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2020年展望号 【歴史奉行通信】第五十七号

〓〓第五十七号 歴史奉行通信目次〓〓〓〓〓〓〓


1. 2020年展望ー新刊予定<新作単行本>

2. 2020年展望ー新刊予定<文庫>

3. 2020年展望ー「Show must go on!」

4. 感想のお願い / お知らせ奉行通信
新刊情報 / 講演情報 / その他


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1. 2020年展望ー新刊予定<新作単行本>

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2020年最初の歴史奉行通信は
「2020年展望号」を
お届けいたします。

さて、今年は2020年という節目の年です。


新年をさほど祝わないアメリカでも、
0の付く年は「Happy New Decade」として
特別な年(スタートアップの年)という
意識を持ちます。
そうした意味で、常の新年とは違った気持ちで
臨みたいものです。


私の場合、1960年生まれなので、
今年で60歳になります。
作家という仕事をする者にとって、
60代は最も充実した時期だと言われています。


いよいよ私もその十年を迎えるわけです。
その後には熟成の70代が待っているので、
この10年は大いに守備範囲を広げ、
大いに冒険したいと思っています。


そのスタートとなる2020年は、
四つの新作で大飛躍の年にするつもりです。


====<2020年新作>=====
2月 / 『茶聖』
5月 / 『囚われの山』 
9月 / 『もっこすの城 熊本築城始末』 
12月 / 『北条五代』
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2月発売の勝負作『茶聖』で、
私のNew Decadeは始まります。
この作品は、戦国時代における
茶の湯の存在とは何だったのか、
千利休とは何者だったのかを問う大作です。


すでに私には連作短編集『天下人の茶』で
利休の弟子たちの視点から
利休を描きましたが、
『茶聖』では、利休視点で真っ向から
「戦国時代と茶の湯」を描きます。


これまで書いてきた
戦国物の集大成と考えていますので、
ぜひ読んでいただきたいと思っています。

5月には、中央公論誌で連載していた
『凍てつく山嶺』を改題した
『囚われの山』が刊行されます。


本作は八甲田山雪中行軍隊遭難事件を
題材にした作品ですが、
新田次郎氏の『八甲田山死の彷徨』刊行から、
ちょうど五十年目に当たる2020年に
刊行されるという偶然に驚きました。


本作は近現代物の第四弾となりますが、
『ライトマイファイア』でお見せした
「現代と過去の行き来」を構成の基本とし、
さらに
「フィクション(ドラマ部分)と史実の出入り」
を自在に行っている作品です。
現代を生きる歴史雑誌編集者が
過去の事件を探っていくという構成なので、
「明治の軍隊物はちょっと」という方にも、
違和感なく入り込めると思います。

9月に刊行される
『もっこすの城 熊本築城始末』は、
一言で言えば熊本城の築城物語ですが、
そこに至るまでの築城家の成長を描く
ビルドゥングス・ロマン(成長物語)でもあります。


様々な難題を乗り越えて
最強の城を築いていこうとする主人公たちの苦悩を、
一緒に味わっていただきたいと思っています。


作品の系譜としては
『江戸を造った男』や
『男たちの船出』に通じる
「お仕事小説」ですが、
造り上げる対象が「城」ということで、
力が入ります。

12月には上下二巻に及ぶ大作
『北条五代』が登場します。


タイトルだけで何が書かれているかは
お分かりと思いますが、
小田原北条氏の五代を描いた大河小説です。
実はこの作品は、
火坂雅志さんの急死によって
擱筆(かくひつ)となった作品を、
私が引き継いで完結させたものです。


火坂さんは三代氏康が登場するところまで
書いたので、
そこまでの経緯や登場人物を受け継ぎつつ、
自分なりの四代氏政と五代氏直へと
移行していきました。
書きながら火坂さんと会話しているようで、
楽しいと同時に悲しい気持ちになりました。


*文中に登場した作品情報
『天下人の茶』
http://fcew36.asp.cuenote.jp/c/bKiyaaf9uxsQiWbE

『ライトマイファイア』
http://fcew36.asp.cuenote.jp/c/bKiyaaf9uxsQiWbF

『江戸を造った男』
http://fcew36.asp.cuenote.jp/c/bKiyaaf9uxsQiWbG

『男たちの船出』
http://fcew36.asp.cuenote.jp/c/bKiyaaf9uxsQiWbH


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2. 2020年展望ー新刊予定<文庫>

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さて、2020年の文庫化作品は、
以下のようなラインナップになっています。


====<2020年文庫>=====
2月 / 『走狗』(中央公論)
5月 / 『城をひとつ』(新潮社)
8月 / 『悪左府の女』(文藝春秋)
11月 / 『西郷の首』(角川書店)
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当初は上下巻で発売予定だった超大作
『走狗』は全分量の約20%のカットを行い、
一冊の文庫として刊行できる分量になりました。
本作は大河ドラマ『西郷どん』でも注目の
川路利良の半生を、独自の解釈で描いています。
文庫化にあたって大幅に改稿したので、
見違えるように読みやすくなっていると思われます。


『城をひとつ』は北条家のスパイ(潜入調略係)を
描いた戦国謀略小説です。
戦に勝つのは、そこに至るまでの
「下ごしらえ」がいかに大切か分かります。
六つの短編から成っており、そのどれもが
北条氏の盛衰を決めた合戦になっています。
つまり先に「題材ありき」の中で、
いかに物語を紡いでいくかに挑んだ
作品集でもあります。


『悪左府の女』は平安時代末期、
保元の乱の前夜を描いた長編小説です。
一人の女性が次々と訪れる難局を
いかに乗り切っていくかを描いたもので、
当時の情景(公家たちの生活)を
浮かび上がらせることに力を入れました。


また「結果が分かっている歴史小説に、
いかにどんでん返しを設けられるか」という
最高難度の課題にも挑戦しています。
同傾向の作品に
『野望の憑依者(よりまし)』がありますが、
こうした小説ならではのコンセプトは、
これからも続けていきたいと思っています。


そして遂に、あの大作
『西郷の首』が文庫化されます。
幕末から明治維新にかけての加賀藩を舞台に、
西郷の首を見つけた男と大久保利通を暗殺した
男の友情を描いた青春物語です。
『武士の碑』『走狗』と共に
「西郷三部作」と名付けていますが、
西郷自身が登場するシーンは一度だけです。
では、なぜこのタイトルなのか。
それは一読いただければ分かるはずです。

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