見出し画像

【デ・ゼルビ流】 相手の守備のズレを生み出す”裏技” PISADAの正体とは?

当記事の内容を動画での視聴をご希望の方は以下の動画からご覧ください↓

画像11

「ビルドアップにおいて運ぶドリブルを行い相手を引きける」

攻撃の構築時において、チームとしてプレーを前進させていく際に、よく聞きフレーズです。確かにこのconducción(運ぶドリブル)、普段スペイン人の子供たちを見ていてもレベルがかなり高いです。運べるCBが多い。


ただ、現代フットボールの”守備戦術”と”フィジカル能力”の発展に伴い、この運ぶドリブルに対しての見方が少し変化しつつあることも事実です。自分が指導をするバルセロナでも対バルサをどのようにして制していくか?から攻撃以上に守備戦術の発達が凄まじく「運んでいる間に相手のスライドが間に合う/守備陣形が整ってしまう」はよく見られる光景です。

そこで、今回の記事ではこのようなシチュエーションにおいてチームとして前進を試みる際の1つ便利な”アイテム”を紹介したいと思います。

しかし前提として【育成年代】【プロの世界】とで分けて考えた上で、果たして育成年代から落とし込めるのか?もしくは落とし込む必要があるのか?は皆さんが指導されるカテゴリーや選手のキャラクター,そしてプレーモデルから逆算をした上で考えてみてください..あくまでも1つの参考に。

*自分は以前セカンドコーチとして帯同していたU-13のチームで監督に提案したところ、5秒で却下されました。笑

-この記事に書かれていること

・攻撃構築時の”意図”
・相手のズレを生み出す裏技”PISADA”の正体とは?

-この記事を書いている人

画像3
画像4

攻撃を構築する際の意図を理解する

まず初めに、これから紹介するアクションは以下のスタートゾーン、もしくは構築ゾーン/前進ゾーンの2分の1手前のゾーンでより有効となるアクションだと考えてください↓

画像1

参考までに、各ゾーンごとにおける基礎的キーファクターも共有します。

皆さんのチーム/クラブで所有するプレーモデルにも依存することではあるのであくまでも普遍的な目線で受け取ってください↓

note 画像用-2

ここからが本番ですが、組織的攻撃のフェーズにおいてプレーの前進をチームとして試みる際にまず重要になることが「相手チームのディスオーガナイズ(無秩序)を発生させること」です。

それにはたくさんの方法があるわけですが、その1つが以下の図でも記している通り、パスを用いてボールの循環の行う方法です。

この状況いおいて、忍耐と落ち着きを失い慌てて前進を試みてしまうと相手の”無秩序”が足りず、より効果的な前進ができないというわけです。

画像5

ボールの循環をより効果的なものにするためにこれだけは避けたいと言うポイントは以下の2つ↓


❶スピード感のないボール回し
❷同じ外側レーンにいる選手同士のコンスタントなパス回し

また、”パス”でも色々ありますよね。ここにチームとしての優先順位を決めておくことも重要です。*チームによってのプレーモデルに依存する部分はあります。

スクリーンショット 2022-02-25 12.16.48

また個人的には以下の4つのポイントが前進という意図を達成するために重要と考えます。

❶相手の配置と出方の分析
❷フリーマンの探索と自覚(出し手の選手がフリーマンの認知ができてもフリーマン自身の自覚がないためにボールを失うケースが多いと思ってます)
❸相手にプレスに出させる罠(今回の記事で紹介するコンセプトはここに当てはまります)
スペースへの侵入

ご覧の通りチームとしての前進を成功させるにはチームとしての構造だけがよくてもだめだし、チームとして数的優位な状況を生成するだけに終わってもダメです。そこに加えて個人としてミクロなソリューションを兼ね備えることが重要だと考えます。

また、パス以外の方法として便利になるのが「FIJAR(
固定する)」
という戦術コンセプトです。

FIJARについては、別の記事で深く触れましたのでセットでご購読いただけるとわかりやすいです↓

この記事内で言うところの”ボール有り”でのFIJARがここから紹介するPISADAに当てはまります。

相手のズレを生み出す裏技”PISADA”とは?

