見出し画像

hy4_4yh × WAY WAVE with DJ arinco @LIVE STUDIO LODGE(20240818)

 感謝とファンキーが入り乱れた、夏のメモリアルな饗宴(競演)。

 JR代々木駅の眼前にあるスタイリッシュなライヴハウス、LIVE STUDIO LODGEの周年イヴェントの一環とともに、世界に“YAVAY”(ヤバイ)を発信するフィメール・ラップ・ユニットの“hy4_4yh”(ハイパーヨーヨ)がメモリアルなライヴを開催。「8月18日はハイパーの日」と称し、例年ライヴを行なっているhy4_4yhが、昨年のP.O.P(映画『SR サイタマノラッパー』のラップ監修・出演で知られる双子の上鈴木兄弟を中心としたラップ・ユニット)に続き、2024年の“ハイパーの日”の2マンイヴェントの相手にリアル・ソウル・シスターズのWAY WAVEと専属DJのarincoをセレクト。〈“ LIVE STUDIO LODGE Anniversary event”「 8月18日はハイパーの日!hy4_4yh × WAY WAVE with DJ arinco YAVAYツーマンGIG !!」〉と題して、多彩なジャンルを横断したフィメール5名による祝宴“女子会”を繰り広げた。

 “ハイパヨ”ことhy4_4yhのステージを観るのは、2022年1月のHALLCA、仮谷せいらとの3マン・イヴェント〈生存戦略〉(記事→「〈生存戦略〉@高円寺HIGH 【HALLCA / 仮谷せいら / hy4_4yh】」)以来、WAY WAVEのそれは5月の〈NEWアルバム先行発売記念ライブ〉(記事→「WAY WAVE @Club Malcolm(20240506)」以来となる。hy4_4yhは前回が初の生ライヴ観賞となったが、伊達に場数を重ねてきてないパフォーマンス力の高さを含めて好印象だった記憶もあり、WAY WAVEのパフォーマンスともども期待していたイヴェントでもあった。

〈「 8月18日はハイパーの日!hy4_4yh × WAY WAVE with DJ arinco YAVAYツーマンGIG !!」〉

 トップバッターはWAY WAVE with DJ arinco。前述の5月の公演ではアース・ウィンド&ファイア「セプテンバー」を出囃子に用いたイントロダクションだったが、今回は馴染みのあるスライ&ザ・ファミリー・ストーン「ダンス・トゥ・ザ・ミュージック」の曲とともに“Y2K”を意識したウェスタンなデニム衣装でステージイン。拳を突き上げて唸る「WAVY GIRL」からファンクネスを滾らせていく。

 スウィング・アウト・シスター「ブレイクアウト」とザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズ「ユー・アー・ザ・ユニヴァース」という歌い慣れた洋楽カヴァーを挟んで、再びオリジナル・ナンバーを次々と投下。
 ファットなホーンとルーズなリズムが俗っぽさを出しながら、今まで通過してきたダメ男とそんな男に浮かれた自身もろとも捨てちまえと吐き捨てる「断捨離FUNK」、もう友達ではいられないという恋の感情を綴ったセンチメンタルなラヴソング「友達終了のお知らせ」と比較的テンポを落とした楽曲でメリハリを生み、後半への助走とすると、照りのあるホーンとフック直前の「Hey!」の掛け声が鼓動を高めるファンキー・ディスコ「流されていこう」からギアをアップ。いつ聴いてもユニークなフレーズの詞世界が突き刺さる「Hello New Wave」、WAY WAVEクラシックスの代表格の一つで、フックの唸るヴォーカルワークが耳に残る「Looking For Woman」、オーディエンスとのコール&レスポンスとクラップがヴォルテージをいっそう高める「合コン三昧 Oh Yeah!」(姉・杏奈が「す~し~ざんまいOh Yeah!」といつ言い放つのかに注視するファンも少なくないのでは…笑)を経て、イントロのF1ばりのエキゾーストノートが疾走感を倍加させるアッパー・ダンサー「September Wind」まで、一気に駆け抜けた。

 洋楽カヴァーを除いた8曲のうち、「WAVY GIRL」「Hello New Wave」「Looking For Woman」以外は6月リリースのアルバム『JOURNEY』収録曲でまとめ、旬のWAY WAVEの勢いそのままに、晴れやかかつ伸びやかに、微笑みを絶やすことなく歌い上げていく。リアルシスターズならではの阿吽の呼吸はもちろん、高い水準で安定感をもたらすヴォーカルも健在。シンガーとしての半生を胸張って闊歩していくような快活なテンションのなかに、時折艶っぽい表情も垣間見せるなど、(芸能生活ではヴェテランの域ではあるが)フレッシュな心持ちと重ねた経験が絶妙な塩梅となってパフォーマンスに表われているように感じた。

