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2021年に向けて

明けましておめでとう御座います。

2020年は年初から新型コロナウイルス感染症の拡大で世界中が大きな試練の年となりました。

私にとっては、第三者的立場から政府の政策について検証・提言・支援するシンクタンクとしての醍醐味を体感し、上司・同僚・関係者の皆様から多くを学び、自分の至らなさに絶望・悶絶しながらも、猛スピードで挑戦し続ける1年となりました。

● 「コロナ民間臨調」
政府の新型コロナ第一波への対応について独立したシンクタンクの立場から検証を行う「コロナ民間臨調」プロジェクトの事務局・ワーキンググループメンバーとして末席で参画しました。83名もの政府関係者等へのヒアリングを行い、19名の専門家チームで議論を重ね、自身は主に政府のマスク配布やデジタル化の遅れ等の「政策執行力」について執筆。10月に発表した検証報告書においては、2009年のH1N1インフルエンザ・パンデミックの総括で指摘されていた「備え」が十分でないことによる医療・行政等の現場への負荷、クライシス・コミュニケーションや海外発信、専門家と政府との関係、自治体と中央政府の関係、そして経済活動支援と感染拡大防止のジレンマなど様々な論点が明らかになった一方で、現在の第三波においてもそれらへの対応・戦略が十分でない中で対処しなければならない状況が続いています。

● デジタル政策
10万円の給付の遅れや医療情報の目詰まりなど、様々な分野での「デジタル敗戦」が明らかになった1年でもある中、地経学研究所 所長である慶應義塾大学の村井純先生にご指導頂きながら、急ピッチで進む政府のデジタル化政策について、検証に続き発信を続けました。日々の生活の利便性向上はもちろんのこと、国家サイバー・パワーは安全保障にも直結する問題であり、また、データが活用できるかどうかは付加価値を提供し次の時代の経済を牽引できるかどうかの最重要課題の一つでもあります。政府の司令塔機能の確立に期待しつつ、引き続きこの分野に注力していきたい気持ちを強くしました。

● 「政策起業家」たちとの協働
テクノロジーのスピードや多様化するニーズに対して、霞が関・永田町だけでは政策を作れない。
代替案や長期案を提示する機能を持つシンクタンクは勿論のこと、子育てから復興まで現場の最前線で取り組む社会起業家、教育家、弁護士、民間企業、アカデミア…様々な社会のプレーヤーそれぞれが社会課題に対して「制度化」の意識を持って取り組む、そんな政策の起業マインドを持つ「政策起業家」が必要だ。そんな想いでAPIとして2019年11月に立ち上げたのが「PEP(政策起業家プラットフォーム)」です。
卓越した政策起業家の皆さんにコア・メンバーとして運営をしていただき、昨年7月にはシンポジウムを実施。少しづつ、社会全体で課題に取り組む人々の「政策起業」という認知が広がっていることを実感し、また「社会・政策課題に取り組む」「公のために働きたい」という潜在的な政策起業家の裾野の広さに勇気付けられました。来年は、さらなるノウハウ蓄積と発信を行います。

自らも、コロナ禍で4月から5月の緊急事態宣言下で保育園の臨時休業となった時の子どもを抱えての在宅業務が本当に難しかったことをきっかけに、「政策起業力」実践を試みました。首都圏で緊急事態宣言の延長が決まった時、子ども達、保護者たちへの影響の大きさを可視化すべく、友人達と急遽、「両立保護者の会」を設置してアンケート調査を実施。数日で1,600名を超える回答をいただき、実際に自民党や自治体に提言を行い、様々な新聞等媒体で取り上げていただいたほか、Yahooニュースでも2万を超えるコメントを頂戴し、光の当たらなかった子育て世代の苦境の可視化に少し貢献できたように思います。しかし、実際の政策具体化の難しさも同時に実感・勉強致しました。

激動の一年のなかで、サラリーマン時代とは異なる日本の「政策現場」の様々な面を体感致しました。これらの取り組みを通じて、感じたのは以下のことです。

1. コロナ・ショックで日本の構造的な脆弱さが際立った:行政・医療・教育など様々な分野でのデジタル化の遅れはもちろんのこと、多くが非正規雇用である女性達が苦境に立つなど、様々な構造的な課題が浮き彫りになりました。ここからの回復フェーズにおいて、グリーンやデジタルなどの次世代の基盤に投資するのはもちろんのこと、全ての人が安心して活躍できるための社会保障・労働市場・教育等の構造的なアップデートの必要性を痛感しました。

2. 本当に必要な本当に必要な支援が届いているのだろうか:コロナで準備された様々な支援含め、必要な方にタイムリーに届いているのか。政策を「作る」だけではなく、「届ける」視点を強化していく必要があると痛感しました。

3. 解決する手段としての「デジタル政策」の重要性を再認識:刻々と変化するパンデミックに関する状況を知るための情報、課題を可視化するための情報、様々な分野でのデータの重要性は論を待ちません。政府・自治体・民間、様々なレベルでデジタル化を進め、エビデンスに基づく判断、より個人に寄り添った支援などが実現できるようにすべきとの思いをあらたにしました。

そして、政策に、変革に、もっと直接的に携わるためには政治ではないかという決意で、年内最後に、自民党広島3区支部長候補への公募に応募させて頂きました。
結果は力及ばず、自分の至らなさを痛感するばかりですが、
しかし、前に進まなければ変化も起きない。
その第一歩を踏み出したと思っています。

年末に、ボストン時代から大変お世話になったエズラ・ヴォーゲル ハーバード大学名誉教授が亡くなりました。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を1979年に書かれた先生は、晩年まで日本の若者達を指導し、Change Agent(変革を起こす人)を育てられたのだろうか、と問うていました。
先生にご指導いただいた一人として挑戦し続けたい。

さらに前に進む2021年へ。

本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

向山 淳

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