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彼は目を閉じて、ゆっくりと咀嚼を始めた。優しい仕草だと、思った。 「味わう」という、この光景は、わたしが三年前に見たものだ。 長野の山奥で、自給自足を営むお百姓さんのお手伝いをしていたとき。彼も、わたしと同じ志で、その場所にやってきた、きれいな顔立ちをした男の人だった。 なんて美味しそうにご飯を食べるのだろうと、感激したのを今でも覚えている。その仕草は今でも優しく瞼の裏に残っている。彼の一連の仕草は、”今”を心から楽しんでいるものだと思った。 その時、わたしも