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異邦人 巨人兵降臨

解説

 2015年に著した短編小説です。新人賞に応募しましたが、お約束となっていた第一次選考に落ちました。皆様に見ていただけるように、再度推敲しました。誤字が多い。句読点の使い方が、おかしかった。など、我ながら基本がなっていなかったことを猛省しています。
 今までのSFと少しかけ離れた内容ですので、ぜひご覧になっていただきご感想をいただければ幸いです。

十月初旬午後一時過ぎ

 夏もすぎ秋晴れの清々しい初秋10月初旬午後一時過ぎ、東京の街中に突然大きなサイレンが鳴り響いた。いくら事前に知らされていたとはいえ、数日間で国民に覚悟などできるはずはなかった。

 平和ボケしていたからではなく、突拍子もない一部のUFO研究科やUFOオタクのような政府の発表に現実味がなかったからである。地球の静止軌道上に、直径数二十キロ。厚さ二百五十メートルにも及ぶ円盤型の大型UFOが、アメリカ大陸とヨーロッパそれにアジアの三箇所に百機ほどが分散して集結していた。

 平和の使節か? それとも侵略を目論んでいるのか? 判然としないものの、UFOの数や現在まで何も連絡する意思が見られないところを見ると後者と考えるべきで、できるだけ事前に国民を少しでも安全な場所に避難させるしか方策はなかった。

 NASAやペンタゴンから9月中旬に提供された写真や情報が、ニュースとして流されると国民は現実にただ呆然とするしかなかった。

 発表から一週間近くUFOは、静止軌道から動く気配はなかった。

 為政者たちは、為すすべがなくただ動向を窺うしか方策はなかった。一週間後、UFOが行動を開始した。

 政府が避難先とした地下街や地下鉄の構内は、人で溢れかえって身動きも取れない状態になり大きなビルの地下にまで人が溢れた。地下駐車場も車は外に出され、駐輪場も地下にあれば臨時の地下シェルターに使わざるを得なかった。
 東京以外の大都市でも状況は変わらず地方に行くに従い避難場所は更に貧弱となった。それでも国民は、一縷の望みを託して政府の指示に従う他はなかった。
 国民たちには、ただの気休めにしか思えなかった。

 その日、静止軌道上に集結していたUFOの中から、五機のUFOが日本の上空に向かって降りてきたのが避難の直接の原因だった。五機のUFOは、北海道に一機。本州の東京と大阪にそれぞれ一機。四国九州にそれぞれ一機に別れ高度5000メートルに滞空していた。

 北海道上空に滞空していたUFOの中から、小さなそれでも直径500メートルものUFOが放たれ高度500メートルまで降下してそのまま滞空を始めた。そのUFOを守る護衛戦闘機のように、三角錐の飛行物体を八機随伴していた。
 クリスタルのような輝きを持ち、全長が百メートルにも及び後部の幅は四十メートル高さは三十メートルの素っ気ない何の変哲もない三角錐の物体は、戦闘機ではなく爆撃機のような威容を誇っていた。

 世界有数の兵力を誇る自衛隊は、圧倒的なUFOの数や地球に来るだけのテクノロジーに対して恐れることなく、国を、愛する人を、家族を守るために行動を開始した。

 本来、洋上で海外からの侵略を食い止めるはずの海上自衛隊は、離島からの避難民を守るための避難船を護衛して本土にある母港へと向かっていた。
 母港に寄港してから、弾薬庫にあるミサイルや弾薬をすぐにでも補給して防空の任にあたることになっていた。第二次世界大戦の終戦近くに海軍が行なったように、浮かぶ砲台としたのだ。他に手立てはなかった。相手が、空からやって来る以上、洋上での防衛は意味をなさなかったからだ。

 UFO一機が接近した報を受け、千歳基地からスクランブル発進した航空自衛隊第二航空団のF15戦闘機4機は、いつでも最高スピードが出せる体制を取りつつ、慎重に二機編隊で二手に別れスピードを抑えて接近していった。本来なら早期警戒機の役目であるが、相手が未知の存在である以上何かあった場合すぐにでも反撃できる態勢が欲しかったからである。

 専守防衛で、相手から攻撃できない限り反撃できない自衛隊の限界でもあった。相手の意図が分からない以上、こちらから攻撃を加える訳にもいかなかった。さらに、全長百メートルはある三角錐の形をした護衛機と思われる機体を八機も従えていることで、迂闊に接近するのも憚られた。

「こんなときにも、国会で議論してるんですかね?」
 部下の突然の無線の入電で、加藤一等空佐は一瞬叱るべきか考えたが、「ああ。もっとも静止軌道上の宇宙船は、ほとんど動いていないようだ。五機だけが日本の上空に滞空している。現在の状況では、侵略なのか外交なのかも判然としない」と、答えることにした。

 本来無線通信は封鎖しなければならない。それでも、前代未聞の宇宙からの訪問者に部下の古川二等空佐は動揺している。結果的に我々は、宇宙からの訪問者の真意を探る役目を与えられていることになる。
 訪問者が侵略や敵意に満ちていれば、真っ先に犠牲となる存在となる。最後ぐらい、古川の言いたいことを言わせてやろうと判断した。相手を視認した後は、お約束通りに相手に注意を喚起させ日本の上空から退去してもらうための交信を試みる予定になっていた。ロシアや中国が相手でも、何の応答もないのが当たり前だ。どんな言語を使っていいかも分からない相手に、とりあえず日本語と英語で警告することにしていた。

