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夢走

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2020年4月の記事一覧

⑰絆〜夢走〜

⑰絆〜夢走〜

リレーの練習というのは、特にバトンを渡す練習に重きをおく必要がある。

本多先生の指導の下、走者が決まった。

第一走者ヒロ、第二走者ダイ、第三走者タカ、第四走者は僕だった。

練習方法は、各走者のスタート地点から適当に足幅で距離を測り、そこに前走者が到達すると自分もダッシュする。

前走者の「はい!」という合図で次走者は後ろに手を出しバトンを受け取り、次の走者へと運ぶ。

これをお互いのスピード

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⑯過熱〜夢走〜

⑯過熱〜夢走〜

400mは一般的には陸上競技の中でも1番キツイ種目だと言われている。

花形の100mに比べると一見地味に見えるのだが、ただぶっきらぼうに全速力で駆け抜けるだけではダメで、本当に微妙な力の配分を計算しながら走らなければならない。

先人たちの例えで、「400mは全力で走っても、力を抜いて走っても疲れ具合は同じだ」という格言にも似た迷言がある。

つまり、それくらい微妙な力の配分を考えなければ成功出

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⑮入賞〜夢走〜

⑮入賞〜夢走〜

ヒロの100m準決勝。
得意のスタートダッシュからその後どこまで逃げられるかがレースの運命を分ける。

僕たちはバックストレート側に設営した控えのテントからその様子を見守っていた。

ホームストレートまでは距離があるので、こちらの声は届かないかもしれないが、後輩たちはメガホンを用意してスターターの合図を待つ。

スターターがピストルを構える。

「いちについてー」

「よーい…」

一瞬の静寂。

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⑭通過〜夢走〜

⑭通過〜夢走〜

春の記録会。
僕たちにとっては中学陸上生活、最後の年の始まり。

何度か大会にも顔を出して来たので、他校の知り合いも増えてきた。

大会独特の緊張感も自分たちにとって心地よくなっていて、もはや誰もこの空気にのまれるヤツはいなくなった。

ヒロとダイは100mと200mでエントリーし、タカは砲丸投げ、僕は400mと走り幅跳び、そして最後に全員で4×100mリレーにエントリーした。

午前のサブグラン

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