今回の記事で紹介したかったアクションは”PISADA”(ピサーダ)というものです。

三笘選手の影響もあり最近話題のデ・ゼルビ率いるブライトンでもよく見られるアクションですね。

PISADAとはそもそもでスペイン語でのPISARという動詞を名詞のことを指します。”踏む”などの直訳ができますが、フットボールにおいてはこれを足裏を用いてボールを踏む際に使ったりします。

つまり履き違えてはいけないのが、今回紹介する攻撃構築時以外のシーンでも足裏を使ってボールを扱うような状況ではこの言葉が共通して用いられるということです。(例:サイドの場面で足裏を使ってストップしターンをして方向を変える際など…)

では、このPISADAがスタートゾーンにおいて前進を試みる際にどのように用いられているのか?イメージを膨らませるためにまずは以下の2つの動画をご覧ください↓

ただ…

お気づきの方もいると思いますが、動画内でも必ずしも”足裏”だけを用いて相手のプレスを自分に対して誘発している訳ではありません。足裏を使わなくてもその場に静止するだけで相手のプレスを固定するシーンも多々あります。

ボール保持時に相手を固定する(誘発する)ためのアクションは主に以下の3つが定義されます。

デ・ゼルビ率いるブライトンはここでの静止固定とパスリピートの組み合わせが絶妙ですね。

https://twitter.com/ney10jun/status/1564383012317499397?s=20&t=C2AOTJnTbG5ZDr-2-DmxjA


つまりこれを踏まえた上でPISADAの分類図を少しだけ整理すると、あくまでも❷静止するというアクションを用いて相手を固定する意図を達成するために与えることのできる1つのキーファクターのようなものだという認識ができます。

※ちなみにですが皆さんが何かテクニックアクションに対してキーファクターを与える場合は以下の2種類に分別して与える必要があります↓

両視点を持つことが重要です

❶戦術的キーファクター
→ボールを受ける前に見るものは?どこのポジショニング?いつ前進いつ保持?相手のプレスがある場合は?ない場合は? etc…
❷身体的キーファクター
→どこのコンタクト部位でボールタッチ?浮き玉に対しては?重心軸足?足を踏み込む場所は?? etc…

PISADAの特にチームに落とし込むデ・ゼルビ本人はこのような見解を示していますね。興味深いです。

以前の記事で紹介してボール保持時の誘発アクションの1つとしても定義ができるかもしれません。

それではpisadaを用いた静止固定とそうではないパターンの見分け方を少し実際の画像共に見ていきます。

その場静止固定
その場静止固定
その場静止固定
PISADA

ただどちらの方法にせよ、共通となる目的は以下です↓

相手が自分に向かって寄ってくる状況を作る→これによってできたズレ(スペース)を活用しながら前進を試みる

また、PISADAもしくは静止固定のメリットを冒頭でも触れた運ぶドリブルと比較をしながら見ていきます↓

スクリーンショット 2022-02-25 12.56.06

ボールと共にある一定のスピードに乗りながら行う運ぶドリブルの場合、視野の確保が難しくなり相手に突っ込んでしまってボールを失ってしまう状況もあります。

また状況によっては、保持者にとっては良い運びができても、周りのサポートの整備が間に合わず、ファーストパスでカットされてしまうシーンも見受けられます。

自分から相手に対して寄っていく運ぶドリブルに対して、相手が自分に向かって寄ってくるPISADA。ここに大きな違いがあり、それに寄って生まれるメリット・デメリットが存在します。

しかし冒頭にも言いましたが、参考にあげたビデオも結局はプロチームの動画です。このアクションを同じように育成年代の試合によって扱えるかどうかはまた話が異なってきますのでお気をつけください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?