 一方国会では、国会議員たちが永田町駅の地下に秘密裏に造られた緊急会議場に集まって、古川の言ったように不毛な無意味な議論を始めた。

「護衛機と思われる機体を八機目視確認!」
 古川の緊張した声が聞こえてきた途端、護衛機と思われる三角錐の機体は、ゆっくりとUFOから離れその中の2機が加藤と古川の編隊に向かって近づいてきた。スピードは速くないものの二人にとってジャンボ機以上の大きさの機体は、威圧感を感じさせるのに十分だった。

「古川! 落ち着け。俺について来い」
 加藤は、腹をくくった。それでも、相手が攻撃を仕掛けるまで反撃はできない。
「相手は、どんな武器を持っているかわからないが、軸線に機体を晒すな」
 加藤は、気休めのような気がしたものの未知の相手だけに他には何も考えつかなかった。
 相手の一機は、機首を古川の機体に向けた。
「古川!」
 加藤は、古川に向かって叫んでいた。次の瞬間相手から、火炎放射器のような炎が古川機目掛けて飛んでいった。古川は、間一髪でダイブして相手の攻撃をかわすと、「攻撃します」と言って攻撃した一機目掛けて機種を向けた。

 攻撃した相手は、古川をあざ笑うようにゆったりと旋回し態勢を整えようとしたとき失速したのか降下を始めるとすぐに空中分解した。
 加藤は、その光景に一瞬釘付けになり自分に向かって接近している三角錐の物体から一瞬気を逸らしてしまった。その時相手が攻撃した。が、炎は、加藤の機体の下を掠める様にして過ぎ去っていった。

 加藤は、ほっと胸を撫で下ろす時間も惜しむかのように退避行動を取って相手の後方に食らいつこうとしたが、そんな加藤の思いをよそに三角錐の物体は、優雅に退避行動をとろうとしたようだ。加藤は、三角錐の物体に向け何の躊躇もなく二十ミリバルカン砲の発射のボタンを一連射した。

およそ0.5秒。二十数発の銃弾が三角錐の物体に吸い込まれていく。あんな大きな物体にバルカン砲で歯が立つとは思えなくミサイル発射ボタンに手を掛けたとき、三角錐の物体は爆発して落下していった。
 なんという脆い機体なのか? と戸惑っている時間はなかった。加藤は、残った相手をいち早く探さなければこっちが殺られる…。咄嗟に、視界全体を見回し残存機五機を発見した。
 味方の機体は、全機揃っており損害がないことに気がつくとホッとした。
 相手の残存機は、態勢を整え直すかのようにゆっくりと編隊を組み直していた。

「隊長。UFOを見てください!」
 古川の声が無線から流れ、加藤は急いでUFOを見て唖然となった。こんな相手に戦って勝てるのか!? と、暗澹たる気になったが自分が弱気でどうする? と、勇気を奮い立たせた。
 UFOの横のドアが開いており、中の様子が見えた。カタパルトのようなものに全長二〇メートル程度の大きさで、モビルスーツか人型のロボットのような物体が複数縦一列に並んでいた。右腕にはビームライフルのような武器を持っていた。すぐにカタパルトが外にせり出してくるとモビルスーツは、発射ではなく走って表に出てきた。

 モビルスーツは、外に出るなり動きが緩慢になった。カタパルトの先端に五体ほどがたどり着くと、カタパルトが折れ、モビルスーツは真っ逆さまに地上に向け落ちていった。そのうちの二体は、態勢を立て直して背中に背負ったロケットのようなものを噴射したのかゆっくりと地上に降りていった。
 UFOは、カタパルトを格納すると開いたドアを閉めながら高度を下げだした。
 加藤は、態勢を立て直した五機の三角錐の動向に注意を払いながら、地上にいる陸上自衛隊の戦車隊に連絡することにした。

 少し小さなUFOから一番近くの北海道恵庭市の北恵庭駐屯地に駐屯する、陸上自衛隊第7師団第72戦車連隊第一中隊の90式戦車十四両と補給車両二両は、F15が上空で戦っている間に、UFO一機が滞空している地点から約十キロ離れた地点に到着した。
 到着した場所は、民家が所々に点在する他は一面の畑に覆われており十キロ先までほとんど起伏がない場所であった。遠くに黒ごまのようにUFOが見え、その周りに白ゴマのような点が数個見えた。現場にいるはずのF15の姿は、目視では確認することができなかった。

 戦車隊は、無人の畑に様子を伺いながら慎重に一列に展開した。有効射程より大幅に距離があるが、それでも相手が上空にいれば戦車の出番はなく相手が着陸して攻撃を受けるまで反撃ができない状況を考えての措置であった。
 相手が、侵略目的であれば距離を置いた方が少しでも安全でもある。命中はしなくても、砲弾が届く距離ではある。最悪の場合は、ここから攻撃するしかない。現状では、上空にいるF15に任せるしかなかった。
 北恵庭駐屯地を始め全国の自衛隊駐屯地で戦車が待機しており、いつでも出動できる体制を整えていた。他にも自走砲など大口径の車両も待機していた。高射砲やミサイルなど、全ての兵器弾薬がいつでも補給できる体制は整えていたものの、上空の大きなUFOが一斉に攻撃を始めたら防ぎきれるか不安視されていた。

