6年ぶりに応用物理学会に登壇した話

こんばんわ('ω')
2020応用物理学会秋季学術講演会(9/8-9/11)が無事終了しました。運営のみなさまお疲れ様でした。
今回は久しぶりの登壇側のプレッシャーと戦いながら、領域的に重要な知見をシェアしてみることを試みました。

”360°ライブストリーミングとVR・拡張現実技術を用いた多拠点間の遠隔実験指導法の実装”というタイトルで、大分類1 応用物理学一般 ー 中分類1.2 教育のセッションにて発表してみました。この領域は初めてです。

実験系出身の私が実験室停止によって研究が停滞する今の状況を我慢できるはずなどないのだ('ω')提案を示していくぞの精神です。

(本当は登壇資料を載せたい)
セリフの原稿を載せます。

講演後の質問は以下を頂きました。

Q.アニメの世界が実現するのかなって感じです。実験が学生で、それをサポートするシステムですよね?
A.そうです。加えて、自分が指導上現場に立ち会わなければいけない状況も続いていたので、自分が楽をするためのシステムにもなったのがVR側です。

Q.上手く使うと、先ほどまであった色んな実験(←前のセッションの理科教室などの話題)についても学生は何か所かに分かれておきながら先生も対面しないで指導するというのも考えられる?
A.ですです。ポイントとしては空間を共有しないで成果だけ共有するといういいところ取りの形が目指せます。

Q.いろんなとこでインプリメントしようとするとテクニカルスタッフとか知識がある人が居ないと無理なのだろうか?マニュアルみたいなものが作られるとか?
A.それぞれは実は簡単です。誰でも使える形でインターフェースが工夫されています。ただし組み合わせた時にわけわかんなくなるので、この運用は慣れになります。これからの若い人は既に慣れているので彼らに期待する形になるとおもいます。

座長コメント:ARやVRChatも期待できると思います。各種リンクはチャットの方にもかかれているのでご参照下さい。

(発表・質疑トータル16分)

大ピンチな場面がいくつかあったのですが、用意しておいた仕組みなどはおおむね上手く動いたようなので、すこし安心しました。以下、ここに至るまでの流れなど少しずつ増やしていこうと思います。

↑大ピンチの様子の一例。登壇35分前の悪夢

以前の活動

大学をやめてからの数年は、応用物理学会の全国大会には自腹で旅して参加していました。企業ブースや実験設備共同運用のブースを覗きながらいろいろサービスの内容を聞いていました。そのうちに、自分の装備に興味を持ってくれている事が分かった段階で、私が常に引いているキャリーからおもむろにVR体験セットやHoloLensや360カメラを取り出し、即席体験会を繰り広げるという非常にやばそうな活動をやっていました。去年は顕微鏡学会でのこの活動がきっかけになり、NIMSでのセミナーを依頼される流れになりました。
 ところが今年になり、ウイルス感染が広がって札幌から移動することが出来なくなった段階でどうしたもんかなと思いつつ、各学会の動向を見ていました。春の顕微鏡学会は早々に中止になり、応物学会も同じ感じになっていました。
 秋学会も不可能かなと思っていたところ、オンライン開催の可能性がかなり早期に出されたので、こうなると3年前の遠隔実験指導のネタでむしろ登壇できることに気づき、当時の関係者の許可をとりに走り回り半日で揃ったので、今にいたったという流れです。


準備したもの

アブストラクト(受付期間 5/27-6/23)

登壇OKと言われた瞬間から書き始めて翌日できたので(今までのLTの修行の成果がこんなところに)、大学と企業にそれぞれ原稿を送り、余裕持ってチェックをとりました。

バーチャル背景

なんと公式がオンライン開催マニュアルのウェブページの中に、zoomでの顔出し時用バーチャル背景を用意していました。これをDLして、自分の講演アブストに繋がるQRコードとか付けてデコっていました。(顔出しのタイミングが少なかったので、役に立ったのは初日の懇親会くらいだったような気がします。)


発表原稿

オンラインという事で、オフの時に無かった制限がいくつも付いていました。特に画像周りがかなり厳しい。

このあたりを気にしつつ、効果的なプレゼンをするにはどうすればよいのだろうと日々頭を悩ませていました。後述ですが、トラブル対応のシミュレーションをして、克服するための材料を適宜揃えて行きました。なお発表時間15分だと勘違いして作ったので(実際は10分)、直前に泣きながら直す羽目になりました。持ち時間注意。

動画

「百見は一体験に如かず」なので、いつもは現地に居れば必ず実機デモまでやりますが今回はオンライン開催なので、動画かライブデモに頼るしかありません。当時の状況を見てもらう事が報告としては重要だと思ったので、実装の時に撮った運用テストの動画が↑のレギュレーションに合うように編集し直しました。モザイクをかける作業がメチャクチャめんどくさかったです。

