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谷村新司さんのこと。

僕が音楽を、というかライブというものをこんなに好きになったのは、アリスと出会ったからだ。「今はもうだれも」がヒットしだした頃(75~76年)にシングルを買い、母にコンサートに連れて行ってもらった。アリスとバンバンのジョイントで、場所は神田共立講堂。自分が初めてコンサートというものを観たのがそれで(確か中1のときだ)、こんなに素晴らしいものが世の中にあったのかと驚いた。アリスは3人3様、キャラが立ってて、とりわけチンペイさん(=谷村さん)は喋りが面白く、それであんなにロマンチックな曲を書いてあんなにいい声で歌えるなんて!と、すぐに大ファンになった。セイ!ヤングは毎週始まりから終わりまで必ず聴いてテープにも録っていた。「冬の稲妻」でブレイクするまでにけっこう時間がかかったけど、そのブレイクするまでが特に僕が夢中だった時期だ。

ブレイク後もしばらく追いかけたけど、やがて曲のクオリティが少しずつ落ちだし、僕の心は離れてニューミュージックよりもロックに夢中になっていった。79~80年くらいのことだ。が、大人になってまたニュートラルな気持ちでアリスを聴くと、よかった時期のアリスはやっぱりよかった。再結成後のライブも何度か観に行った。

そして一昨年初めて「昭和40年男」のニューミュージック特集号でアリスの3人にインタビューすることができた。初めてお会いすることができ、いまの(音楽ライターの)自分があるのはアリスによってコンサートの素晴らしさを知ったからだと伝えることができた。僕は『アリスⅤ』がアリスの最高傑作だと思っているのだが、3人もそう思っていたのがなんか嬉しかったし、ほかにもいろいろ確認できた。ベーヤンには「僕らが忘れてたこともよく知っていてくれて…。いままでの取材でナンバー1」と言ってもらえて感激した。

一昨年の11月の50周年記念ライブで、ベーヤンはずっと立って歌っていたが、チンペイさんは座って歌っていた。相変わらず声が強くて伸びやかなベーヤンに対し、チンペイさんの声の出力は全盛期に比べてだいぶ弱まったなと感じた。それでもライブは非常に素晴らしかった。それから体調を崩され、今年予定されていたツアー(もちろん行こうと思っていた)も延期となった。が、そこまで重い病状だとは知らなかった。

谷村さんが亡くなられた。さっき母から電話がかかってきて知り、言葉を失った。

今年予定されていたツアーが延期になったが、きっと谷村さんは復調して戻ってくるだろう、待っていればツアーが始まるだろうと信じていた。が、戻ってはこなかった。

夢中でアリスを聴いていた中学の頃のことと、初めてお会いできた一昨年のこと。そのふたつがいま、混ざり合って思い出される。とても悲しいし、受け入れがたい。さようなら。安らかに。

↑僕の好きだったアリスの曲は、例えばこんな曲たちです。

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