 戦車隊隊長の藤木は、加藤からの無線を切ると全員に戦闘態勢を令した。UFOが着陸するということは、戦闘員が出てくるということになる。モビルスーツ五機が降り、カタパルトの事故で三機が墜落して残り二機が地上に降下したという信じ難い報告を受けた藤木は、自分が昔見ていたガンダムを思い出して現実味がない現実に戸惑った。
 相手は、初めて遭遇する異星人なのだから想定や常識が通用しないのだろう。先ずは、相手を食い止めることを考えなければならない。そんなことができるのか? と、不安がよぎったものの、考える前に前進しなければならないと思い直して全車両に前進を命じた。

 高校生の山田たち三人は、避難することを選ばなかった。一旦避難したものの、他にも彼らにとって幸運なそれでも生死に関わる出来事があった。彼らが避難した公民館で、テレビを見ていた時だった。大きなUFOから発進した小ぶりなUFOが、避難している公民館から東に二十キロほどに到達する可能性が高いとの注意喚起情報が入った。小ぶりのUFOといっても、直径は5百メートルと推定されていた。
 山田たちは、「どうせ死ぬんだ! 死ぬなら、UFOを見てからにする」と言って、親や親類の制止を振り切り自転車でUFOが着陸する予想地点に向かった。上空にUFOを見つけると、できるだけ離れて双眼鏡で見えるギリギリの二キロほど離れた場所に一件の民家を見つけ隠れてUFOを双眼鏡で眺めだした。

 モビルスーツ三体が、落下した直後だった。その時、ゆっくりと降りてくる二体のモビルスーツが見えた。
「おい! あれは、モビルスーツだ!」
 高校生の三人組の一人山田亮太は、上空を指さして叫んだ。
 残りの二人は、呆然とゆっくり降りてくる二体のモビルスーツを眺めていた。が、恐怖より好奇心が優っていた。
 坂井真司は、思い出したようにビデオカメラをモビルスーツに向け最大望遠で撮影し始めた。
「UFOも降りてくるぞ!」
 最後の一人、小川駿が最初に気がついて大声を出した。
「本物だ!」
「本物のUFOだ!」
 山田と坂井は、口々にはしゃぎだした。それが死に繋がるとしても…。今は、喜びだけが三人の頭の中を占領していた。

「戦闘準備!」
 藤木は、着陸したUFOを確認すると部下たちに向かって命令した後に、「退避行動しながら俺について来い!」と、次の命令を発した。
 先ほどの、三体のモビルスーツは落下して動かなくなった。壊れたのか? その後にゆっくりと降りてきたモビルスーツは、破壊を免れたようだが動く気配はない。何故だ? 待ち伏せするつもりなのか? という疑問をとりあえず退けて藤木は、「速度三十で前進!」と、部下に命じた。戦車隊は、砲塔の角度を上げてからUFOに向かってジグザグ走行を開始した。

 加藤は、降下したUFOを眼下に確認すると三角錐の護衛戦闘機? が、自分たちの方に向かってくるのを認めて、常軌を逸した護衛戦闘機であることを直感した。我々と違う戦法をとっているであろう異星人に対して、我々の常識は通用しないと悟った。これから我々のできることは、この常軌を逸した戦闘機を撃墜してから戦車隊の援護に回ることしか選択肢は残されていない。おそらく千歳では、他の戦闘機が空対地ミサイルを装備して発進準備している頃であろう。だが、間に合うのか? 加藤は、疑問をひとまず退けて今最低必要なこれからの任務を古川に伝えた。「敵護衛戦闘機を殲滅せよ」

 戦闘は、呆気なく幕を閉じた。残った敵護衛戦闘機の二機は、古川と別の編隊長が仕留めた。残った三機は、戦闘空域を離れ一目散に上空に待機しているUFOへと逃げようとしたが途中で中の一機が失速したのかきりもみを始め空中分解してしまった。直後、地上に降り立ったUFOから、球体の物体が加藤たちに向け発射された。加藤は、逃げ去った護衛戦闘機から、地上のUFOより発射された球体の対処に追われる羽目になった。球体は、F15目掛けて打ち出された。
 同時刻、地上に着陸したUFOのドアが開き、中からヘルメットを被っただけの巨人が10体近く外に出てきた。外に出たとたん手にした武器を地面に落とした巨人たちは、膝をついて動けなくなった。

「モビルスーツじゃない! 宇宙人だ! 巨人の宇宙人だ!」
 山田は、双眼鏡を覗きながら興奮して叫んだ。
「でも、様子が変だ。動けないようだ。さっき降りたモビルスーツの二人も、動けずにじっとしている」
 小川は、戸惑った声で双眼鏡を覗いていた。
「これは、YouTubeで話題になるぞ」
 坂井は言ってから、隠れていた家の端から離れ堂々と映像を撮り始めた。隣で双眼鏡を覗いていた小川は、双眼鏡から目を離し坂井の方を見て凍りついて、「危ないぞ!」と、声をかけた。

