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【備忘録】アンティゴネ

2021.05.02~05 18:45~
スパック『アンティゴネ』
作 ソフォクレス
構成・演出 宮城聰

わたしは5日、大雨の中の楽日を観劇。
とりあえず、観終わったあとめちゃくちゃ寒かった(笑)観てる間は寒さを感じなかったのにね。不思議。
あと、合羽と座り方の兼ね合いで、観劇後、ズボンがおもらししたみたいに濡れてて『あ〜、帰りはどこにも寄れないな』ってなりました。だって知らない人が見たら、ホントにヤバい濡れ方してたから(笑)

では、アンティゴネの話を。
ギリシア悲劇は、文字で読むことはあっても中々舞台を観てこなかったジャンルです。理由のひとつに、言葉が難解なので飲み込むのに時間がかかるから。文字なら分かるけど、音で聞くと漢字変換して意味を飲み込むまでにラグがあって、いつもの5倍くらい集中しないと置いていかれるのよね。

で、今回のアンティゴネ。
雨&合羽で、セリフの聞こえが不明瞭になってしまって、字幕(英語)を目で追いつつ観劇しました。
あ、この不明瞭ってのはわたしの障害特性です。詳しくは自己紹介のセンシティブな話を見てもらうといいかも?
発達障害で聴覚過敏があるのと、カクテルパーティー効果が働かないため、周囲の音を同じように拾ってしまうんですよ。雨音、演奏、セリフ、風の音を拾ってしまって、セリフ=言葉、として脳が処理しきれなくなってて…。

っていうか、ギリシア悲劇の英訳(であってる?もとはギリシア語だよね?)が、日本語より平易な表現でめちゃくちゃ分かりやすく観ることができましてね!これ、目からウロコ。日本語訳、なんであんな遠回しで分かりにくい言い回しなの?古い日本人が訳したから?いや、あれはあれでいいものだなぁとは思うけども!

あ、だから、凄く負荷が少なく観劇出来ました。感激!

影絵。凄い。
スピーカーとムーバーとコロスと演奏隊。
水を張った舞台。
寒さで白く浮き上がって見えるムーバーの吐息。
何もかもが幻想的で、美しいのに、人間の生々しい理想や哀悼、傲慢さなんかがブワッて。

アンティゴネとイスメネの対比。
クレオンとハイモンの父子の応酬。
アンティゴネとハイモンの影ですら触れ合えない指先。

古代ギリシアなのに、仏教を思わせる音楽と衣装。
音楽の心地良さにトランス状態になるかと思う瞬間多々。

【男】と【女】
【王】と【国民】
これ、古代ギリシアで書かれた戯曲だよね?
今の日本の話だよ。日本の『場を読む』みたいな社会のあり方の中に封じ込められた『女のくせに』みたいなものや、政治家を『先生』と呼んで有難がる(有難がらせる)ところなんかを観ているみたい。
ってことは、2500年以上も昔のギリシアと現代日本の【社会的成熟度】って変わってないんじゃない?なんて思ったり。

アンティゴネの姿は、さながら天照大御神で、でも、天照大御神と違うのは彼女の再来を願い動く者が居なかったところかな。
天照大御神は嘆きの中自ら閉じこもったけれど、アンティゴネは嘆きの中罰として閉じ込められた。
アンティゴネの天岩戸は開くことなく許嫁と死出の旅へ。

【兄】だから【平等】に弔え。
ではなく、
【全ての人々】に【平等に訪れる死】を悼んで弔え。
っていう主張。
前王の娘だから現王に進言出来た。理想をきちんと言葉にして、翻すことなく死んだ。
強いなぁ。


あと、ね、水張りの舞台、三途の川のメタファーってのは冒頭の僧侶でわかるんだけど、そのメタファーの深さ(深さ?)について、パンフレットを読んで慄いた。
わたし、学問としての宗教がとても好きで、メジャーなところから、コアなところまで書物を読み漁ってるんだけど、そういう学びが形を為して目に飛び込んでくる体験ってなかなか無くない?

アンティゴネ、本当に良かった。
ギリシア悲劇、食わず嫌い良くないね。

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