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背徳メシ

 さて、今回のテーマ「背徳メシ」です。
まず、Googleで意味を調べてみました。
Oxford Languagesによれば、

はいとく
【背徳・悖徳】
道徳に反すること。
 「―者」

ということです。

 まだ、幼稚園の頃だったと思います。
生まれて初めてコンビーフを食べました。
今ではほぼ好き嫌いなく、何でも美味しく食べられる私も、当時は大の野菜嫌いでした。

 そんな私に何とか野菜を食べさせようという工夫だったのでしょう。当時、頻繁に行き来があった母方の叔母と母が考えついたのが、野菜を私が好きそうなモノと抱き合わせで食べさせるというものでした。

 初めてのコンビーフは、スライスしたきゅうり、レタスの葉、キャベツの千切りなどと一緒に出て来ました。小さくカットしたコンビーフが、野菜の上にちょこんと乗っている。それに、少量のマヨネーズをかけて、野菜と一緒に食べさせられたのです。

 で、どうなったのか?
叔母と母の目論見は見事に当たり、コンビーフとマヨネーズの悪魔的な美味しさにすっかりハマってしまい、コンビーフとマヨネーズと一緒なら野菜を食べられるようになってしまいました。

 以来、かなり大きくなるまでの間、「コンビーフは野菜と一緒に食さなくてはならないもの」という「道徳」が我が家でまかり通っていました。

 余談ですが、当時のコンビーフ缶は、付属のオープナー(正式には「巻き取り鍵」と呼ぶらしい)を缶から少し出ているヒゲに引っかけて、缶の側面を巻き取って開缶するという、ギミックがありました。
 小学生になった私には、コンビーフの美味しさに缶を開ける楽しみも加わったのでした。
 残念ながら、この缶に入ったコンビーフは発売開始から70年の2020年春に製缶ラインの設備老朽化を理由に姿を消し、現在の新しいパッケージに移行しました。

 あれから半世紀。
すっかりオトナになった私にとっては、それも懐かしい思い出です。

 リモートワークのランチタイム。コンビーフの缶を開け、耐熱ボウルにコンビーフを移し、少量の豆板醤と加えてほぐします。それにラップをかけて2分くらいレンジで加熱。温まったコンビーフに、ごま油+ニンニクの香りがついたやみつきオイルを回し入れて混ぜ合わせれば、具が完成。
 この具を温かいご飯の上に乗せ、卵黄をトッピングすれば、コンビーフ丼の出来上がりです。

 かつての「道徳」に反し、野菜そっちのけでかき込むコンビーフ丼は、最高の背徳メシです。

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