「自衛隊の勝利だ」
 坂井は、断言した。
「そんな…。相手は巨人だぞ。踏みつけられたらひとたまりもない」
 山田も双眼鏡から目を離し、意味不明な坂井の言葉に反論した。
「物理の授業の時、もし、人間が10倍の大きさになったらどうなるか? オタクが言った通りのようだ」
 坂井が言ったオタクとは、彼らの担任教師だ。一応物理学や科学などをベースとしてSFの小説や映画の矛盾を解説している雑誌を、時間があるときの授業で参考資料としていた。見方によれば夢がない本に傾倒し、SF小説や映画それにテレビアニメを題材にして物理学の観点から余計なことを教えたがる物理教師のあだ名であった。
「俺の体だと17メートル体重65トン。二本の足で体を支えることすらできない。って、まさか?」
 山田は、驚いて坂井を見た。

「そういえばあの巨人たちは、UFOの中から走って出てきた。UFOから出た途端に歩けなくなった。UFOの中はきっと重力を制御しているんだ。凄いテクノロジーだ」
 小川は言ってから、息を呑んだ。「おい坂井! ちゃんと撮れてているだろうな」と、坂井のビデオカメラに視線を移した。
「もちろんだ。よし、全部撮ってやる」
 坂井は、意気込んでUFOに向けてカメラを構えると、「おい! 近づいてくるぞ」と慌てて家の陰に隠れた。
 巨人たちは、這うようにして近づいてきた。武器も引きずり、闘士だけは消えていないようだ。

 藤木は、砲手用照準潜望鏡(潜水艦の潜望鏡を小さくしたような装置)をのぞきながら、「相手は、モビルスーツじゃない! 生身の生物だ」と、思わず上ずった声を上げた。F15からの報告では、モビルスーツか大型ロボットのようだと言っていたが、生身の生物だったとは…。
 モビルスーツだと思ったのは、敵から身を守るための西洋の鎧のせいだ。が、何故ヘルメットだけになったのだろうか?それに、まだ距離はあるものの地面に膝を付き這うようにしてこっちに向かってくる。藤木は、手短に本部に連絡すると異星人に意識を集中することにした。

 異星人たちは、匍匐前進でしか動けないようだった。のろのろと匍匐しているのだが、それでも人間の十倍以上の体格のため思っている以上のスピードがあった。その中の一人は止まると、銃のような物を戦車隊に向けた。直後に、銃が火を噴き畑に沿って炎が戦車隊最右翼を掠めて数百メートル後方で爆発した。破壊力は物凄く多くの巻き上げられた土砂が戦車隊に降り注いだが、被害はなかった。

 その直後、戦車隊や高校生の山田たちは、F15に向けて発射された球体がF15の高度まで到達することができず落下する光景を複雑な顔で眺めた。
 十個以上の球体はやっとUFOから離れた異星人たちに容赦なく降り注ぎ、閃光と共に爆発し大きな穴を穿って直後に大音響が響き渡った。爆風とともに、土砂が山田たちの隠れている家に容赦なく降りそそぎ家を破壊した。三人はかろうじて難を逃れたが、破壊された家の瓦礫を見て呆然となった。UFOは爆発で舞い上がった土砂や埃で霞んで見えた。

 爆風は、ジグザグ走行する戦車にも少し遅れて到達した。
「凄い破壊力だ!」
 砲手用照準潜望鏡からUFOを覗いていた藤木は、息を呑んだ。何故同士打ちになったのか? と、考える余裕などなかった。ただ破壊力の大きさに肝を潰した。次は、我々に向け攻撃があるだろう。戦車の装甲で防げるのか? という危惧があったがそれでも、「相手が攻撃してきたら直ちに反撃せよ! 繰り返す。反撃を許可する」と、部下たちに無線で命令した。

 直後UFOの上から戦車隊に向け球体が放たれた。
「反撃開始!」
 藤木は、球体を見逃さず全車両に命令した。まだ有効射程距離には程遠いものの一斉に砲弾を発射すれば多少の効果はあるだろう。
 山田たちは、斜め後ろから一斉に自衛隊戦車の発射音を聞いた。まだUFOからも自分たちがいる場所からも遥かに遠い距離だが、それでも初めて聞く音に、「すごい迫力だ」と、肝を潰した。戦車の砲弾は、UFOの周りで炸裂した。UFOは無傷のようだった。

「だめか…」
 山田は、無傷のUFOをため息混じりで眺めた。
 山田たちは戦車が気になり、自衛隊の戦車に双眼鏡を向けた。ちょうど二発目の砲弾を発射するところだった。坂井のビデオカメラも、戦車に向けられた。それから数秒後、戦車の発射音が聞こえたかと思うと、戦車隊の辺りに閃光が走りUFOから放たれた球体が爆発した。やられたのか!? と息を呑んだ。自衛隊の砲弾の爆発より、数倍の規模で土砂が巻き上がるのが見えた。それからすぐに、戦車隊の砲弾発射音などとは比べようもない大音響が聞こえた。爆発の凄まじさと、異星人の武器の性能を見せつけられた想いだった。UFOに比べるとおもちゃの戦車のような戦車隊の姿は、巻き上げられた土砂や埃で判然としなかった。