 時間にして40分程度と尺としては長くないステージだったが、MCを挟んだものの、ノンストップメドレーのような雰囲気で全曲を駆け抜けたのは、WAY WAVEとともに酸いも甘いも嚙み分けたWAY WAVE第3の女ことDJ arincoによるサウンドワークが奏功したこともあるだろう。単なる相性という言葉では測りきれないコンビネーションの妙で、WAY WAVEが生み出すファンクネスの抽出濃度を高めていた。

hy4_4yh(yukarin, chanchala)

 WAY WAVEの妹・優奈が「(今日は)arincoは忙しいです!」と言い放ってステージアウトしたのを受けて、arincoが“YAVAY”と書かれたハイパヨTシャツに着替えて再びステージに登場。新日本プロレスの内藤哲也の入場テーマ「STARDUST」が流れ、カラフルなライトでフロアが照らされるなか、“hy4_4yh with DJ arinco”というトライポッド・スタイルのステージが幕を開けた。

 冒頭で披露した「お家で聴きたいサマードライブ・アンセム」は、やはり夏真っ盛りという季節感を意識したからか。「右には競馬場ある?」「左にビール工場ある?」という松任谷由実「中央フリーウェイ」、「左へカーブを曲がると本当に光る海が見えてきたのでした」という小沢健二「さよならなんて云えないよ(美しさ)」をそれぞれオマージュしたフレーズに、クレイジーケンバンド「GT」あたりをモチーフにしたと思われる(トヨタ「スープラ」から始まる車種や、“国道1号”や藤沢へ向かう“467号”といった合いの手もあるから、おそらくそう)ドライヴソングは、ハイパヨ=ヒップホップあるいはファンコットという印象が強いハイパヨ・ビギナーとしては、「こんな(爽やかなポップ)曲も歌うのか」と(意外性という意味で)少々面食らいかけた。だが、すぐにスパンカーズ「セックス・オン・ザ・ビーチ」を想起させるタイトルの「ティケー・オン・ザ・ビーチ」や、“ハナビ!ハナビ!”と叫ぶフレーズが電気グルーヴ「富士山」を想わせる「はなびーと」というファンコット・チューンを繰り出して、あっという間に喧騒蠢く忙しないパーティ・モードへ。このギャップも魅力の一つか。

 かと思えば、2021年8月31日が命日で、生前はハイパヨの2人が本名も結婚していたことなども知らなかったという(当人たちいわく「嘘ばっかりつくんですよ(笑)」)プロデューサーの江崎マサルをはじめ、ハイパヨにとっての親愛なる人たちへ綴ったピュアなメロディが映える「Dear」からオアシス「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」のカヴァーへ繋ぐという、涙腺を緩ませる感動モードにも突入。「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」ではオーディエンスとともにシンガロングし、ハイパヨとファンがプロデューサーに贈るレクイエムとしてフロアに響きわたった(いつもは剽軽に歌い、フロウをかましているが、歌は普通に上手い)。ハイパヨの2人はステージに悲しい雰囲気が漂わないよう、あくまでも明るく、持ち前のユニークな話し方で笑い話へと昇華させていたが、思うところはあったはず。“ハイパーの日”というメモリアルな日にプロデューサーへの想いや楽曲を届けることが、ハイパヨなりの弔いということになるのだろう。「サマソニじゃなくて、こっちに来てくれてありがとう~!」という言葉がオーディエンスとの感情を一つに束ねたようだった。

 それほど湿っぽい空気で包まれたということもなかったが、続く「NANTOKANARU」では持ち前の能天気な明るさが再び発露。コロナ禍に失業した父親に「これからどうするの」と問うた時に返ってきた「なんとかなるだろオ~」という言葉を軸に、高野政所やDJ JET BARONの名でDJとして活躍し、ハイパヨの「ティッケー大作戦!~YAVAY」などを手掛けたプロハンバーガーのインスピレーションでトラックが作られた8月9日リリースの新曲で、「ドリフの早口言葉」と「変なオジサン」を大胆に(そのまま)繋げた志村けんリスペクトな振り付けをその場でレクチャーし、オーディエンスとともに踊り楽しんだ。

 ハナレグミの永積タカシ、マボロシの竹内朋康、レキシこと池田貴史らからなるSUPER BUTTER DOGのファンキー・アッパー「FUNKYウーロン茶」のカヴァーを終えると、ヒップホップ・モードへ突入。おそらく師匠のRHYMESTERの楽曲「K.U.F.U.」からインスピレーションし、映画『燃えよドラゴン』で主人公のブルース・リーが放った「Don't Think, Feel!」(考えるな、感じろ!)のフレーズを用いながら“功夫”ソングとして仕上げた「K.U.N.F.U」から、RHYMESTERへ客演した「なめんなよ1989」へ。コミカルな表情から飾り気のないレクイエム、再びコミカルへ戻ったかと思えば、硬派でソリッドなヒップホップと、抑揚の激しさに忙しいが、昔ながらで言えば御侠(おきゃん)な振る舞いが一転して硬質なフロウを畳み掛ける姿へと切り替わるメタモルフォーゼは、なかなかにカッコイイ。

