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【140.水曜映画れびゅ~】『夜明けのすべて』~独りで悩まない勇気~

『夜明けのすべて』は、2月9日から公開されている映画。

『ケイコ 目を澄ませて』(2022)を手掛けた三宅唱監督の最新作です。

あらすじ

月に一度、PMS(月経前症候群)でイライラを抑えられなくなる藤沢さんはある日、同僚・山添くんのある小さな行動をきっかけで怒りを爆発させてしまう。だが、転職してきたばかりだというのに、やる気がなさそうに見えていた山添くんもまたパニック障害を抱えていて、様々なことをあきらめ、生きがいも気力も失っていたのだった。職場の人たちの理解に支えられながら、友達でも恋人でもないけれど、どこか同志のような特別な気持ちが芽生えていく二人。いつしか、自分の症状は改善されなくても、相手を助けることができるのではないかと思うようになる。

公式サイトより一部抜粋

PMSと、パニック障害

PMS(月経前症候群)
月経前、3~10日の間続く精神的あるいは身体的症状で、月経開始とともに軽快ないし消失するもの

日本産婦人科学会より

PMSのより、月に数度、どうしてもイライラが抑えきれなくなる藤沢さん。怒りの爆発や、精神安定のための薬の副作用により、仕事に支障が出てしまう。職場にはPMSのことを打ち明けることができず、結局退職してしまった。

・・・

その後、藤沢さんは、理解のある職場に転職できた。そこで出会ったのは、山添くん。いつも気怠そうに仕事をする山添くんに、藤沢さんは思うことがあった。体調が悪い日には、山添くんに怒り散かしてしまうこともあった。

そんな時に藤沢さんは、山添くんが服用していた薬を拾った。その薬で、彼がパニック障害であることを知った。

パニック障害
突然前触れもなく、動悸、息苦しさ、めまいなどの症状が出現するパニック発作を繰り返し、そのため「またあの発作が起きたらどうしよう」と過度に心配になって、外出などが制限される病気

ながうしクリニックより

「もしかして、パニック障害?」

藤沢さんは、山添くんに聞いた。

「私も、PMSなんだよね」とも打ち明けた。

最初は警戒していた山添くんだったが、次第に2人は互いの症状を理解しならが、支え合うようになる。

三宅唱最新作

本作の原作は、『そして、バトンは渡された』(2019)でも知られる瀬尾まいこの同名小説。

キネマ旬報ベスト・テン(日本映画)で第1位を獲得した『ケイコ、目を澄まして』の三宅唱が、共同脚本・監督をし、映画化した作品です。

主演は、上白石萌音松村北斗。2人とも独自にPMSとパニック障害について調べ、しっかりとキャラクター性を理解して、撮影に臨んだようです。

特に上白石萌音は、普段は柔らかい雰囲気なのに、急にイライラし始めて顔が変わっていくのが、すごく自然でした。「怒っちゃダメだよ」って心で祈りながら、彼女の演技に見入ってしまいました。

独りで悩まない勇気

この映画は、ある種、私の写し鏡のような作品でした。

というのも、症状の違いはありますが、私も鬱病と診断されたことがあり、道端でうずくまるくらい精神が不安定な時期がありました。そのことにより、外出することが怖い時期がありました。でも、私を理解してくれる家族や友人たちのおかげで、今は回復することができました。

「精神的な病に悩む人は、弱い人間だ」。そんな風に思われたくないと、自分の病や症状を隠す人が一定数いるのではないか、と思います。実際に私は当初、そうでした。

しかし、1人で抱え込んでも回復することはありませんでした。運動したり、創作をしたりして気を紛らわせようとしましたが、結局もっとひどくなってしまいました。

自分にできることには限られています。だけど、メンタルクリニックに行って診断を受け、「自分が鬱病である」ことを周りに打ち明けたら、状況は一変しました。

鬱と打ち明けたとしても、別に怪訝されることはありませんでした。今アルバイトをしていますが、面接時に私の体調について正直に告げたうえで、雇ってくれています。

自分ひとりではどうにもならないことはあります。そんな時は素直に「助けて」と言っていいと思います。そんな私の経験が、本作で描かれる物語と重なりました。

支えてくれた人たちの尊さを再確認させてくれた、私にとって大切な映画です。


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次回の更新では、アカデミー助演女優賞ノミネートの『カラーパープル』を紹介させていただきます。

お楽しみに!