”デ・ゼルビ式ビルドアップ”をスペインU-13チームで行った結果...
今季プレミアリーグ1番の注目チームとも言えるイタリア人監督デ・ゼルビ率いるブライトン。その美しいフットボールにあのグアルディオラも先日「ブライトンのビルドアップは世界最高だ」と発言をしたほどです。
SNSを見ていても、「こんなフットボールがしてみたい」「できたら面白いだろうな」と憧れの発言もたくさんみられる中、一方で「どのようにチームに落とせばいいのかわからない…」「自分のチームには落とせないだろうな」のような意見も数多くみられます。
そこで今回の記事では、実際に自分がバルセロナで指導をしていた昨季(2021-2022)のU-13チーム(実質12歳の選手たち)で4-2-3-1システムを採用しながら同様のビルドアップをおこなっていた試合をピックアップし、その背景と詳細を簡単に紹介していきます。
皆さんの指導される育成年代チームにおいてもビルドアップの少しヒントになりますのでぜひ最後までご購読ください。
当記事を動画でご視聴されたい方はこちらから↓
この記事を書いてる人↓
【過去の関連記事】
”全てはプレーモデルから” をまずは理解する
まず本題に入る前に、冒頭にも触れた「このフットボール、自分のチームに落とせるかな?」の悩みというのは皆さんが所有するチームのプレーモデルから逆算して考えなければいけません。
※プレーモデルに関して話すとかなり長くなるので重要なポイントだけまとめます。
プレーモデルを作り上げる要素は多く存在しますが、その中でも一番重要な要素は当たり前にプレーをする選手たちです。また、プレーモデルというものはあくまでも皆さんが持つ指導者としての理想なサッカー(エゴ)ではなく、チームの現状です。現状を分析し、把握する。それはそのクラブの歴史や、地域の文化から、指導するカテゴリーや選手1人1人のキャラクターまでを含めてです。
バルセロナに居ながらではありますが、定期的に日本からやってくるチームの試合を観察したり、指導者の方と会話をする中で、個人的にここに日本人指導者の最大なエラーがあるように思っています。「自分はこのフットボールが好きだから…」のみでチームのモデルを作成してしまう。ゲームプランを立ててしまう。彼ら選手の強みや弱みも無視をして…
育成年代の指導者において「どれだけ自分のエゴを隅に避けれるか?」は非常に大事な部分で、その点においてはスペイン人指導者はかなり現実主義です。(全てではない)
彼ら1人1人と向き合い分析をし、適切な戦い方をデザインする。
ただバルセロナの育成現場でも今指摘したような光景が見られた時代がありました。それこそが「ペップバルサ時代」です。
詳しい詳細に関して以下の動画にて、スペイン人指導者仲間が語ってくれたので覗いてみてください。面白い内容です↓
つまり何が言いたいかというと、指導者の憧れのみでデゼルビのフットボールをチームでやってみようというのはそもそもで捨てるべきで、理想はシーズン開始前にはチームの分析を終えモデルを作成した上でシーズンを迎えることです。何なら、育成年代とトップの世界とではある意味違うスポーツのような捉え方をしたほうが良いと思います。自分の理想とするフットボールに見合った選手を獲得できるトップとは訳が違いますからね。
スペイン人U-13チームにビルドアップ落とした結果
それではここまでの前提を踏まえて、昨シーズン自分が指導をしていたU-13チームにて実行していたゴールキック時のビルドアップの一幕をピックアップしながら、重要なポイントをいくつか解説していきます。
しつこく言いますが僕たちがこのビルドアップの形を採用していたのは何も我々指導者のエゴではなく、この形を実行できるだけの選手のキャラクターがチーム内に存在していたからです。
※現にこのチームから翌シーズン2名がバルサに(ビデオ内の右CBと左WG)2名がエスパニョールに(右WGと右SB)獲得されるほどレベルも高かったことは事実です。
またこちらの動画内で紹介したPISADAに関しては動画内でも発言していますが、監督に却下されたものの、ビルドアップ全体の形は受け入れられた背景もありました。
ということで本題に進みますが、まずはこちらの動画を見ていただいた後にフェーズごとの説明をしていきます↓
前提に自チームは4-2-3-1システムを採用していましたが、動画内のようにゴールキック時のみ7-4の人数構成で2ブロックに配置を分け、中央ゾーン(自分は前進ベースゾーンと呼ぶ)に大きなスペースを生成する形をとっていました。