 藤木は、初めて見る爆発と大音響に戦慄した。敵の球体は、戦車から百メートルほど手前で横一線に爆発した。まともに当たれば、木っ端微塵だ。次に、ほかの部下たちのことが気になり、「損害を…。損害を報告しろ!」と、叫ぶように命令した。
 次々に損害なしの報告を受けると、藤木は胸を撫で下ろしたが、「全車両停止!」と、全車両に向け命令した。桁違いの爆発力をもつ兵器も、飛距離がないのではないかと考えたからだ。異星人のテクノロジーを考えれば、我々は全滅してもおかしくないはずだ。それが百メートルも距離が離れるはずはない。との考えに至った。直感で、進んだテクノロジー以外に根拠は何もなかった。相手の作戦かもしれないと考えて見ても、詮無いことだった。UFOに、姿を晒している以上逃げようもない。

 爆発後土砂が落ちそれから埃が霧のように立ち込めゆっくりと埃が落ちて戦車隊の周りの視界が開けると、十四両の戦車の無事な姿が山田たちにも見えるようになった。
「無事だった…」
 山田たちは、ほっと胸を撫で下ろした。

 それからUFOに動きはなかった。五分経っても、十分たっても沈黙を守っていた。先ほどの戦闘が終わって、辺りはF15の飛翔するキーンという音だけが聞こえていた。それが山田たちには、不気味に感じられた。
 一方藤木たちにも、UFOの動静が不可解だった。やはり、射程距離が足らなかったということか? それとも、何かを企んでいるということか? ここは下手に動かない方が得策だと考えた藤木は、全車両に待機を命じた。

 上空で攻撃命令を待つ羽目になった加藤たちは、上官たちの考えが不可解だった。敵護衛戦闘機のあまりにも貧弱な造りに、地上のUFOもミサイル一発で破壊できる気でいた加藤は、攻撃命令が発せられるまでUFO上空を旋回するしかなかった。

「UFOと、コンタクトが取れたんでしょうか?」
 古川の困惑した声が無線を通して聞こえてきた。
「さあ? 分からないが、たった一機のUFOに翻弄されていることを考えると、一斉に攻撃されたらひとたまりもないのでビビっているのかもな」
 加藤は、叱ることもなく普通の会話のような気楽さで応じた。無線封鎖など、この後に及んでは意味がないと考えた。敵が、日本語を自由に操れるとは思わなかったからだ。それに、一般市民よりも安全なところで不毛な会議をしている愚か者の国会議員と比べ、こっちは命を張って戦っているんだとの自負もあった。規則など糞喰らえだ。

「本当に宇宙人は、巨人なんでしょうか? 私には、モビルスーツのように見えましたが…」
 古川の声が聞こえてきた。
「西洋の、鎧のようなものを付けていたようだ」
「何で分かったのでしょうか?」
「さあな? でも、二十メートルもの巨体だとしたら?」
「常識では、アメリカ人なら八十トン以上の体重になりとても二本の足で支えることは不可能ですが…」
 古川の困惑した声が聞こえてきた。
「とりあえず、命令を守るしかない」
 加藤は答えてから、「UFOの動向を見逃すな。こっちは、命懸けだからな」と、判然としない命令に従い自分たちを守るために会話を打ち切ることにした。先ほど、UFOから打ち上げられた球体が、自分たちがいる高度に到達することなく落ちていったことを考えると高度を下げることは危険と判断した。たかが高度五百メートルだ。落下して爆発した威力を考えると、当たっていれば我々も木っ端微塵になっていたであろう。いったい異星人は、どんなテクノロジーを持っているのか判然としない。が、それから、我々に攻撃してこないことを考えると諦めたのか? それとも、罠なのか? 判然としないが敵の動向を上空から監視するしかない。

 藤木の報告は、異例の速さで防衛大臣にもたらされた。防衛大臣は、陸海空自衛隊に攻撃を受けない限り攻撃を禁止する命令を出した。攻撃されたり動きがあったら、即時に報告する命令も付随していた。最初に加藤たちが命令を受け、藤木に命令が届いたのは藤木が部下たちに待機を命令してからだった。それは、速度が速くすぐにでも攻撃可能なF15に対する措置ではなく、単に陸上自衛隊の組織の複雑さと混乱によるものだった。

 航空自衛隊も混乱していたが、幹部の一人が直接千歳基地に連絡したからに過ぎない。国会も自衛隊も、現場の必死の戦いと比べ混乱の極みに達していた。それは、無理からぬことであったかもしれない。未曾有と言っていい今回の戦闘に、まともな判断や命令を出せる人間は皆無だった。現場はただ与えられた任務を全うすればいいが、国会や司令部が適切な判断をくださないと日本は滅びてしまう。という、重圧がのしかかっていた。それでも、現場は死をかけて命令を守らなければならなかった。

 三十分後、UFOが動き出した。今まで沈黙を守っていたUFOは、突然離陸してゆっくりとした速度で加藤たちが旋回している近くを掠める様にして飛び去って上空にいる母船へと帰還しようとしていることは明らかだった。
「どうしたんだ?」
 山田たちは、瓦礫になった民家の影から飛び去っていくUFOを複雑な気持ちで見送った。

