ハシブトクロウ

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最近の記事

おっさんとおっさんの死闘

 金を出せ、と蓬田はドラマよろしく恫喝した。警察を呼ぼうとした外野はベレッタに撃たれた。それを見て救急車を呼ぼうとした外野もベレッタに撃たれた。ベレッタには抗えまい。 「却下」  柳田は突き放した。外野に緊張が走った。 「非正規雇用の命より企業の金が優先されるのは自明だ」  柳田はそう言って、カンフーよろしくファイティングポーズをとった。やめろ、挑発はよせ、と騒ぐ外野に、柳田はまた言い放った。 「俺が死んだら迷惑するのは家族だけだ、でも企業の金はみんなが迷惑する。もし一人でも

    • 懸ける

       台風と共に大学へ行った。いつも通リ出席するように、と大学からも電子メールが届いていた。雷雲は暴風と豪雨を連れて、トタン屋根を吹き飛ばしていた。  駐車場を通ると、一人の青年が雨に殴られながら立っていた。 「こんにちは。何をしていますか」と僕は聞いた。 「洗車をしています」と相手は答えた。手にはブラシが握られていた。どうやら大学でも洗車をしていいらしい。 「雨が降ってますよ」 「雨は私を止めません。洗わなければ車は雨で汚れます。洗剤でコーティングすれば綺麗なままです」 「で

      • カラスが文明を得たわけ

         一  そこは大量のカラスが飛び交う島だった。食べ物を奪い合う日々だった。死体が大量に転がり、その肉を争いまた死者が出る始末だった。それに伴って、分解者も大いに賑わった。  ニ  一人の人間が島の中央に旗を立てた。カラスの猛攻を耐えての偉業だった。旗には「ぽ」と書かれていた。カラスたちはその旗に、一つだけ書かれた記号に、その線と二つの丸に釘付けになった。途端に、争いが止んだ。しかし、どうしたというのだろう、男は去っていった、「ぽ」を残して。カラスらはその意味を考え過ごし

        • 献血レポート

           いつ自分が輸血を受けるかわからないので、献血することにした。受付に話しかけると、まずは食事を摂るよう言われたので、昼食を摂ってから再度受付した。順番を待って、説明を受けて、登録をした。スポーツドリンクを渡されて、飲むように言われた。献血バスに入ると、エンジンの重低音が鳴り響いていた。血圧を計ったのち、血液型検査をした。中指から採血されるのだが、何かが当たった感触がしただけで、痛みはなかった。血が数滴、毛細管現象を利用して採血された。自己申告と検査結果は同じだった。ベッドに横

        おっさんとおっさんの死闘

          【文舵練習問題10】ナンジャモンジャのことば

          「モク、トキ、他人をあてにするな!」 「カシだって大概でしょう」  二人は口を揃えました。地球語調査班なのに、三人ともボイスレコーダーを置いてきたのです。 「じゃあ……こうしよう。三人で分かれて、簡単な言葉を覚えてくるんだ。忘れないように、繰り返し声に出そう」 「この木はなんじゃ」 「なんじゃもんじゃ」  〈植物〉のことだとカシは思いましたが、「ナンジャ、ナンジャモンジャ」と繰り返すうちに「ナンジャモンジャ」になりました。 「あの、ぐじゃぐじゃなお好み焼き……なんじゃ、もん

          【文舵練習問題10】ナンジャモンジャのことば

          【文舵練習問題2】蟻

          1.句読点なしの語り 意識をとり戻すと焼ける石の上にいた向こうに木ではない何かがそびえ立っているそしておびただしい数の足が歩いている一体ここは何なんださっきまで食べ物を探していはずなんだがすると気づかぬうちに動物の体を這っていたのだろうかさてどちらに進めば帰れるか見当もつかんあてもなく彷徨っても帰れる見込みはないがつっ立っていても干からびるだけだから致し方ないそれにしても草がないあってもどういうわけか部分的だ一体ここは何なんだ危ないあと三分ニ厘左にずれていたら一巻の終わりだっ

          【文舵練習問題2】蟻

          ナンジャモンジャのことば

           カシは、緊張感を持って地球に来たつもりでした。けれども、モクかトキが持ってくるだろうと思い、ボイスレコーダーをポナポナ星に置いてきたことについては、忘れていました。モクとトキも同じ理由で置いてきたと聞いて、カシは苦言を呈しました。 「まったく、話にならん! モク、トキ、他人をあてにするな!」 「カシだって大概でしょう」  二人は口を揃えて言いました。カシは言い返せませんでした。 「ああもう……。仕方ない、じゃあこうしよう。三人で分かれて、なにかひとつ言葉を聞いてくるんだ。覚

          ナンジャモンジャのことば

          「ほっぴんカワヅ!」製作記

          目次 はじめにほっぴんカワヅ!の投稿日は2023/09/01になっています。このゲームはunity1week開始前から作られていました。しかし、unity1week開始時点でジャンプとアニメーションしかできていなかったので、今回のお題「1ボタン」に合わせて、このゲームを完成させることにしました。 ゆるいイベントなので許されました。ありがとうございます。みなさんも気軽に参加しましょうね。 元ネタほっぴんカワヅ!はRUNNERというFlashゲームを元ネタにしています。溜める

          「ほっぴんカワヅ!」製作記

          最小のRPGを作る

          ゲームを完成させるには、たくさんの実装が必要になります。そのため、特に初心者はゲーム制作を挫折しやすいです。そこで、必要最小限の要素を抜き出した「最小のゲーム」を考えて、必要な実装を最小限に抑えてみます。今回は、「最小のRPG」を考えてみます。 RPGの定義と特徴原義 RPGの原義は非常に意味が広く、現在一般的に認識されているRPGを正確には表していません。なぜなら、時代とともにゲームも変化してきたからです。参考までに、RPGの原義は以下の通りです。 この原義によれば、

          最小のRPGを作る

          初めてゲームを共同開発しました

          この記事はQrunchから移植したものです。運営お疲れさまでした。 丹生和令さん(@nibukazunori;以下、丹生さん)と一緒にゲームを作りました。 https://unityroom.com/games/typhoon 開発期間:2019-07-26 / 2019-08-12 (18D) 発端「誰か一緒にゲーム作りましょう!」 そんな感じのツイートを丹生さんがしたので、ちょっと勇気出してリプ返しました。 2人でアイデアを出します。 丹生さんは「2つのジャンル

          初めてゲームを共同開発しました