まずここで初めに理解必須なポイントは、数年前に行われたゴールキック時のルール改正です。簡潔に述べると、ペナルティエリア内にプレーヤーを配置することができるこのノルマですが正直攻撃側からするとメリットがたくさん発生するノルマな訳です。
改めて新ノルマによるメリットとデメリットを整理してみましょう↓
以前だと攻撃選手の配置はペナルティエリア外でしたので、相手との距離も近い中でマンツーマンでマークをつかれると、なかなかショートパスで始まるゴールキックを行うのも難しく、仮にボールを受けれたとしてもコントロールした瞬間にプレッシャーがかかってしまう状況は多かったと思います。
つまりこのルール改正によっての引き起こる大きなメリットは、やはりボールをエリア内で受けた際に相手との距離がある分、時間とスペースに大きな余裕ができたことにあります。
他のメリットとしては、相手をより自陣に誘導しやすくなったことです。やはり相手からしてもこの状態においてショートパスで繋がれることは基本的には嫌なので前からプレッシャーをかけざる得ない状態が起きることも多くあります。その前からきた相手の背後には大きなスペースが生成されます。
また主に相手を自エリアにより誘発するための手段は以下の2つ↓
❷はこのルール改正によってより行いやすくなったということです。上に共有した図でも見れるように2ボランチの低い配置に加え、両サイドバックもCBと同じ高さまで下げ相手のブロックを低い位置に誘発しています。これによってGKも合わせた7vs6の状況を自陣エリア付近にて構築します。
※そもそもでゴールキックから繋いでいくことを考えていないロングボール方チームは別です。
またここで1つ論点となるのが前線の状況です。上図では4vs4の数的同数が存在しています。数的優位性観点から見ると、同数ですので足りないと思われる方もいるかもしれませんがこの幅とスペースを同数の中守り抜くことは、ファンダイクが4名いない限りは中々難しいことで、数的優位+位置的優位性の両観点で見ると攻撃側にとっては有利な状況と言えます。
また、なぜこの4名を前線に配置しているかというのも明確な意図があり、センターFWの黒人選手を含めた手前3名は、質的優位性が高い選手ですのでそれを生かすために右WGの選手は幅を維持し、3名を手前のレーンに密集させることを意識していました。
これも全て冒頭で話した前線4名の強みを最大限生かすためのプレーモデルなわけです。
ただ1つ、このシーン実はトレーニングをしていた通りではなく、手前の左WGとトップ下選手の顔出しが被っています。また、右WGの選手も幅は確保していますがもう少しスペースを生成するための深さが欲しいところです。
準備していた形は、この2名が異なった高さとレーンに顔を出しトップ下が左WGにボールを落とし、一気に前線にボールを放り込みフィニッシュまでいくというものでしたが結果的には直接にFWの選手がボールを受け、落としのパスを受けたトップ下が、サイドに展開する形となりました。
ここで重要なコンセプトが、2列目選手の準備です。低い位置を取っていた2枚のボランチに加え、チーム内でより推進力がある左SBが攻撃参加をし、右SBはリスクマネジメントで後方に残ることは決め事としてありました。
また最後のシーンも、本来はFWの選手斜めのランは相手を外レーンに動員し、2列目の選手がスペースで受けるというものでしたが、お互いの意思疎通がなかったシーンとなりました。
今回紹介したリーグ戦の試合は、シーズンも終盤のものです。時間はかかることは承知ですが、しっかりとプレーモデルの作成を行い、コンセプトをトレーニングさえすれば育成年代においても十分に実行可能なビルドアップのモデルです。
ということで今回の記事では、プレーモデルの重要性と実際バルセロナの育成において行ったビルドアップの形について少し共有をさせていただきました。少しでも参考になるものはあればなと思います!
◾️スペインサッカーを時間の無駄なく最短7ヶ月で学びたい方向け↓
https://www.barcelonamltcamps.com/mlt-college
◾️INSTAGRAM
https://www.instagram.com/jun0101_8/
◾️メールでのお問い合わせはこちらから
barcelonamltcamps@gmail.com
◾️短期バルセロナ指導者留学プログラム詳細はこちら!(2024年も開催します!)
◾️FACEBOOK
https://www.facebook.com/jun.takada.96558
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?