 加藤は、UFOが愛機の横を掠めて飛び去るのを複雑な顔で眺めるしかなかった。攻撃もせず、何故去っていったのだろうか? と、疑問が頭をよぎったが、相手の真意が分からない以上推察するしかない。
 藤木達も、突然のUFO離陸に助かったという気持ちはなく、何故離陸して飛び去ったのだろうか? という疑問しかなかった。

 山田たちは、UFOが跳び去った方向を眺めながら少しの間動かなかった。いや、動けなかった。数分後、坂井がゆっくりとビデオカメラを降ろすと、「助かったのか?」と、言ってそのまま地面に座り込んでしまった。
「そのようだな」
 山田と小川も、地面に座り込んだ。
 三人は、地面に寝そべると天空を仰いだ。
「あいつら、何しに来たんだろうか?」
 山田が、呟いた。
「観光じゃないよな」
 小川は、言ってから困惑した顔になった。
「侵略?」
 坂井の言葉に、山田と小川は驚いて坂井を見た。

「なら、何で去っていったんだ?」
 山田は、坂井に尋ねたが坂井が答えを持っているとは思えなかった。
「きっと、住みにくいと思ったんだろう」
 坂井は、ある程度自信があるようだ。
「そんな…。そんな簡単なことで諦めたのか?」
 山田は、自信ある坂井の態度に困惑した。
「考えてみろ。もし、重力が五倍の惑星に着陸したら? お前の体重は、三〇〇キロ以上になるんだぞ」
「三〇〇キロって、無茶な」
「その無茶な状況があの宇宙人だったら?」
 坂井の言葉に山田は想像してみて、「だから、まともに歩くこともできなかった?」とぞっとした。坂井は無言で頷いた。
「俺だったら、這うこともできない」
 小川も想像した。
「でも、地球まで来れるテクノロジーがあるんだぞ。それぐらい分かっていたんじゃないか?」
 山田は、納得いかない顔になった。
「そうだろうか? 別の太陽系いや銀河系から来たとしたら? 太陽のデータなら分析できても、惑星の正確なデータを分析できるのは難しい。テクノロジーを過信していたとしたら?」
「そうだな。頭のいいやつに限って、自分を過信して都合のいいように解釈したがるからな」
 山田は、坂井をチラッと見てから言った。

「それは嫌味か?」
 山田が誰のことを言っているのか、坂井には理解できた。クラスの中、いや学年の中でトップクラスの坂井は、山田の言い方が引っかかった。が、それでも三人は気が合って友情が芽生えた。
「そうじゃない。政府の頭のいい役人と、同じだと思っただけだ。お前の考えていることが正しそうだ」
 山田は、取り繕ったが、「まあ。頭がいいお前にもありうることだがな。注意しろよ」と、付け加えた。

「おい。なにか聞こえないか?」
 小川の声で、三人は音のするほうを見た。自分たちに向かって来る、泥や埃まみれの一台の戦車だった。三人は立ち上がると戦車の方を向いた。戦車は、最高速度で近づいてきた。
 戦車の砲塔のハッチが開いて、中から自衛隊員の姿が見えた。藤木だった。戦車は近づいてくると、三人の前で急停車した。エンジンは掛かったままで、アイドリングしていた。

 藤木は、戦車から降りるなり大声で、「お前ら! ここで何やってる!?」と、三人に向かって尋ねた。
「UFO見物です」
 山田は、物怖じせずに言った。
「名前は?」
 藤木の有無を言わさぬ問いかけに、三人は名前を名乗った。
「そうか。俺は藤木だ」
 藤木は自分も名乗ってから、坂井のビデオカメラに気がついてビデオカメラを睨みつけるようにして見た。
「YouTubeに投稿します」
 坂井は、ビデオカメラを得意げに自衛隊員に見せたが咄嗟に体の後ろに隠した。
「乗ってけ。と言いたいところだが、ご覧のように乗るスペースはない。狭すぎる。少し待っていれば、迎えが来る。それまでおとなしくしていろ」
 藤木の言葉に、「UFOは、どうなりました?」と、山田が気になることを尋ねた。
「俺にもわからないが、静止軌道上にいたUFOはどこかに去って行ったようだ、日本上空にいたUFOも、さっきいたやつを収容してから後を追うようにして地球を去っていったようだ」

「地球は、彼らにとって住みづらかったんでしょうか?」
 坂井は、藤木に尋ねた。
 藤木は、坂井の言葉にハッとしたが顔に出すことはなく、「そうかもしれない。が、そんなことは、死体を解剖してみないと分からない」とお茶を濁してから、「さあ、大事な証拠品だ、自分が預かろう」と言って、坂井に向かって手を出した。
「後で、返してくれますか?」
「さあ? それには答えられない」
 藤木の有無を言わせぬ態度にたじろいだ坂井は、仕方なく隠したビデオカメラを藤木に渡した。
「今度同じようなことがあったら、さっさと避難しておとなしくしていろ。今回は、相手にも思わぬ展開になって文字通り自爆したかもしれない。が、次はないと思え」
 藤木は言ってから、三人に鋭い目線を投げかけて背を向けて素早く戦車に乗り込んでゆっくりとしたスピードで去っていった。