 その「なめんなよ1989」からシームレスに「Keep Running」へ繋いで、本編はラスト。拳を突き上げ、雄叫びとともに「ただ前に、前に、前に、進み続けよう」と歌う姿には、20年近く歩んできた経験値から得たスキルと矜持に溢れる、ハイパヨならではの心意気のようなものも見え隠れしていた気がした。

 アンコールでは、2006年と2009年のほぼ同期(笑)で、メンバーが1名減るなどの共通項も多いWAY WAVEを呼び込み、“ハイパーウェイヴ”と化したコラボレーションで名曲「今夜はブギー・バック」をセレクト。ハイパヨの闊達なフロウにWAY WAVEの潤い溢れるヴォーカル、それらを支えるarincoのサウンド/ミックスが、スチャダラパーとオザケンが生んだ名曲の力と重なり合い、それまでのごった煮よろしくさまざまな要素をないまぜにしたクセが強く中毒性のあるステージに、爽やかなファンクの風を吹かせた、グルーヴィなコラボレーションが展開していく。そして、コール&レスポンスでシンパシーを高めながら、フロアに高揚と破顔をもたらすエンディングへいざなっていった。

 エンタテイメント性は高く、敷居は低いというアクトは、ハイパヨ・ビギナーでも存分に楽しめた。WAY WAVE、arincoとの相性も良く、次回のコラボレーションも期待を寄せられる、また体感してみたいと思えたパフォーマンスだった。そんな出演者たちに胸の内で密かに“感謝 for you”しながら、代々木の街を後にした。

◇◇◇
<SET LIST>
《WAY WAVE with DJ arinco Section》
00 INTRODUCTION~"Dance To The Music" by Sly & The Family Stone
01 WAVY GIRL
02 Breakout (original by Swing Out Sister)
03 You Are the Universe (original by The Brand New Heavies)
04 断捨離FUNK
05 友達終了のお知らせ
06 流されていこう
07 Hello New Wave
08 Looking For Woman
09 合コン三昧 Oh Yeah!
10 September Wind

《hy4_4yh with DJ arinco Section》
00 INTRODUCTION~"STARDUST" by KAZSIN, Theme of Tetsuya Naito
01 お家で聴きたいサマードライブ・アンセム
02 ティケー・オン・ザ・ビーチ
03 はなびーと
04 Dear
05 Don't Look Back In Anger(original by Oasis)
06 NANTOKANARU
07 FUNKYウーロン茶(original by SUPER BUTTER DOG)
08 K.U.N.F.U
09 なめんなよ1989(original by RHYMESTER feat. hy4_4yh)
10 Keep Running
《ENCORE》
11 今夜はブギー・バック(hy4_4yh & WAY WAVE with DJ arinco)(original by 小沢健二、スチャダラパー)
12 OUTRO~"STARDUST" by KAZSIN , Theme of Tetsuya Naito

<MEMBERS>
WAY WAVE are:
小池杏奈(vo)
小池優奈(vo)

hy4_4yh are:
yukarin(rap,vo)
chanchala(rap,vo)

arinco(DJ)

hy4_4yh × WAY WAVE with DJ arinco

◇◇◇
【WAY WAVEに関する記事】
2020/01/19 HALLCA,WAY WAVE @渋谷 RUIDO K2
2020/12/13 HALLCA,WAY WAVE @渋谷 RUIDO K2
2021/04/09 天野なつ ✕ WAY WAVE @下北沢CLUB251
2021/10/17 Mia Nascimento / WAY WAVE @GARRET udagawa
2021/11/17 WAY WAVE @TOWER VINYL SHIBUYA【インストア】
2022/02/13 WAY WAVE / ユメトコスメ @GARRET udagawa
2022/05/03 WAY WAVE @TOWER VINYL SHIBUYA【インストア】
2022/08/11 WAY WAVE @GARRET udagawa
2022/12/10 WAY WAVE @LOFT HEAVEN
2023/03/12 WAY WAVE @GARRET udagawa(20230312)
2023/07/15 WAY WAVE @Club Malcolm(20230715)
2023/09/10 WAY WAVE w/ 仮谷せいら、脇田もなり、PARIS on the City! @GARRET udagawa(20230910)
2024/05/06 WAY WAVE @Club Malcolm(20240506)
2024/08/18 hy4_4yh × WAY WAVE with DJ arinco @LIVE STUDIO LODGE(20240818)(本記事)

【hy4_4yhに関する記事】
2021/05/31 〈HOME~Thank You “Daikanyama LOOP” Last Day~〉@ 代官山LOOP
2022/01/26 〈生存戦略〉@高円寺HIGH 【HALLCA / 仮谷せいら / hy4_4yh】
2024/08/18 hy4_4yh × WAY WAVE with DJ arinco @LIVE STUDIO LODGE(20240818)(本記事)

もし、仮に、気まぐれにも、サポートをしていただける奇特な方がいらっしゃったあかつきには、積み上げたものぶっ壊して、身に着けたもの取っ払って……全力でお礼させていただきます。