見出し画像

三角点に行ってみた。 vol.1_白河市大_阿武隈沿いの三角点と、二十三夜塔

”日常観光”のスタンダードに三角点めぐりはいかが?

コロナウイルスの影響で、都道府県をまたぐ移動ができなくなって久しい。3密を避ける形で楽しめるアクティビティとして、「三角点めぐり」はどうだろう。

サムネイル画像に貼り付けた、土に埋まった15センチ四方の石が三角点だ。だいたいこんな感じで市街地や草むらや森の中にあって、非常に地味である。

画像1

そもそも三角点とは

 三角点は、地球上の位置(緯度、経度、標高)が正確に求められており、あらゆる測量の基準として、地図作成、地籍調査、道路建設・ダム建設等の各種公共事業等で使用されています。その数は、全国に約109,000点で一等、二等、三等、四等三角点と4種類に分類されます。一等~三等三角点は、そのほとんどが明治時代に設置され100年以上にわたり地図作成・測量の基準として利用されてきました。 - 測量に関するミニ知識 国土地理院

ということで、測量に用いられている目標となる石で、国土地理院が日本全国に設置しているものだ。

三角点のいいところはいくつかある。

(1)全国に10万超え箇所
とにかくどんなに小さな自治体でも、都心部でも、集落でも離島でも、三角点はある。一つの自治体内ですら、すべての三角点を訪問したことがあるという猛者はほぼいない。ごくごくふつうの住宅地や、河川敷や、林のなかに、ぽつねんと三角点はあるので、どんな場所に自宅があっても、外出自粛!と言われていても、きっと近くの三角点を尋ねることができる。しかもだいたい人には会わない。

(2)地図を読むのが楽しい
三角点はGoogle mapsに登録されていない。(マイマップ機能でログをつけている人はいるかもしれない)ので、国土地理院のマップサイトである地理院地図か、書店で購入できる地形図を読む方法がスタンダードな特定方法だ。そして三角点は前述の通り非常に地味であるので、位置の特定は往々にして難しい。周辺の地形や建物の状況、土地利用を地図から読み取ってはじめて、三角点に到達することができる。気分は冒険家。

(3)地元の知らない地域に行ける
”地元”とはいえ、通勤通学路や、あるいはショッピングセンターや公共施設、駅など、生活に関わりのある空間以外には意外と足を運ばない。三角点めあてに足を運ぶと、自分でも知らなかった人や日常、文化や産業に出会えることがあるのだ。未知の世界は、地元にある

有名観光地や行列のできる店に行くのではなく、地元の魅力を掘り下げる「日常観光」が、ポストコロナの観光復興で重要になるとクローズアップ現代に出演していた鎌田由美子氏も提案していた。日常の中の道の世界との出会いを三角点で為してはどうか。

画像2

三角点に行ってみる。阿武隈川左岸の三角点を目指す

白河市の地形図(1/25000)を開くと

画像4

画像5

阿武隈川の左岸に大という集落がありまして、そこに334.1mの三角点があることが確認できます。

地形図がなくても、国土地理院の地図でも確認可能です

スクリーンショット 2020-05-15 15.02.49

白河市街から、「鹿島橋」を渡って阿武隈川の左岸へ向かいます。

画像6

橋の上から南側を撮影。

画像7

スクリーンショット 2020-05-15 15.48.01

TTTTTTTTTTT ← 堤防のマークが、川の北側に並んでいて、その上でに----------で描かれた細い道があります。そこを左折した先に、333.9mの三角点があるらしい。(図中の中央右端)

堤防の上を進みます。

画像8

左手の集落を過ぎて

画像10

左折できる道が現れます

画像11

左折して堤防を降りる

画像12

んーみあたらないな

画像13

ここらへんにあるはず...

