一億円の低カロリー
「お願いですから、キュウリをください……」とキュウリ中毒の河童は懇願した。
しかし商人は首を縦に振らない。
「おいおい、どうした。早く砂金を持ってきてくれよ。そういう約束だろ?」
商人の顔は赤く息も荒い。
「でも、このあたりの砂金は取り尽くしてしまいましたよ。もう一億円くらいは渡してますよね?いい加減タダでくれても……」
「うるせえ!いいから早く持ってこいよ!」
河童は怒鳴られると仕方なく川を下っていった。
そして河童はそのまま死んだ。
キュウリ中毒の禁断症状によって衰弱した挙句、岩に頭をぶつけたのだ。
それを知る由のない商人は川縁に座り込み、三日三晩水面を見つめていた。
もはや普通の商売に戻る勇気も気力も無くなっていたのだ。
商人は突然立ち上がり「砂金……砂金……」と言いながら顔を水面に近づけると、足を滑らせてそのまま川に落ちてしまった。
泳ぐことができない商人は、声にならない声を発しながらゆっくりと溺れ死んだのだった。
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