「プーチンは勝っているのに、ウクライナに攻め込んで墓穴を掘ってしまった」

 2016年のアメリカ大統領選挙とイギリスのブレグジットの是非を問う国民投票で、ロシアのサイバーテロは見事に成功した。その結果、アメリカでは、トランプ大統領が誕生し、イギリスはEUを出る羽目に陥ったのだ。
 トランプが大統領になった結果、人をあしざまに批判し、暴力を振るう風潮が増大し、アメリカの中で分断が極まってきた。そして、メディアの報道はフェイクと信じる人たちが増え、選挙結果が陰謀で覆ったというトランプの扇動で2021年1月には国会議事堂にまでトランプ支持派が攻め込むようなことが現実のものとなっていた。それが、今年の大統領選挙をめぐってますます分断は深まり、アメリカの民主主義制度が危機に瀕するところまで来ている。
 また、トランプが大統領の4年間で世界中にポピュリズムの潮流がさらに大きくなり、ハンガリーを始め権威主義的なトップが誕生し、EUに反旗を翻すようになってきた。その結果、EUの議会選挙でも極右などの右派政党が躍進している。これでこの秋の選挙でトランプが勝てば、さらにプーチンの思い描いた世界が近づいてくることだろう。
 さらに、ブレグジットでは、イギリスがEUから離脱して、その国力は徐々に衰えを見せている。そして、EUの結束にもひびが入っていたのだ。
 翻って、ロシアは石油、天然ガスなどの一大供給国であり、小麦などの主要食糧の重要な産出国だ。このロシアにおける農業は、地球温暖化の影響でこれまで農業が不可能だったシベリア地域が農業可能な地域になるだろうし、北極の氷が解けて、北極海が一年中自由に船舶が通行できる海になるとロシアの北極海に面する地域の発展が飛躍的に拡大するのだ。
 そのような輝かしい未来を考えれば、居ながらにして、何もせずともロシアの国力は増大し、国際的な影響力が高まっていくことは、自明のこととして考えられたはずだ。
にも拘らず、プーチンは、ウクライナに攻め入った。
 プーチンは短時日でウクライナを掌握し、傀儡政権を樹立できると思ったのだろう。しかし、その戦争ももう3年目に入っている。
 欧米の援助が予想をはるかに下回っているおかげで膠着した戦況だが、ロシアの軍備の損耗やとりわけ若い人の命が大量に消費されているのだ。優秀なIT人材も海外に逃亡している。さらにプーチンは戦争犯罪者として、国際刑事裁判所から逮捕状が出ているので、うかつに世界に出ていくこともままならなくなっている。このまま戦争が終了しても、プーチンもこのままの状態でロシア支配が維持できるとは考えられない。
 今のプーチンは祈るようにトランプ大統領の誕生を願っていることだろう。そして、さらに大がかりなサイバーテロも企てていることだろう。
 

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