 三人は藤木の乗った戦車を見送りってから、UFOが飛び去った空を眺めた。
「終わったのか?」
 山田は、まだ信じられないような顔で呟いた。
「ならいいが」
 坂井は、『次はないと思え』と言った藤木の言葉を噛み締めていた。二人が少し、驚いた顔になり坂井に視線だけ移した。
「何の根拠もないが、異星人が大挙して押し寄せてきたことを考えれば、次はありえるかもしれない」
 坂井は、二人を目だけで交互に見てから、もう一度UFOの去っていった空を眺めた。人類は、孤独ではなかった。しかし今回の相手は、とんでもない隣人だったようだ。その時自衛隊の車両が三人に向かって近づいてくる音が聞こえた。

 自衛隊の車両は、一台ではなく多くのトラックや大型のクレーン車を従えていた。
 山田たち三人は、後処理を始めた自衛隊を横目で見ながら自衛隊の駐屯地に連れて行かれた。三人に、お灸をすえるためだった。本来なら警察の仕事なのだが、山田たち三人を警察に引き渡すわけにはいかなかった。不用意に警察に引き渡せば、三人が撮ったビデオの存在が漏えいする可能性があったからだ。一時間以上お灸をすえられた後に三人は、誓約書を渡された。
 誓約書には、「今回の異星人接触にあたり、私が見聞きしたもの及びビデオ撮影を行った事実を他に一切漏らさないことを誓います。もし前記誓約を履行しなかった場合は、どのような罪に問われても一切異議を唱えないものとします」と、書かれてあった。三人は、互いに困惑した顔を見合わせた。

 一佐の階級章をつけた五十がらみの男が執務机に座って、三人を立たせたまま誓約書を眺めた後に、眼だけで三人を交互に見ながら、「分かるね」と言ってから、三人を睨みつけるように見た。
「ビデオの存在が他の国民に知られれば、混乱が起きる。異星人の正体が知られてしまうからな」
 一佐は、不服そうな三人に釘をさすために説明を始めた。
「でも、図体が大きいだけで…」
 山田は、こらえ切れないという顔で反論を試みた。
「だから、我々には時間が必要なのだ」
 一佐は、そこで言葉を切って三人を一人一人見ながら、「君たちは、すべて見ていたから理解できるだろうが、何も知らない国民が見たら巨人という言葉だけが一人歩きして混乱するとは考えないのか? いや、パニックになるかもしれない」と付け加えてからため息をついた。

「このまま、黙っていろと?」
「これから我々が、彼らのことを分析する。ある程度分かった時点でちゃんと発表するから、それまで黙っていればいい。しかし、君たちがビデオに撮った事はずっと黙っているように」
 三人は、発表するという言葉に少しほっとしたがビデオの事には不満だった。
「これでも、君たちの身の安全を思って言っているのだがね」
 一佐は、苦笑いをしたが顔は笑っていなかった。一佐は、座っている椅子に深々と座りなおして背中を背もたれに預けると、「情報を知りたい人間は、日本人だけじゃない。君たちが異星人たちをその眼で見たことで、君たちに危険が及ぶ可能性もあるのだ。だから、沈黙を守るように」と、淡々とした口調に代わった。脅しではなく、本当に三人のことを思っているような顔になった。
 三人は、仕方なく誓約書にサインすると避難していた公民館の少し手前まで送ってもらった。

「まだ納得はいかないが…」
「自衛隊に、途中で捕まったことにするしかないじゃないか」
「そうだな。その方が安全みたいだ」
 三人は、公民館の手前でやっと意見が一致した。

 自衛隊の後処理は、思ったより困難だった。UFOが着陸した辺りには、球体が爆発した大きな穴が穿たれ粉々になった異星人の死体が散乱していた。降下に成功したモビルスーツ姿の異星人の二体の損傷も激しかったが、まだ全体の姿はかろうじて保っているようだった。大型クレーン車と多くの輸送車が投入され、異星人の死体は肉一片にいたるまで見落とさず何処かへ運搬されていった。

空・陸上自衛隊報告書 
(今回の異星人との戦闘について)【抜粋】

 極秘資料の赤いスタンプが表紙に押してあり、『開示するのは、一部の政治家と所管する官僚の一部。一部の関係者及び技術者に限られる。
 政治家は、首相と防衛大臣など。官僚は、防衛関係の官僚に留める。開示する人選については、現在首相と防衛大臣が主体となり人選を始めた。10月中に、決定する方針である。なお、多くの技術者が参画せざるを得ないが、最小の人数とし人選されない技術者が必要になった時は、すべてを開示せず必要な最低の情報に留める。
 開示した人間には、守秘義務を科す。守秘義務を履行しなかった場合は、懲役刑に処する。首相と防衛大臣も例外ではない』と、報告書の最初のページに、朱色で書かれてあった。

