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【詩】少年

どうして
誰も代わりに生きてくれないのか
透明な壜底にこびりついた
カラメルをじっと眺めていると
心細さに襲われて
少年は道を進めなくなる
だから代わりに悲歌を作っただけなのに
ちびた鉛筆の先っぽで
手のひらにことばを印しただけなのに
どうして
誰もが仏頂面を示すのか
あるいはげらげら自分のことを笑うのか
わからなくて
少年は
見えない呟き
聞こえない青
抱きしめることのできない夜の羽撃きに
ぼんやりと
塗り潰されるようになってしまった
ときおり少年のほそいこころが
道端にしゃがんでいるのを見かけたと
匿名の報告も寄せられるのだが
それきりでまた太陽が廻っている
時に哲学が失われてしまったと
嘆いている人々の住む
街でのことだった

ーーー

長い間、詩を書いていませんでした。これは詩をやめる前の作品です。おそらく1996年に書いたものです。
当時の私はそれなりに若者でした。「最近の若者は軽くて遊んでばかりで」という言葉がよく耳に入り、そのたびにひどく苛立っていました。苛立ちの中で詩を書きました。
あれから20数年。いろいろなことが変わった気もするし、ずっと当時のままのような気もします。今だったら、どんな若者を書くだろうかと思います。

千葉の「文化芸術村の会」による「第三回トワイライト文学賞 受賞作品集」(1997年3月発行)に掲載されています。


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