私の中銀カプセルタワー滞在記〜NAKAGIN BUSINESS CAPSULE(80)

【入居24日目④】
台風由来の強めの風が残っているものの、雨はすっかりやんだ。しょんぼりと今回も使い道のなかった雨漏り用バスタオルをしまう。あまりにも早くいろいろなことを済ませてしまってやることがなく、何冊か持ち込んでいた本を読もうとページを開いたものの、台風のソワソワした空気が残っていて全然文字に集中できない。もっとも私の場合、カプセルの中だと意外に本を読む気にならなかったというのもあるんだが。何かをやろうとする意識が強すぎて、ある意味受け身の作業である読書には向かない空間なのかもしれない。

もう雨は降らなさそうな天気予報だし風が気持ちよさそうだし、夜の銀座の街をブラブラしてこようかな。夏真っ盛りのこの頃、いつもは夜に外に出ても暑すぎて用事を済ませたら部屋に直帰するだけだったけど、今日ならお散歩的なことができそうだ。湿気を含んだ空気に「髪が大爆発しちゃうなー」」と思いつつ夜の本願寺を見に行く。

正直に言うと、カプセルタワー生活も3週目を過ぎて「どこを歩いてもウレシイ!」な感じがすっかりなくなってしまった。早くも日常。住めば都?ちょっと違うか。ともかく慣れとは怖いものだ。せっかく余裕のある時間が作れたことだしここは特別感を持たせていきたいと、東銀座と築地の間くらいの歩いたことのない角を曲がってみたら、ただでさえ人通りの少ないであろう道が、台風のおかげでほんとにひとっこひとりいない闇になっていて、暗いビルとビルの隙間あたりに妖怪がいそう。ここはほんとに都会の真ん中なのか?身の危険を感じて超早足で通りを抜け、やっとこ本願寺に着くとさすがにそれなりに観光客がいて明るい雰囲気だ。まわりにはなかなか雰囲気のよい飲み屋さんがいっぱいあって是非入ってみたいけど、一人でいきなり入る勇気はさすがになかった。「ワカコ酒」のようになりたいものだ。

でも一杯飲みたいなー。そういえばこの近くに、娘の幼馴染みのお母さん(要はママ友)がカフェバーを開いているから、ふらっと行ってみようかな。と歩き出してはみたものの。あまりにも久しぶりすぎるのと、実はその幼馴染みのお嬢さんは何年か前に夢半ばで亡くなっていて私が顔を出すとやっぱり彼女の話になってしまうので行かない方がいいのかもしれないな、などと考えだして勝手に気まずい気分になっていく。「でも…しかし…」がぐるぐるして夜の築地散歩を楽しむどころじゃなってきた。私はわりとうじゃうじゃ考えがちなのだ。とりあえず電話予約で様子を見てみようとサイトを開いたら、今日は臨時休業だった。お盆だものね。行けない理由を考えなくてよくなってちょっとホッとする。いろんなことを思いついては実行できないと自分を責めてしまいがちなので、できないとはっきりわかると自由になれるのだ。雨の日曜日に「ああ、今日は一日ダラダラ家にいてももったいないと思わなくてすむ」と落ち着くみたいに。

そのまま八丁堀から銀座まで、遠回りして夏の銀座のお盆の夜。とっくに閉店したデパートのショーウィンドウにはお祭りのお面を纏ったマネキンがいる。お盆の帰省でガラガラかと思ったメインストリートは大勢の外国人観光客がフワフワとそぞろ歩きで写真を撮ったりしていて、なかなかにざわめいていた。飲み会ではなくただただ歩くだけの銀座は、お祭りのあとのような浮かれ気分と寂しさがないまぜになった雰囲気だ。さて、人の気配のない中銀カプセルタワーに帰ろう。無骨なシャワーブースで汗を流そう。シャワーの時間を予約してないけど大丈夫かな?

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懐かしい、夏
(この写真は再掲かも。80回ってなんだよ(笑)。もはや自分でも読み返すのがめんどくさくなりました)

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