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補聴器で聞こえを改善する際に大事になること

補聴器で聞こえを改善する際に大事になることは何か。そのように言われたら、私の場合は、「できることとできないことを分け、できる部分をしっかりと改善すること」と答える。

補聴器において問題になることは、補聴器をつけても耳が治るというところまで、行かないところだ。そうなると、どこまで改善できるのか、どのようになったら良いのかがよくわからない。

補聴器を使う方からすると聞こえにくさがあるので補聴器で改善したい。となるのだが、じゃあ、その聞こえにくさは、補聴器をつければ治るのか、改善するのか、これは、正直、よくわからないのが実情だ。

これは、補聴器が問題というよりも補聴器をつけて改善するような耳は、大抵が耳の神経の方に異常がきてしまい、それによって聞きにくくなる感音性難聴という状況によるものが大きい。

そのような状況でできることは何か。それは、できることとできないことを分け、できる部分に集中すること。ここに尽きると思う。

私自身が考えていたこと

私の場合、自分自身が生まれつきの難聴者で補聴器を使っている当事者というちょっと変わった部分がある。

補聴器の業界では、そのような人がかなり少なく、生まれつきの難聴者は、1000人から1500人に一人くらいの割合なのでそもそも部数として少ない。いわゆる障害というものに該当して生まれてくるのは、1%にも満たない0.1〜0.15%になる。

その事から私自身としては、自分自身が難聴者で補聴器を使っている当事者であること。ここを活かすことをモットーにお店のサービスを考えたり、お客様の対応をしてきた。

それを求めている人もいたし、難聴者、補聴器を使っている当事者だからこそできることがあるとも思っていたし、補聴器の知識の他に当事者の視点を組み合わせることで新たな価値を生み出したり、今あるものにプラスアルファ価値を加えることで付加価値を作れれば、より良い価値を提供することに繋がる。それは、きっと良いことだろう。そんな風に思っていた。

ただ、私自身が気になっていたのは、補聴器という特殊性だ。私自身も難聴者だから感じるが、お客様は、補聴器が欲しいわけではない。聞こえにくさを無くしたい。もっというと聞こえにくいことによる不便さを無くしたい。そのための道具として補聴器を求めている。

有名な言葉に、お客様はドリルが欲しいのではなく、ドリルで開けられる穴が欲しい。という言葉がある。マーケティングの格言に近い言葉だが、ドリルを買う人は、そもそもドリルが欲しいのではなく、何らかの理由で穴を開けなければならず、その穴を開けるためにドリルを欲している。つまり、本当に欲しいのは、ドリルではなく、その穴を開ける手段であるということだ。

補聴器に話を戻すと、補聴器では、冒頭に記載した通り、耳を治すことができない。ここで、お客様が欲しいものとの乖離が出てきてしまう。これについて、どう考えれば良いのかは長年悩みの種だった。

もちろん、補聴器というのは、セーフティネットのような役割に近い商品だ。

例えば、耳に何らかの異変が起こり、はじめに行くのは病院だ。そこで治らない場合は補聴器という流れになる。ここで治るのが一番理想だが、私も含め、感音性難聴やそれ以外の難聴で今現在、耳というのは治療する術が少なく聴力が戻らないケースが多い。

そのような方に使うので、基本、補聴器は聞こえにくい人がつけるというよりも今現在の医療では耳を治せない人がつける機器という側面が強い。

できることを見つける

補聴器では耳は治らない。では、どうしたら良いのか。それが私の中の長年の悩みだった。

自分自身としても補聴器を使っており、私の技術力の不足もあると思うが、私自身も聞こえにくさは残っている。

では、そのような状況でどのようにしたら良いだろうか。そこで、私自身がたどり着いたのは、できることとできないことをわけ、できる部分に集中すること。ここだった。

例えば、耳を治すことはできないかもしれないが、聞こえにくさを改善することはできる。今現在の聞こえにくさをより減らし、聞こえにくいことによる困り度を減らすことはできる。

補聴器による聞こえの改善や聞こえの改善度を可視化し、どこまでは改善できそうで、どこまでは、難しそうなのかを分け、改善できるところは改善する、ということはできる。

補聴器は正直よくわからない部分が多いからこそ、できることとできないことを分けることが大事だと、個人的には思う。

そして、改善できるところに集中し、なるべく良くしていく。それが今現在、私がしていることだ。

なお、少し前に難聴の人はどのように仕事について考えたら良いのか。について書いた。これに関しても、結論からいうと、できることとできないことを分け、できる部分に集中する。と言い換えることもできる。

人には必ず特徴や得手不得手がある。そして、苦手な部分や自分の特徴が裏目に出てくる領域は必ず、どんな人にもある。

これは努力が足りないのではなく、努力ではどうにもならない部分があるからこそ、できることとできないことを分け、できる部分に集中することが大事になるということだ。

例えば、自分の特徴から裏目に出る領域は、あるが、その領域に行かないこと、それを避けることはできる。

自分が苦手なことを認識できれば、その苦手なことは克服できなくても、それが必要ない、関係ない領域を選ぶことはできる。

人生の本質はまさにこれだ。できることとできないことを分け、できることに集中すること。

私の場合は、補聴器でそれを学んだ。補聴器は、残念ながらあまりにもできないことが多いからだ。

では、どのようなできないことが多い中、どうすればいいのか。その答えは、できることとできないことを分け、できることに集中すること。ここに尽きると思う。

私はそれを補聴器の仕事の中で学んだ。


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