画像14

自治会のゴミ捨て場。

画像15

住友ゴム工業(株)の管理施設。DUNLOPブランドのタイヤ工場は、白河で最も巨大な工場のひとつで、多くの人が働いています。ただ、工場はこの施設から直線距離で約1.5km離れていて、阿武隈川の流れも挟んでいます。なぜここにこんな小規模な施設があるのか...謎です。どうやらこのフェンスの内側に三角点があるっぽいので、建物の裏側に回ってみます。

画像16

あ、あの白い物体は!

画像17

国土地理院さんの、三角点を示す杭!

画像18

ありました。白河市大にある、333.9mの三角点です。

三角点、完全に住友ゴム工業の管理施設内にありました...三角点、私有地にあることも多いですが、フェンスの向こうにあるパターンははじめてです。そして、この管理施設が何の機能を果たすものなのか、まったくわからず。今後解明したい謎が一つ生まれたのでした。

三角点に行ってみる。白河市久保地区東側の山頂の三角点

スクリーンショット 2020-06-20 16.34.52

さて、大地区の333.9mの三角点を発見して、ミッションコンプリート。地形図を眺めると、東側にももうひとつ三角点があることがわかります。久保という集落の東側、学校の西側です。図中北東方向(右上)。

阿武隈川左岸の道を通って、久保地区に向かうことにします。

地図中の中央、十字の表示記号がある下の比較的大きな建造物はなにかなーと思ったら

画像20

白河地方清掃センターでした。清掃センターは旗宿地区にあるゴミ処理場と、ここよりさらに下流にある下水処理場しか知らなかったので、こちらにこんな施設があるとは驚き。

画像21

この日は周辺の田んぼで田植えが行われていました。

スクリーンショット 2020-06-20 16.34.52

久保地区は、阿武隈川・田んぼを南に配置して、小高い山の麓に葉脈のように住宅が配置されています。その集落の入り口部分に、「記念碑」の記号があるのを発見。

これは何だろうと近づいてみると

画像23

ひとつじゃなくてたくさんあります

画像24

どれも「二十三夜塔」とあります。二十三夜って、なんだろ。聞いたことないなあ。

画像25

都合の良いことに、近くに農作業をされているおばあさんがいました。

わたし「こんにちはー。あの二十三夜塔ってなんですか?」

おばあさん「あれは毎月23日に、部落の人で集まって飲み食いをしていたんだ。」「昔は楽しみがないから、夜、日が沈んで、月が出るまでの時間を楽しむという名目で集まっていたんだな」

とのこと。

いわゆる集落で営まれている「講」のうち、毎月23日の夜に行われるものを「二十三夜講」と呼ぶそうです。

「講」については頼母子講(たのもしこう)や無尽(むじん)など、特に山梨県に多い、という知識がありましたが、福島にもたくさん講があったことを改めて知りました。

おばあさん「最近はみんな働きにでるようになって、もうだいぶ昔にやらなくなったけどねえ」

第1次産業から第2次産業・第3次産業に移り変わるのと同時に、地域の様々なカルチャーが移ろっていったことを教えてくれる話でした。

で、肝心の三角点ですが、この久保地区から東側の山に分け入る登山道は不明瞭か、私有地の奥から入るか入れないか...という雰囲気だったのでこちらへの訪問は今回は断念。これまた次回以降の宿題に持ち越し。東側の小学校の裏手から入れそうではあるのだが。

スクリーンショット 2020-06-20 16.34.52

小学校の北側・東側は果樹園が広がっています

画像27

りんごかなという雰囲気

画像28

なんと付近にはぶどう酒貯蔵庫の跡地がありました。昔はワインを作っていたのかな...クラフトワイン。

画像29

養豚の豚の霊の供養塔もありました。小学校より北・東は昔から水が取れない(=畑地・家畜用地・果樹園)地区だったのだろうなあと思わせる雰囲気です。

三角点めぐりとは

ということで、白河市で三角点めぐりをしてみました。

つまるところ三角点巡りとは、三角点を見つけることを目的としつつ、三角点の周辺に広がる地理環境を想像・観察・体験する日常観光。

みなさんも自宅の周りでぜひ日常観光!三角点巡り!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?