「3年に亘ったコロナ対策の総括を(3)」

   日本医師会の弊害が際立った。
   諸外国では、ワクチン注射は薬局でもできたし、イギリスでは研修を受けた人たちが積極的に接種する側に回って効率を上げていた。しかし、日本では医師会などの反対で、ほぼ医師のみがワクチン接種をしていた。一事が万事、この弊害が目に付いた。
「かかりつけ医」
   コロナに罹った人がまず頼りにするのは「かかりつけ医」だろう。が、実際には診療を拒まれた例が相次いだ。何故だろうか?
 各地の医師会や厚生労働省は「かかりつけ医を持ちましょう」と呼び掛けている。しかし、近くの街医者に「かかりつけ医になって」と依頼しても、何ら手続きをすることもなく、特別にきめ細かい対応をしてくれる訳でもない。日本医師会でも、「かかりつけ医は患者さんが医師を表現する言葉」と定義しているように、具体的に患者の健康管理に積極的に携わろうという意欲は日本医師会側にはないのが現状だ。しかし、内科系の診療所の多くが、かかりつけ医の要件を満たすとしてコロナ前から診療報酬の加算を得ていたという。それが、コロナ禍では、発熱患者を門前払いする診療所すらあったのだ。
   今後は、かかりつけ医の制度化できるかどうかで、本来のかかりつけ医が実現することになるのだ。医療機関が、患者を登録し、医師は登録患者の健康管理に責任を持つことになる。経営の都合で診療を拒むことは難しくなる。だから、日本医師会は、制度化を阻止しようと躍起になっているのだ。医師会の主張は「必要な時に必要な医療にアクセスできる現在の仕組みを守るべきだ」というものだ。
  しかし、このコロナ禍で日本の医療機関はどうだったのか。自由なアクセスはおろか、医療に全くアクセスできない患者が続出したのだ。
「オンライン診療の規制」
   国内の医師は32万人。3分の2は病院で働く勤務医、3分の1が開業医。日本医師会の主流はこの開業医だ。そして、開業医へのガバナンスが日本では極端に弱い。
   日本の医療はデジタル化で主要国に大きく引き離されている。例えば米国は、21世紀に入ってから、オンライン診療の導入や、医療機関が患者のデータを共有して診察に活かす仕組みなど、デジタル技術による革新を続けてきた。コロナ下でもオンライン診療を活用し、感染拡大を防ぎつつ、発熱患者や慢性疾患などで自宅療養する患者の診察をつづけた。
 日本でも、コロナ禍後、徐々にこの窓が開き始めているが、世界標準からは隔世の感がある。
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?