はじめに

 異星人は、今回の戦闘で我々に多くの教訓をもたらした。極めて高いテクノロジーを有し、好戦的な民族もしくは地球侵略他には地球の資源獲得を目的としたと思われる。

具体的考察

1.異星人が地球を発見した経緯
 人類も最新の技術で数光年先の惑星を発見することができたが、探査までには至らずまだ生命の存在までは確認できていない。太陽系においても、他の惑星や衛星でさえ生命の存在が確認すらできていない。
 異星人たちが、どういう経緯で地球を発見し訪れようとしたかは推測すらできない。

2.異星人の目的は何か?
 今回の戦闘は、強行偵察の様相が高く侵略するつもりで地球人の戦闘能力や武器などを調査する目的もあったと推察する。
 侵略以外が目的の場合は、地球の資源を略奪する。地球人を食料とする。地球人を奴隷として酷使する。などが考えられる。平和的な友好使節である可能性は、皆無とは言えないものの可能性は極めて低い。
そもそも、地球に生命体が存在するか事前に知っていたかも判然としない。

3.何故日本に飛来したか?
 3―1 静止軌道上に三ヶ所に分散した理由
 地球の大陸分布によって分散しただけなのか、人類の先進国を知っていて戦略的に重要なための措置なのか判然としない。
 3―2 何故日本か?
 日本が、GDP世界三位の国だと異星人が知っていた可能性は低い。彼らにとって、ちょうど偵察にいい大きさだったかもしれない。が、理由は不明。

4.何故異星人は、途中で戦闘を止め去っていったのか?
 4―1 地球に対する知識不足
 遠距離のため、科学技術が進んだ異星人でも地球の環境を全て把握していなかった可能性が高い。地球の環境下で居住できない事を、認識したためと想像する。
 4―2 判断材料もしくは実績作り
 強行偵察程度に戦闘を抑え、地球でどれだけ戦闘活動できるか判断材料とするが戦闘はおろかただ立つことだけも困難になり諦めざるを得なかった。もしくは、はるばる地球まで来たのに何もしないで帰れないといった官僚的配慮があったのかもしれない。

5.異星人の身体的特徴
 現在までに判明している身体の特徴は、推定身長―19メートル~21メートル前後。体重―推定40トンから50トン。
 医療関係者及び物理学者の見解によると、体重が8トン(象の体重に相当)以下でないと地球での行動に支障が出ると推定し、重力が地球の五分の一から8分の一程度の環境の星から飛来した可能性が高いと推定した。
 地球最大の、絶滅した陸上動物のマンモスでさえ最大でも20トン。つまり、マンモスの四足歩行に対して、異星人は人間と同じ二足歩行。どのみち重量を、二本の足で支える事は困難となる。地球に飛来した時点で、母星の五倍以上の重力がかかっていたことになる。
 戦闘機のドッグファイト以上の荷重が、機体に常にかかっていたことになり、「相手の戦闘機は緩慢した行動しかできず、少し荷重がかかる行動をした途端空中分解した」と、報告した航空自衛隊員の報告内容を考えると信憑性が高い。陸上自衛隊の隊員の報告内容も航空自衛隊の報告内容と同じで、異星人の兵士はまともに動けずUFOの外に出た兵士たちは、全滅の憂き目にあったと考えられる。

6.異星人の武器について
 6―1.異星人の携行していた小銃のような武器について
 異星人の携行していた小銃のような武器は、一丁が破損しておらず健在である。他にも、2丁の武器の破損は軽微である。現在、修復作業と分析を同時並行で開始したところである。
 6―2.異星人放った球体について
 一個の球体が不発で残存していた。現在、分析を開始したところである。他にも、爆発した球体の残骸についても分析を開始した。
 6―3.異星人の護衛戦闘機について
 上空で空中分解した護衛戦闘機と思われる機体は、落下箇所ですべて回収された。これも、分析中である。その他F15に向けて放たれた武器の破損は著しいものの、これから修復作業と分析を行う予定である。

7.資料
 現在、NASAとペンタゴンからもたらされた資料以外に、日本独自の資料は皆無に等しい。ただし、現場に遭遇した高校生三名が撮ったビデオが存在し、現在我々が入手している。ビデオの解析を始めたところである。

8.結論
 前記4と5により、異星人は重力が予想以上に違う地球に対する興味を失う結果になったのではないかと推察するに至った。
 今後、このような事態が起こらないとは断言できず、国や思想それに貧富の差を越えた地球規模での防衛が必要となることは明らかである。
 前記6により、今後異星人の武器を地球上で開発できれば、新たなる異星人にも対抗できうる武器となる可能性がある。開発に際しては、アメリカとの共同開発が望ましい。アメリカは、日本の同盟国でもあり他の国よりは信頼にたる国であるとともに、技術的に日本のパートナーとなりえる国でもある。

 なお、この報告書は、極秘とする。全国民いや全世界に異星人の存在が知れ渡った現在においても、異星人の詳細な身体特徴などは極秘とし、アメリカなど一部の国以外には分析不可能な構造であると公表する。これから分析する、遺伝子についても同様とする。

 最後に、異星人の武器については、すべて破損していると説明し必要であれば破損が激しい武器を公開する。今後の地球防衛の観点から、アメリカだけには資料の提供をするべきか今後検討が必要と思われる。その時は、日本が主導となりアメリカと共同開発となるが、アメリカ以外には秘匿する。

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