接続テスト

今回はありがたい事に、8/17から8/21までの間、登壇者向けにzoomの接続テストの期間が設定されており、その最終日に接続して、見え方チェックを事務局の担当の方に手伝ってもらいました。(今思えば、3人以上同時に繋がる環境にして、接続方式が多人数設定に切り替わっている状態で試せばよかったです。フレームレートが違う可能性があります。)
 この時に、本番時の外部リンク先コンテンツへの権利発生の有無などを確認してあります。本番中に流れた登壇資料のみ(私は大会ロゴをこっちには入れた)に応物の著作権が発生するという認識で一致しています。動画データのYoutube共有も別建てなので問題なし。

VRデモ・360°デモの準備

「百見は一体験に如かず」なので(大事なことは二回言う)、どこかにライブデモを設置して、当日の聴講者を巻き込もうとたくらんでいました。検討の結果Mozilla Hubsを建てる事にしました。あと、全天球の実演もやりたいので、リコーのUCSサービスが使えるようにIDの調達をしました。ウェビナーと分離しないと映像転送がカクカクになってしまい良さが伝わらないと思ったので、どこに置こうかなーみたいな検討をしました。

現地調査

今回のオンライン学会は応物としては初めてで、何が起きるか全く読めないという非常に恐ろしい会でもありました。8日の初日は、とりあえず一番長く参加できそうなセッションをえらんで、事前の接続チェックで分からない事(負荷の影響面)を確認する方針に徹しました。その結果分かったこととして、
・送信解像度の高めの発表のマウスカーソルの動きが妙に悪い。
・いかにもモバイルPCで発信しているっぽい発表は逆にキビキビしてる。
・講演の時間帯はあまり影響していないように見える。全体的に1-10fps近辺から抜け出せない。
・マックで全画面表示周りの不具合が起きた時に会場係はお手上げになる。表示周りのミスはリカバリできないので策が必要。
・領域(というか座長)ごとにQ&Aのやり方が少しずつ違う。
・いまチャット欄を使いこなす聴衆はほぼ皆無である。
・オフライン開催だった時より各部屋の聴衆が多く、そしてウェビナーにおいては参加者サイドから他の参加者名が分からない(のでなんか怖い)

上の状況の影響を受けにくいプレゼン構成を作る必要があったので、ライブデモの講演時間内実施は捨て、パワポも作り直しになり、動画は二倍速再生を新たに仕込みなおすという感じになりました。

送信側の操作で出力解像度を変える技を発明したりしました。スライドショーの全画面表示を阻止して、解像度減らしたい時だけウインドウ縮めるとzoom接続先での画像がボヘボヘになる。こういう事を自宅内の複数のPCでリハーサルしているうちに夜が明けました。

当日のオペレーション

おおまかにはこんな感じです。
・セッション開始前にノートのVR用PCでMozilla Hubsの部屋を一個建てて置く。
・チャット欄に投げる文章・URL・簡易説明を予めメモ帳に並べておく
・9時集合でセッション開始、11時まで出番待ちしながら最終チェック。あと質問をして自分のマイクチェックをついでに済ます。
・発表時間が始まる。
・挨拶をしながらチャット欄を使う事を宣言する(そういうことする講演者が他に居ないので)。
・チャット欄に一言を実際に投下。
・前半発表。
・動画再生のページが来たら、↑の技で出力解像度を下げてフレームレートを得る。講演資料・youtube動画ページへのリンクのまとめをチャット欄に投下(画面共有をかけている時のチャット欄がどこにあるか分からず、一旦共有を抜けてチャットを入れたので相当ダサくなった)。
・動画のページの説明が終わったら解像度を上げ直して画質を戻す。
・講演メインパート終了。
・Mozilla Hubs会場が12時からあるから興味ある人は来てね!と告知。
・ついでにKOSEN SC主催のVR研究座談会の宣伝もやって発表終了。

前後も色々ありましたが、ひとまず割愛して、別の記事書いた後にまた追記します。

数字のデータ

・聴講者 40人(領域1.2のセッション中最多だった模様)
・講演ブックマーク 14人
・Hubsに来てくれたひと たぶん2人+なかやまさん(急遽操作ヘルプで来てもらった)
・供給したURLが踏まれた回数 
 Youtube
      VR運用例 計6
      AR運用例 計4
 SlideShareの講演パワポ 13
・全講演(2000↑)中のキーワード検索[VR or 拡張現実 or 全天球]ヒット数: 1

期待している事

今回の講演で、初めて学会発表カウントに入れられる業績が一個付いたことになります。これは正式に"他の研究者から参照可能な前例"になったので、今後、応用物理分野で全天球を利用した遠隔指導の導入をするための根拠足りえると思っています。今までは小さな研究部会などで長い発表はしても、予算を作る根拠までは行かないので他者(特に若手)による導入は不可能に近かったのです。

もちろん聴講者の方が事後の口コミで拡げてくれるとかでも私は非常に嬉しいのですが、こっちのコミュニティの誰もがxR周りの技術導入できるようにするために必要な一歩として頑張ってみました。

神戸の中山さんらのグループは研究交流をVRでやる事の正式な前例を拓いてくれているので、本当に頭が下がる思いです。今回も助けてくれたので、本当にありがとうございました('ω')

以上です。
(2020/9/11 3995字 200分)

元ネタとなった2018年の登壇資料(研究部会での発表なので、効力弱め)


この記事が参加している募集

やってみた