやばい。

70年代初頭の楽曲が2019年にこんなにも鮮烈に響くんだから、演奏とヴォーカルと歌詞表現に強度があれば古いとか新しいとかまったく関係ないのだな。そう実感したし、歴史の目撃者になれた気もした素晴らしいライブだった。



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