見出し画像

【127.水曜映画れびゅ~】"The Killer”~不完全で、美しい殺し屋~

"The Killer”ザ・キラーは、10月に劇場公開され、11月10からNetflixで配信されている映画。

ハリウッドの"鬼才"デヴィッド・フィンチャー監督の最新作です。

作品情報

ある任務失敗により、雇い主を相手に戦うことになった暗殺者。世界中で追跡劇を繰り広げる彼は、それはかたき討ちであっても目的遂行に個人的な感情を持ち込まないよう自分自身と闘い続ける。

Netflixより

不完全な殺し屋

クリスチャンは、完璧な殺し屋だ。

常に冷静で、どんなこと時でも心を乱すことはない。

請け負った任務の達成率は、100%…のはずだった。

いつも通りに任務を遂行していたはずが、放った銃弾はターゲットを外した。

ただその後も、クリスチャンはいつも通りに後処理を済ませ、帰ってしまう。

しかし、その失敗によりクリスチャンは依頼人の怒りを買ってしまう。

デビッド・フィンチャーのサイコスリラーが帰ってきたっ!

ハリウッドの鬼才デビッド・フィンチャー。デビューから30年以上経ったフィンチャーですが、彼の得意分野は何と言ってもサイコスリラー映画です。

彼の長編監督デビュー作は『エイリアン3』(1992)。リドリー・スコットとジャームス・キャメロンからのバトンを受け継いでの鮮烈なデビューでしたが、撮影トラブルなどが重なって納得できる出来とならず、フィンチャー自身「フィルモグラフィーから外したい」と述べるほどでした。

その後「もう映画監督はしたくない」とまで言い始めていたのですが、そんなフィンチャーを引っ張り上げたのがブラッド・ピット。サイコスリラーの大名作『セブン』(1995)の監督を要請し、結果的に大ヒット。

そこから 『ゲーム』(1997)、『ファイト・クラブ』(1999)、『パニック・ルーム』(2002)、『ゾディアック』(2007)と、サイコスリラー映画を立て続けに作り続けたフィンチャー。必ずしも万人受けする作品ではありませんが、コアな映画ファンたちからは熱烈な支持を獲得していきました。

その後、ファンタジー映画の『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(2008)と伝記映画『ソーシャル・ネットワーク』(2010)という大作を監督します。ジャンルは違えど、これまでのサイコスリラー感を醸し出すフィンチャー独特の”暗さ”に覆われた2作はアカデミー賞にもノミネートされ、監督としての地位も確固たるものとなりました。

その2作後は、『ドラゴン・タトゥーの女』(2011)と『ゴーン・ガール』(2014)というサイコスリラー映画に再び回帰。さらにその後はNetflixと契約し、政治ドラマ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』と、これまたサイコスリラー系ドラマの『マインドハンター』に製作兼監督を務めました。

そして初のNetflixオリジナル映画として『Mank/マンク』(2020)を発表。亡き父がのこしたハーマン・ジェイコブ・マンキーウィッツの伝記物語を白黒映画として映像化し、監督賞を含むアカデミー賞10部門ノミネートという快挙を果たします。

そして今年、待望のNetflixオリジナル2作目として『ザ・キラー』を発表。フィンチャーの原点ともいえる『セブン』の脚本家アンドリュー・ケヴィン・ウォーカーと28年振りにタッグを組み、再びサイコスリラー映画を作り上げました。

美しい殺し屋

そんな”サイコスリラーの名手”デヴィド・フィンチャーが手掛けたのは、「史上最も美しい殺し屋映画」。

淡々と続くモノローグと、正体を隠す徹底した所作。『007』シリーズや『ミッション:インポッシブル』シリーズのような派手さはありませんが、静かに美しく”ザ・プロ”の殺し屋を描いていきました。

なかでも最も美しかったのは、冒頭の「任務失敗からの空港まで」。任務の成功とか失敗とか関係なく、完璧なまでに証拠を隠滅していくシーンの連続は残酷なまでの美しさでした。

マイケル・ファスベンダーの寒暖差ありすぎて、風邪引くわっ!

本作で主演を務めたのは、マイケル・ファスベンダー

全編モノローグが続き、劇中ではほぼしゃべってないのですが、ファスベンダーのミステリアスなオーラと相まって、存在感抜群でした。

企画当初は、フィンチャーの盟友であるブラッド・ピットを主演に迎えることも考えられていましたが、結果的にファスベンダーで大正解でしたね。ブラッド・ピットには、年齢的に”あのダーク感”は厳しそうでしたからね…(笑)。

また、そんなマイケル・ファスベンダーの次回作もすでに公開が決まっています。

『ジョジョ・ラビット』(2019)で知られるタイカ・ワイティティ最新作。最弱のサッカーチームを勝利へ導くコーチをファスベンダーが演じます。

…って、役の振り幅ありすぎだろっ!

でも、絶対観ます!


前回記事と、次回記事

前回投稿した記事はこちらから!

これまでの【水曜映画れびゅ~】の記事はこちらから!

次回の更新では、観た過ぎてBlu-rayを輸入したクリストファー・ノーラン監督最新作”Oppenheimer”オッペンハイマーを紹介させていただきます。

お楽しみに!