見出し画像

野球やサッカーなどのスポーツは、50年後くらいに消えるだろう


2022年現在、野球やサッカーなどのいわゆる「スポーツ」と呼ばれる世界の競技人口は、億単位である。

しかし、日本での調査によると、スポーツ人口はバブルをピークに減少傾向であることが分かっている。

stat.go.jp/data/topics/pdf/topics64.pdf

私は、50年後くらいに、野球やサッカーなどの「スポーツ」は、消えるだろうと考えている。趣味でやる人は継続的に一定数いるだろうが、マイノリティになっていくだろう。少なくとも、1試合で観客を数千人~数万人単位で動員できるようなショービジネス形態のスポーツは、確実に衰退するだろうと見ている。

今日はそんなことについて書いていこうと思う。

*****

私が、「スポーツ」はそのうち消えると考える原因は、「eスポーツ」の台頭にある。eスポーツの競技人口は年々右肩上がりで増えている。

また、eスポーツの大会での賞金も億単位となっており、一獲千金を夢見てプロのeスポーツ競技者になる者も増えている。

この記事では、野球やサッカーなどのいわゆる「スポーツ」を「物理的スポーツ」と呼ぶことにしよう。私は、50年後くらいには、この物理的スポーツは、完全にeスポーツに負けて、衰退していくだろうと考えている。そこには2つの原因がある。

*****

まず、運営コストの問題だ。

野球やサッカーなどの物理的スポーツを運営するコストはとにかく高い。2020年東京オリンピックで大議論になった通り、競技場を一個建設するのにすさまじいほどのお金がかかる。また新国立競技場一つの維持費は年間24億円もかかり、一回投資しただけで済むのではなく、継続的にコストがかかってくるのである。

また、プレイヤー側のコストも高い。まず競技の練習をするにはその設備や土地が必要であり、これにも莫大なコストがかかる。例えば高校野球だったら、各学校のグラウンドなどが主な練習場となるだろうが、この広大な土地を地価に換算すれば、とんでもない額になるだろう。はたして青少年たちに野球を教えることが、どれほど将来的な役に立つのかを考えれば、その土地代に見合った採算は取れてないと考えるのが普通ではないだろうか。

一方、eスポーツの運営コストは低い。

一度ソフトウェアを作ってしまえば、後はそのメンテナンスを行えばよく、それは野球場やサッカー場などの巨大施設の建設・維持に比べれば圧倒的に少ない金額で済む。一つのスポーツに対して全国各地に競技場を作る必要もなく、ソフトウェアを配布すればそれで済む話である。

ルールのアップデートも簡単である。

例えば、もし、ホームランバッターばかりが増えて試合がホームランだらけになり野球がつまらなくなってしまえば、「じゃあ、グラウンドを広げてフェンスまでの距離を伸ばそうか」となるのだろうが、その変更にいったいいくらお金がかかるか想像もできない。一度そのルールに適用した建築物は、ルールの変更に対して弱いのである。

一方eスポーツは簡単にアップデートが可能である。例えばスプラトゥーンだったら、ブキの種類で有利不利が出るという統計が出れば、定期的にソフトウェアをアップデートし、よりゲームが平等に面白くなるようにブキの強さの調整が行われている。その変更コストは野球場の構造を変える費用とは比較にならないくらい安い。

つまり物理的スポーツは、一度決めてしまったルールを変更することはほとんど不可能であるが、eスポーツはその限りではないということだ。

費用対効果という観点からすれば、物理的スポーツはeスポーツに対して弱いのである。

*****

2つ目は、面白さの進化の度合いである。

物理的スポーツは、ルールの変更がほとんど不可能なため、面白さをアップデートすることが難しい。せいぜい、稀代で独創的なプレーをする選手が出てくるくらいしか、面白さの変化がない。

新しいスポーツを作るにしても、それに見合った競技施設を新しく建設することは莫大なコストがかかり、また普及にも時間がかかる。

一方eスポーツは、どんどん新しいゲームを開発することで、いくらでも面白さをアップデートすることができる。ゲーム会社は日々「新しくて面白いゲームを」と知恵を絞っており、その躍進を阻むものはない。

ハリー・ポッターシリーズに出てくる箒を使ったスポーツ「クィディッチ」をプレーしたら、確実に面白い。しかし、我々人間には「飛べない」という物理的制約があるため、それを楽しむことができない。だがもしもVRの技術が発達したら、それを疑似的にコンピュータ上でシミュレートして、あたかも空を飛んで風を切ってクィディッチを楽しむことは可能になるかもしれない。物理的制約のある物理的スポーツと、物理的制約のないeスポーツ、いったいどっちが楽しいのだろうか。

今後はますます、eスポーツの楽しさが増していくだろう。次々と新しいコンテンツが生み出されることによって。しかし物理的スポーツにはその余地がない。よって、そのうちeスポーツの面白さが物理的スポーツの面白さを上回る時期がやって来る。私はそれがだいたい50年後くらいだと予想している。もっと早いかもしれない。

現在、なぜプロ野球選手が高い年棒を貰えるかと言うと、野球観戦者が多いからである。直接競技場にやってくる観戦者や、テレビ越しに応援を送る視聴者が一定数いるからこそ、野球業界はショービジネスとして成立している。

しかしもし、eスポーツの「見る側」としての面白さが物理的スポーツを上回ったらどうなるだろうか。eスポーツは、プレイヤーの面白さだけでなく、見る側の面白さも増すように工夫がなされている。実際私のような、テレビでワールドカップでサッカーを見るより、Youtubeでスプラトゥーンの実況動画を見る方が好きな人間もいる。そういう人は今後も増えていくだろう。

「見る側」つまり「お金を落としてくれる側」にとっての面白さが、eスポーツが物理的スポーツを上回れば、観客数が減った物理的スポーツはビジネスとして採算が取れなくなり、衰退していくしかない。選手に高額な年棒も払えず、あんなバカでかい球場を建てる予算もつかなくなってしまう。

eスポーツの面白さが物理的スポーツを上回れば、物理的スポーツにお金を落とす人などいなくなり、競技として存続できなくなるのである。

*****

結局のところ、現在の物理的スポーツの人気を支えているのは、それが見る側として面白くてショービジネスとして成立しているからであり、そのビジネスモデルが崩れてしまえば、消えてしまうということだ。そして、そのビジネスモデルをアップデートする術はほとんどない。趣味としてプレーし続ける人はいるかもしれないが、あくまでも趣味の領域を超えず、自費でやるしかなくなるだろう。やがて物理的スポーツのプレイヤーはマイノリティとなっていく。

eスポーツにはそれがない。ソフトウェアを売ることで稼ぐビジネスモデルもあれば、大きな大会を視聴させることで稼ぐモデルもある。課金によってプレミアがもらえることによって稼ぐモデルも存在する。

物理的制約のある物理的スポーツ、物理的制約のないeスポーツ。この2つの面白さの進化を考えれば、後者に軍配が上がる。そうすれば物理的スポーツを見る人などいなくなる。見る人がいなければ、運営の費用対効果の観点からプレイヤーがいなくなる。そうして、物理的スポーツは世界から消えていく。

今はまだ野球やサッカーに人々が熱中しているが、それはいったいあと何年続くのだろうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?